第2章32話:転移魔法

「ふう……」


と俺はひと息ついた。


戦闘のねつが身体に残っている。


俺は深呼吸をして、それを冷ます。


改めて周囲を見渡した。


壁が崩落ほうらくして積載せきさいした瓦礫がれきたち。


天井も崩れて、あいた隙間すきまからは青空が見える。


射し込んでくる陽光。


(さて……転移魔法を回収しないと)


救済ボスを倒すと、転移魔法を習得できる【スキル石】が手に入る。


ゲームでは、救済ボスの討伐後に、砦長とりでちょう居室きょしつに宝箱が出現し、そこにスキル石が入っているのだが……


(宝箱が出現するはずの、ローゴスの部屋がぶっ壊されてしまったからな。この場合どうなるんだ?)


と俺は悩んだ。


いや、そもそも。


救済ボスの討伐後とうばつごに、宝箱が出現するというのも、おかしな話だ。


ゲームでは宝箱がいきなり現れることはあったが……


ここはゲームではなく、異世界。


何もないところに宝箱が出現するというトンデモ仕様しようは有り得ない。


たぶん、異世界では何らかの辻褄つじつまあわせが行われることになっているはずだ。


たとえば、スキル石を保管している倉庫があるとか――――


たとえば、ローゴスを倒したあとに精霊がやってきて、スキル石を授けてくれるとか――――


「まあ、とりあえず……」


スキル石がどこかに落ちていないか、探すべきだな。


倒壊とうかいした居城きょじょうを探し回るのは苦労しそうだが、とりあえず周囲を一回ひとまわりしてみよう。





……で。


30分後。


俺は居城の奥の床下ゆかしたに、地下室を発見した。


その地下室におりて、たどりついた部屋を探ると、それらしき宝箱を発見する。


さっそく開けてみた。


中に入っていたのは緑色の鉱石。


(スキル石だ)


――――スキル石。


使用することでスキルを得ることができる石。


スキル石を額に当てることで、どんなスキルが宿った石なのかがわかる。


俺はそのスキル石を、自分の額に当てた。



◆◆◆


【転移魔法のスキル石】

転移魔法を習得することができる。

転移魔法を使うときは移動先をイメージしながら「転移」と唱える。


◆◆◆



……よし。


目的の物が、手に入った。


俺はさっそくスキル石を使用することにする。


スキル石を使うときは、石を手に持って、魔力を送り込むだけだ。


「……ッ」


俺の魔力をスキル石に注入する。


すると。


「おお」


俺の身体に緑色の光のオーラと、光の玉が溢れた。


スキル石を習得したときのエフェクトだ。


このあたりはゲームと同じだな。


――――数秒後。


俺を取り巻く光が霧散した。


スキル石が、緑色をうしない、色褪いろあせたいしくれに変わり果てている。


使い終わったスキル石は、このように色を失う。


これで転移魔法の習得は完了だ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る