第158話 渡された
「テーブルさん座」
天秤座がそう呟くと、
反応できなかった真聡は上に吹き飛ばされた。
完全な不意打ち。
流石の真聡でもこれはヤバい。
俺はカバーに入るために天秤座の距離を詰める。
だったら3人で同時攻撃を仕掛ければいい。
けど。
「本当に面倒な!」
天秤座が身体から黒い靄を放った。
衝撃波のように襲ってくる黒い靄。
俺達3人は吹き飛ばされ、後ろに下がる。
天秤座は次に空中にいる真聡に向けて、黒い靄を放った。
さらに吹き飛ばされ、地面に向かって落ちていく真聡。
「真聡はある程度のタイミングで、1度前線から下がる」のは話し合って決めてた。
けど、あのやられ方は大丈夫なのか。
いや、それを気にしてる場合じゃない。
どうであろうと「天秤座とはここで蹴りを付ける」と真聡は言っていた。
俺は気を取りなおして、真聡から渡されたプレートをリードギアに挿し込む。
俺が真聡から借りたのはこじし座。
いつも真聡が近接戦闘をするときに使っている星座。
だったら俺にもうまく使えると思って、こじし座を選んだ。
……本当はペルセウス座を借りたかったけど、作戦上仕方ねぇ。
リードギアを起動させると、身体中にいつも以上に力がみなぎるのを感じた。
確かにこれは真聡は「扱いには気を付けろ」と言っていたのがわかる。
俺はそのみなぎる星力と共に地面を蹴る。
そして間合いに入って、天秤座に拳をお見舞いする。
けど。
「流石に慣れたよ。君の拳も」
岩の鎧のようなもので受けられてしまった。
最初は結構効いていた。
だけど、真聡と話す前にもかなり接近戦を仕掛けていた。
どうやらもう対策されてしまったらしい。
そして「お返しだ」と呟きながら天秤座が拳を構えている。
俺はその一撃を避けるために全力で後ろへ跳ぶ。
すると、簡単に間合いから出ることができた。
いつもと同じ力加減なのに遠くへ下がれた。
距離を詰めるときも感じたけど、これが星座の力を2つ使った力か…。
そう思いながら、天秤座を確認する。
鈴保と佑希が俺と入れ替わるように天秤座と戦っている。
そして、2人の攻撃の隙を狙って
俺はまた地面を蹴って、戦場を駆ける。
そして天秤座の背後を取る。
鈴保と佑希が攻撃を受けて後ろに下がった。
俺は入れ替わるように、天秤座との距離を詰める。
気づかれた。
けど、構わず拳を振るう。
こちらを向かれた。
だが、今度は入った。
吹き飛びながらも体勢を整える天秤座。
次はどう動く?
様子を見ながら構えている俺の隣に、佑希が並んできた。
少し遅れて、鈴保が「リードギア使いこなしてるね」と呟きながら来た。
それとほぼ同時に、立ち上がった天秤座が「真聡以外にも2つ使うなんてね……」と呟いた。
……誰に聞いたんだ?
