第2章29話:戦闘開始

俺は肩をすくめて、答える。


「残念ながらお断りだ」


「なぜだ?」


「俺があるじうやまうには、貴様は弱すぎる。ただそれだけだ」


「……くく」


とローゴスは笑った。


そしてローゴスは言う。


「随分、自信家じしんかのようだな?」


「俺は事実を言ったまでだ」


「事実だと? 我の桁違けたちがいの魔力量まりょくりょうを、肌で感じているだろう? それに対して貴様の魔力の少なさは何だ? よくそれで最上階さいじょうかいまで来られたものだな?」


「ああ。俺は魔力に頼らなくても、強いからな」


「ふン。ここまで昇ってきたのだ、弱くはないのだろうと認めてやるが……うぬぼれが過ぎる」


ローゴスが立ち上がった。


2メートルぐらいはある巨体だ。


威圧感がある。


「あくまで我と戦うというのだな?」


「ああ。最初からそのつもりだ」


「貴様は、唯一、生き残ることができた道を捨てたぞ」


「そんなことはない。最初から結末は決まっている」


「結末?」


「ああ。俺の勝利で終わるという結末だ」


「ははは!」


ローゴスが笑った。


そして戦意を高める。


濃密な魔力がローゴスの身体にまとわりつき、練り上げられていく。


「その威勢が口だけかどうか、確かめてやる!」


次の瞬間。


ローゴスの身体がかき消えたかと思うと。


一瞬にして、眼前に現れていた。


「ふンッ!!!」


ローゴスが拳を放ってくる。


俺はそれを、片手で受け止めた。


「……!」


ローゴスが目を見開く。


実は、さきほどから俺は、念力を全身にまとわせ、強固な守りを構築していた。


サイコキネシスを薄く広げ、肌にはりつくように展開して身を守る、防護膜ぼうごまくだ。


ついでにサイコキネシスによって動体視力どうたいしりょくも強化している。


でないと、速すぎる敵の攻撃を、目で追えなくなってしまうからだ。


俺は微笑んで、聞いた。


「どうした。その程度か?」


「くくく! やるではないか。ならば、これはどうだ!?」


ローゴスが拳の連撃れんげきを高速で繰り出してくる。


強大な魔力が込められた拳だ。


一撃一撃いちげきいちげき剛風ごうふうがまとわりついており、しかもそれを、雷速らいそくのごときスピードで放ってくる。


「ぬおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーッ!!!」


速すぎる攻撃だ。


しかしローゴスの攻撃は、直撃してもサイコキネシスの膜に阻まれ、無効化される。


傍目はためには、俺がタコ殴りにされているように見えるだろうが、ダメージは通っていない。


トドメとばかりにローゴスがすくいあげるパンチを放ち、それが俺の胸部きょうぶを打つ。


だがもちろん、俺にダメージは入らない。


「もう一度聞くが――――その程度か?」


「ぬ!?」


俺にダメージがないと気づき、ローゴスが驚愕する。


そんなローゴスに、俺は反撃の一撃を繰り出した。


「シッ!」


正面に向かって放つ拳の一撃。


それがローゴスの腹に突き刺さる。


「ぐおおぉあっ!!?」


ローゴスがぶっ飛んだ。


もんどり打って、椅子をなぎ倒しながら、壁にぶつかる。


壁に張り付いた状態から、ずるりと落ちて、座り込んだローゴス。


「ば、バカな……なんだ、この威力は……?」


ダメージによろめきながら、ローゴスが起き上がる。


俺は無慈悲に告げる。


「だから言ったはずだぞ。お前は弱すぎると」


「ぐっ――――」


「俺は、お前のような雑魚とは手を組まない。お前はただ、俺に蹂躙じゅうりんされて死ね」


俺の言葉に、ローゴスが冷や汗を浮かべる。




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