第3章59話:森にて

翌日。


朝。


晴れ。


俺は歩き出す。


やがてソノラ荒野を抜けた。


野原のはら雑木林ぞうきばやしが立ち並ぶ平原に出る。


さらに歩き続けると、森にたどりついた。


森の中を進んでいく。


すると。


「きゃあああ!!」


と近くから叫び声が聞こえた。


「……」


さすがに気になったので、俺は叫び声のほうに足を向けた。


すると、そこにいたのは少女である。


まだ10歳にも満たないような女の子。


彼女の横に、籠が転がっており、鉱石や薬草などが散乱している。


おそらく少女が落としたものだろう。


それを取り囲んでいるのは、3体のトカゲモンスターであった。


二本足で立つ、そこそこ大きな魔物だ。


(助けるか……)


と思って、俺は足を踏み出す。


素早くトカゲモンスターを念力格闘術で蹴り殺した。


「あ、あ……」


少女はガタガタと震えている。


恐怖の余韻が残っているようだ。


しかし、ゆっくりとそれが収まっていく。


(もう大丈夫そうだな)


と俺は思ったので、何も言わず、立ち去ろうとする。


が……。


「あの……!」


と、俺の背中に少女が声をかけてくる。


俺は立ち止まった。


肩越しに振り返り、告げる。


「なんだ?」


「え、えっと……た、助けてくれて、ありがとうございます!」


立ち上がった少女が頭を下げてくる。


「……ああ」


とあいづちを返す。


そして俺はふたたび、立ち去ろうとした。


そのときだ。


「ミリーナ!」


と声を上げながら駆けつけてくる存在がいた。


女騎士おんなきしである。


青い髪をポニーテールに結んでいる。


白と青の騎士鎧きしよろい、それからマントを身につけていた。


(こいつ……強いな)


と俺は目を細める。


その女騎士からは、勇者デレクが持っていたような、大きな力の波動を感じる。


相当な実力者だろう。


――――女騎士は、少女のほうを見ていたが、次いで、俺のほうへと視線を向けた。


さらに女騎士は、周囲をざっと見回す。


尋ねてきた。


「これは……どういう状況だ? 貴殿きでんが、ミリーナを助けてくれたのか?」


少女はミリーナという名前らしい。


俺は答えた。


「ああ。そこのトカゲどもに、この娘が取り囲まれていてな。俺が蹴散らした」


「……そうか」


「お前は保護者か? ならば、娘の安全には気を配っておくことだ。命を落としてからでは、全てが遅いぞ」


「いや……保護者、というわけではないのだが……」


と女騎士は、歯切はぎれの悪そうにしている。


どうやらミリーナの親というわけではないらしい。


……まあ、明らかに身なりが違うからな。


ミリーナは庶民だが、この女騎士は高貴な身分だろう。


俺は言った。


「……まあとにかく、この娘の帰路は、お前が守るといい。俺はゆく」


と、立ち去ろうとする。

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