そんな疑問が浮かんだ。
その隙が命取りだった。
「まぁいいか。
大地よ、隆起せよ。テーブル山のように」
真聡を吹き飛ばしたあの技が来る。
そう感じた俺は慌てて後ろに下がる。
しかし、遅かった。
足元が急に盛り上がって、俺の身体は宙に放り出された。
当然、俺よりも天秤座に近い鈴保と佑希も同じように。
このままだと、俺達も真聡と同じ目に合う。
でも俺は、こじし座のお陰で2人よりは距離を取れている。
何とかしねぇと。
そう思った俺は武器を生成して、斬撃を天秤座に飛ばす。
けど、岩の壁を生成されて防がれた。
しかし、その隙に遠くにいて無事だった日和と
日和と由衣が接近戦を仕掛ける。
由衣が前に出て、日和がすぐ後ろから水弾を撃ちこむ。
2人が天秤座の気を引いてくれてるお陰で、俺は着地出来た。
でも、由衣が岩を纏った拳で吹き飛ばされた。
そして日和には空中に作られた岩が迫る。
俺は援護に入るために既に走り出している。
でも間に合わねぇ。
そう思っていると、日和はリードギアにプレートを差し込んだ。
そして走り出した。
日和は天秤座の周りを跳ねながら飛んでくる岩を避けている。
同時に水弾も撃ち続けている。
確か、日和が選んだのはとびうお座。
佑希が回収していたらしい。
とびうおって水面を跳ねるよな。
…だから跳ねるように動いてるのか。
天秤座の斜め後ろから間合いに入った俺は、武器の爪で刺すように拳を突き出す。
しかし、避けられた。
「君、凄く前に出てくるよね」
「それが俺の戦い方だからな!」
今度は左の拳を振り上げる。
爪先は天秤座の避け損ねた身体を掠める。
「君は君で、面倒だ」
足元が盛り上がる感覚。
また来る。
そのとき、槍が飛んできた。
天秤座はその槍を受けて後ろへ吹き飛ぶ。
同時に「どいて!」という叫び声が聞こえた。
俺は反射的に右に避ける。
するとさっき俺がいた場所を、深紅の鎧が駆け抜けた。
天秤座に迫る深紅の鎧。
鈴保だ。
鈴保は投げた槍を再生成して、天秤座に向けて振るう。
天秤座は槍の穂先を受けないように、岩の鎧を作って防いでいる。
そこに半透明の羊と水弾も飛んできている。
天秤座の防御が崩れ、槍が入った。
鈴保はそのまま槍で突き刺す。
槍の穂先は、天秤座の右の脇腹に刺さった。
しかし、天秤座は刺さっている槍の穂先を掴んだ。
「よって……たかって!!」
その叫びと共に天秤座が身体を半身引いた。
槍と鈴保は天秤座に引き寄せられる。
このままだとマズい。
そう思って俺は、リードギアを起動させて走り出す。
しかし、鈴保も無策ではなかったらしい。
「佑希!」
その叫びとほぼ同時に上からカードが降ってくる。
そしてカードが爆発し始める。
けど、この距離だと鈴保まで巻き込まれる。
俺は「文句言うなよ!」と断ってから、鈴保の腹を肩に乗せる形でその場を離れる。
そして、少し離れた場所で下ろす。
振り返ると、爆発の煙で天秤座は見えない。
すると鈴保が「雑い」と呟いた。
「無茶言うなよ…」
「でもまぁ、打合せなしで今のは良かった。
あの担ぎ方のお陰で私は天秤座の方を向いてたから、毒を撃ちこんでおいたし」
なんで鈴保は毎回、俺には最初辛辣なんだ…?
でもまぁ、結果的に褒められたから良しとするか。
そう思っていると、上から「良い連携だったな」と言いながら佑希が下りてきた。
右手には紐のようなものを掴んでいて、その先には10羽ぐらいの鳩がいる。
なるほどな。
佑希はハト座を使ってずっと上空にいたのか。
そこで俺の中に1つの疑問が浮かんだ。
「…鈴保はどうやって降りてきたんだ?」
「佑希に頼んでそこの壁に向けて、私を蹴ってもらった。で、とかげ座の力で壁に張り付いた」
鈴保が斜め後ろの壁を指さしながらそう呟いた。
「雑というか…よくそれで何とかなったな…」と思った。
でもそう言うと「文句ある?」と言われる気がする。
なので俺は「よく思いついたなそれ…」としか言えなかった。
そのとき、天秤座の周りの煙が晴れた。
天秤座は堕ち星の姿で立っていた。
その姿を見て、思わず「これでも駄目なのかよ」と口にしてしまった。
だが弱気になってる場合じゃねぇ。
俺達3人は武器を持って構えて、次に備える。
「僕の行く手を阻むもの、万死に値する罪と心得よ」
その言葉が聞こえたと同時に、身体に凄い圧がかかった。
立てないぐらいの圧。
その圧に、俺達は戦場に膝をつくことを強いられた。
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