第3章60話:自己紹介
「待て」
と女騎士は告げた。
「近くに、ミリーナの村があるんだ。立ち寄っていくといい。私が貴殿をもてなそう」
「……」
面倒な話になったな。
どう断ろうと思ったが……
「ぜ、ぜひ来てください! 美味しいお昼ご飯を作りますから!」
とミリーナも言ってきた。
はぁ……と俺はため息をついてから。
「……わかった。では、もてなしを受けるとしよう」
そう答えるのだった。
森を歩く。
この森の先に村があるらしい。
歩きながら、女騎士は言った。
「そういえば名を聞いていなかったな。よければ教えてくれないか」
「……」
アンリと名乗ろうとした。
しかし、先日、街の人間たちと敵対してしまったことを思い出す。
いちいちあんなふうになってしまうのは面倒だと思った。
だから俺は別の名前――――前世の名前を用いることにした。
「
「コーヘイか。変わった名だな。だが、覚えやすくて良い名前だ」
と女騎士は微笑んだ。
さらに女騎士のくちびるが動く。
「私はアレクシアだ。なんとなく察しているかもしれないが、神殿国の騎士だ」
「アレクシアさんは、すごい騎士さんなんですよ!」
とミリーナがそのとき口を挟んできた。
「騎士の中でも、すごく偉い人で!」
「ほう。どう偉いんだ?」
と俺は尋ねた。
ミリーナが答える。
「騎士のみなさんをまとめている立場の人です! みんなのリーダーなんです!」
ふむ。
騎士団長ということか?
思ったよりも大物のようだ。
と、そこでアレクシアが口を挟んだ。
「ミリーナ……あまりそのことは公言しないでくれ。一応隠しているのだ」
「あ……すみません」
とミリーナが謝った。
アレクシアはどうも、俺が思っているより大物らしいな。
ただ、その素性について本人は隠したがっているようだし、あまり詮索しないほうがいいだろう。
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