第159話 青白い光
「行く手を阻むもの、万死に値する罪と心得よ」
その言葉が聞こえたと同時に、身体に凄い圧がかかった。
立てないぐらいの圧に俺達の体勢はだんだんと低くなる。
真聡が言ってた天秤座の固有能力ってやつだろな。
本当に動くのすらキツい。
けど天秤座は近付いてきている。
なんとかしねぇと。
そう思っていると、佑希が話しかけてきた。
「2人とも、動けそう?」
「ちょっと今すぐはキツいな…」
「同じく……時間がいる……」
俺達の言葉に佑希は「わかった」とだけ返事をした。
そして足元と天秤座の足元に向けてカードを投げた。
戦場に煙が充満していく。
そして佑希は力を振り絞るように、天秤座に向かっていった。
いや…何で動けるんだよ佑希は…
俺がそう思っていると、戦場に金属音が響いた。
それも何度も。
佑希はこの重圧に負けずに、天秤座と戦っている。
俺だって、負けてられない。
ガントレットの爪を地面に突き刺す。
そして力を振り絞って、立ち上がろうとする。
そのとき、煙が晴れた。
黄色の星座騎士が2人、天秤座に向けて剣を振るっている。
煙の中で分身を作ったらしい。
……それでも、天秤座は平気そうに戦っている。
そんな天秤座をどうすれば倒せるのか。
たぶん、
だが、ペルセウス座は真聡が持っている。
いや「持っていけ」って言ったのは俺だけど。
だから流星群を使うなら俺1人、獅子座の力だけで撃たないといけない。
真聡に相談して力の撃ちだす方法を変えてみた。
それでもペルセウス座の補助がないと、流星群の青白い光が少し出るだけの状態だった。
それでも、やらないといけない。
というか、それ以外の案が何も浮かばなかった。
俺は気合いを振り絞って、なんとか2本の足だけで立つ。
それとほぼ同時に、佑希が吹き飛ばされた。
分身も消された。
そして、天秤座がこちらを向いた。
「君達も入念に潰さないと駄目そうだね」
その言葉と共に、大きな岩が空中に生成された。
俺は咄嗟に隣の鈴保を見る。
鈴保は槍を支えにしながら、何とか立っていた。
俺は駄目もとで「なぁ鈴保」と話しかける。
「何」
「あの岩、どうにかできるか?」
「……無理。
なんて言ってられないでしょ」
そう答えた鈴保は、槍を地面から引き抜いた。
そして、ふらふらと俺の前に出た。
俺はその背中に「悪い」と投げかける。
「貸し1ね」という言葉が聞こえた。
大岩がこちらに向かって投げられた。
鈴保は槍を構えて、大岩に向かって投げた。
投げられた槍は一直線に大岩に向かって飛び、激突する。
鈴保は「あと、頼むわよ」と言いながら、地面に膝をついた。
俺は「任せろ」と返して、天秤座との距離を詰める。
歩いて進むのがやっとだ。
けど、大岩のお陰でまだ俺の姿は天秤座に見えてないはず。
鈴保の槍が大岩を割ったら、力を振り絞って走る。
そして、流星群を当たる。
これが俺の作戦だ。
しかし、大岩が割れる前に槍が消滅した。
大岩が再び俺に向かって、飛んでくる。
俺は反射的にガントレットを投げつける。
ガントレットが大岩とぶつかって押し合う。
大岩を食い止めはできてる。
でも、割れない。
……もうやるしかねぇ。
そう思った俺は、意識を拳に集中させる。
そして、大岩に向けて拳を振るう。
しかし、いつもと同じ星力が飛んだだけだった。
まだ、大岩は割れない。
ガントレットが消滅した。
大岩がまた俺の方に向かってくる。
結局、俺じゃ駄目なのか?
そんな考えがよぎった。
俺は、戦えない誰かを助けたい。
そう思って
でも、今はそれだけじゃねぇ。
一緒に戦う仲間を助けるために、もっと強くなりたい。
俺は賢いわけじゃねぇ。
それでも、真聡1人に全部を背負わせたくねぇ。
そうだ。
弱音なんて吐いていられねぇ。
やるだけやるしかねぇ。
俺は力を振り絞って声を張り上げてながら、もう一度岩に向けて拳を振るう。
拳から星力が飛んだ。
それは、青白い光を放っていた。
流星群の光だ。
青白い光を放つ星力の塊が、大岩にぶつかる。
だが、まだ岩は砕けない。
「だったら…!」
俺は力を振り絞って、拳を振るいまくる。
乱れ飛ぶ青白い星力が大岩を削っていく。
そしてついに、大岩が砕け散った。
俺は構わず、拳を振るい続ける。
青白い星力が今度は天秤座を襲う。
このままなら押し切れるかもしれねぇ。
でもそろそろ身体の限界を感じる。
俺は最後に思いっきり、腕を引く。
「獅子座、流星群!!!」
そして、ひと際大きい青白い光を放つ星力が天秤座に向かって飛ぶ。
最後の流星が天秤座に命中して爆発が起きた。
そして、天秤座の姿が見えなくなった。
疲労感から、俺は地面に膝をつく。
でも圧は消えたし、流石にやった……よな?
そう疑問に思っているうちに、爆発の煙が収まり始めた。
そのとき「こんな技まであるんだ……」との声が聞こえた。
天秤座は、まだ立っていた。
思わず俺の口から「嘘だろ……!?」との声が漏れる。
「今一度告げる、行く手を阻むもの、万死に値する罪である」
再び、凄い重圧が俺達を襲う。
さっきよりも強い圧に星鎧が消滅した。
「その罪、命で償え」
さらに圧が強くなる。
呼吸がしづれぇ。
……ここまでしても駄目なのかよ。
そのとき。
空から、青白い光が降り注いだ。
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