第3章49話:刃竜戦

刃竜がわずかに宙に浮く。


そのまま滑空かっくうして、俺に急接近きゅうせっきんしてきた。


鋭い腕とツメではらってくる。


速さと威力と魔力がとてつもなく込められた、破壊的はかいてきな一撃だ。


しかし、俺はバックステップで後ろに跳んで、その薙ぎ払いを回避する。


刃竜は空振からぶったものの、その余波よはとして轟風ごうふうが吹き荒れた。


「……ッ」


刃竜が次なる攻撃を放ってくる。


今度は尻尾による薙ぎ払いだ。


しゃがんで回避できそうになかったので、俺は上へと跳んだ。


「愚かな」


と刃竜がつぶやいた。


刃竜は口を大きく開いて、そこにあかオレンジ色の魔力を集中させた。


(ドラゴンブレスか)


と俺は推測した。


その予想通り、刃竜の口から放たれたのは、炎のブレスである。


まるでビームのごとき勢いで、竜の炎が放たれる。


灼熱しゃくねつの熱量と魔力が込められた、凶悪なブレスであるが……


俺は念力格闘術で、ブレスを殴りつけ、炎を砕いた。


「ッ!?」


さすがに刃竜も驚いたようだ。


俺は告げる。


「お前の本領ほんりょうは、炎ではないだろう? 得意の武器で来い」


「……調子に乗るな、人間」


と刃竜は激怒げきどを含んだ声で、言った。


「ならば望みどおり、我の全力を叩きつけてやろう」


そして刃竜は翼を使って飛翔ひしょうする。


強烈な風圧で、俺の服が激しくはためく。


空に舞い上がった刃竜は、俺から距離を取るように後ろに引いて、地上から40メートルほどの位置で滞空たいくう


そこから翼に大きく力をめて、一気に解き放った。


「……!」


発生したのは、無数の刃。


数十すうじゅう銀閃ぎんせんが、かまいたちのごとく飛来してくる。


一つ一つが3メートル以上の大きさを持つ、巨大な刃のかまいたち。


斬性ざんせいを持った光の刃。


速度、魔力、威力はもちろん、驚異的な切断力せつだんりょくを持ち、ダイヤモンドでさえ、この刃の前では紙切かみきれに過ぎないであろう。


普通の人間が直撃したら身体をぷたつにされるだけでは済まない。


しかし。


「ふっ!!」


俺は念力格闘術によるパンチで、刃を粉砕する。


さらに別の刃を蹴り砕き、また別の刃を手刀しゅとうではたき落とす。


刃竜の真骨頂であるやいば攻撃こうげきを、格闘でくだく。


「なんじゃと!?」


刃竜が驚愕の声を上げた。






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