第3章38話:騎士

―――第3章―――



街道を歩き続ける。


夜になる。


野宿をした。


しかし、この日はなんとなく寝付けず。


ほんの3時間ほど、浅い眠りにつくだけだった。





翌日。


昼。


晴れ。


街道を歩き続ける。


「……」


眠気が襲ってくる。


昨晩はよく眠れなかったからな。


遅れて睡魔がやってきたようだ。


「少し昼寝でもするか」


急いでリースバーグ神殿国へ行く必要はない。


だから俺は、少し休むことにした。


ちょうど近くの草原に、手頃てごろな樹木があった。


少し小高こだかい丘のうえに立つ一本木いっぽんぎ


その根元に座り、樹木に背を預け、俺は昼寝をすることにした。


眠る前に、サイコキネシスによる結界を張っておく。


魔物や人間が、結界に触れた場合、俺に教えてくれる。


これで、眠っているあいだに誰かに接近されることはない。


「すぅ……」


俺は目を閉じ、眠りの園へと落ちていった。





……


……俺は。


眠りの底で、ふいに、脳内にシグナルを感じた。


誰かがサイコキネシスの結界に触れたシグナルだ。


意識が浮上する。


目を覚ます。


まだ時刻は昼だ。


眠っていた時間は10分か20分ほどだろう。


――――周囲を取り囲む気配があった。


1人や2人じゃない。


50人近い男女が、俺を取り囲んでいる。


その服装を見て、俺はすぐに、何者であるか理解した。


こいつらは……ルドラール王国の騎士団だ。


数名すうめいの騎士と、数十名すうじゅめいの兵卒からなるのがルドラール王国の騎士団である。


全員が紅色の兵士服へいしふくを着用している。


ルドラール王国をあらわすたかの紋章が、衣服の肩口に刻まれていた。


「何の用だ? ルドラールの者ども」


と俺は尋ねた。


すると騎士団長きしだんちょうらしき男が、前に出てきた。


彼は尋ねてくる。


「アンリ・ユーデルハイトだな?」


「そうだが」


「貴様を勇者殺ゆうしゃごろしの罪で、討伐する」


「……何?」


俺はわずかに眉をぴくりとさせた。


勇者殺しの罪……だと?


「勇者殺し……それはデレクを殺したことを言っているのか?」


と俺は尋ねた。


「そうだ」


と騎士団長は肯定する。


ふむ……


俺はしばし困惑した。


たしかに俺はデレクを殺した。


だが、なぜそのことをルドラール王国の連中が知っている?


俺がデレクを殺した事実を知っているのは、ガレイン岩山で出会った4人組ぐらいだろうが……


その4人組も、皆殺しにした。


いまはもう、俺が勇者を殺したことを誰も知らないはずだ。


――――そんな俺の疑問を察したように、騎士団長は言った。


「精霊さまのお告げがあったのだ」


「お告げ」


「ああ。貴様がデレク様を殺したことを、精霊さまが、聖女さまにお伝えになった。だからルドラール王国は、貴様を勇者殺しの犯人として指名手配しめいてはいしている」


「……なるほど」


納得した。


聖女……か。


おそらく【水幻すいげんの巫女】と呼ばれている聖女だろう。


精霊しか知り得ない情報を、聖女にだけは教えるといわれている。


その情報によって、俺がデレク殺しの犯人だと知れ渡ったのか。

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