第2章28話:砦の主

その後。


俺は目につく範囲の魔族を、片っ端から殺していった。


逃げようとした魔族は、サイコキネシスで足をもつれさせ、転倒させてから、殴殺おうさつした。


そして。


あらかた片付けたあと、俺は仁王立におうだちになる。


砦の中心―――居城きょじょうを見上げる。


(救済ボスは、最上階さいじょうかいにいたはずだ)


記憶を思い出す。


俺は、最上階を目指して、居城に立ち入った。


中にも魔族がいた。


武装している者もいれば、そうでない者もいる。


目についた魔族は、片っ端から殺していく。


全て念力格闘術による徒手空拳だ。


1階の全てを部屋を回る。


魔族を殺していく。


「ぐあああっ!?」


「な、なんだこいつ! 強え!?」


「こ、こんなバケモノがやってくるなんて、聞いてないわ!」


「や、やめろ。来るな。うあ、うあああああああああああッ!!?」


魔族たちの断末魔が何度もこだまする。


制圧が完了したら、俺は2階に上がる。


その後、2階でも3階でも、全ての部屋を回って、魔族を全滅させていった。


気になるアイテムや戦利品は回収して、アイテムバッグへ放り込んだ。


「さて……最上階か」


最上階にたどりついた俺。


大きな扉がある。


ここにくるまでに100体以上の敵を殺した。


残るは……この扉の先にいる1体だ。


俺はゆっくりと扉を開ける。


部屋の中に入る。


砦長とりでちょうの部屋だ。


無骨な部屋。


入り口から正面の椅子に向かって、じゅうたんが敷かれている。


その椅子に座っているのは、この砦の主……


赤色の魔族。


ゲームでの名前は、ローゴスだ。


2メートルぐらいの巨体。


筋骨隆々の肉体。


ローゴスは尋ねてきた。


「砦を襲撃してきた者がいる……そう報告を聞いていたが、貴様か?」


「いかにも」


と俺は答えた。


「お前が砦の主……ローゴスだな」


「ほう、我の名前を知っているか。支配下の村や街の連中にでも聞いたか?」


「そう……だ」


本当はゲーム知識で知っているだけなのだが……


そういうことにしておこう。


ローゴスは尋ねてきた。


「そうか。襲撃者しゅうげきしゃは貴様一人だけか?」


「ああ」


「貴様、名前は?」


「アンリだ」


答える。


するとローゴスは、意外な発言をした。


「アンリ。……我の傘下さんかに入れ」


「……何?」


俺は顔をしかめた。


ローゴスは言った。


「砦の最上階まで、単身で突破してくる武勇ぶゆう……賞賛しょうさんあたいする。我と貴様が手を組めば、もっと広範囲を支配できるだろう」


「……」


「ゆえに、我の下につけ。そして今後はその力を、我がもとで存分ぞんぶんるうがよい」


ローゴスは茶化している様子ではない。


まさか俺を勧誘してくるとはな。



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