第3章43話:本気

騎士団長の斬撃が来るかと思ったが、その前に。


「セイッ!!!!」


後ろから迫るハンマー攻撃。


水平に振りぬかれたハンマーが俺に直撃せんとする。


しかし俺は振り向きざまに腕でガードし、ハンマーの威力を封殺ふうさつ


さらに、ちょうど同時に炎魔法弾ほのおまほうだん水魔法弾みずまほうだんが直撃しそうになったが、これも念力格闘術の拳で封殺する。


だが。


「ハァッ!!」


騎士団長の攻撃。


これに関しては、念力格闘術が間に合わなかった。


俺はうっかり首に斬撃をもらってしまう。


しかし、俺はサイコキネシスの防御膜ぼうぎょまくをまとっているので、傷一きずひとつ負わない。


「なに……!? やいばが通らない、だと!?」


と騎士団長が驚愕している。


しかし驚いたのはこちらのほうだ。


俺は目を見開き、制止する。


そして。


「くく、」


静かに笑いが込み上げ、やがて大笑たいしょうした。


「くははははは!! 素晴らしい連携ではないか。驚いたぞ。まさか俺が、一撃をもらってしまうとはな」


「な、何を笑っている!?」


「いや、馬鹿にしているわけではない。むしろ褒めているのだ。お前たちごときが、俺に一太刀ひとたちでも浴びせられるとは思っていなかったからな。非礼ひれいびなければいけない」


俺は微笑みながら、騎士団長をまっすぐ見つめる。


「騎士団の名を名乗れ。潰す前に、覚えておいてやる」


「……貴様に名乗る名などない」


と騎士団長はハッキリと否定のを示した。


しかし俺は気分を害さない。


「くくく、そうか。では『名知なしらずの騎士団』として、記憶の片隅に覚えておくとしよう」


そして、俺は力を解放することにした。


「お前たちに敬意を表して、俺の本気を見せてやる」


念力格闘術を中止する。


サイコキネシス本来の力を発動する。


俺は人前ひとまえでサイコキネシスを使う気はない。


サイコキネシスの目撃者が増えれば、弱点を見抜かれたり、対策が取られるかもしれないからだ。


しかし、今回は気分が良かった。


だから人目ひとめに触れることを、今だけは自分に許す。


せめて、この騎士団を一人ひとりのこらず皆殺みなごろしにすることで、目撃者の隠滅いんめつはかるとしよう。


「しかと見よ。これが神をも殺しうる無敵の力だ」


空に向けて、手をかざす。


地上から7メートルぐらいの高さに、サイコキネシスを発動した。


次の瞬間、周囲の何もかもが、その虚空こくう一点いってんへと吸い寄せられ始める。


まるで目に見えない透明のブラックホールでも出現したかのように。


人も。


獣も。


倒木も岩石も。


その一点へとすさまじい力で引き寄せられる。

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