第157話 面倒な相手
作戦会議を終え、全員で走って市役所地下駐車場の出入り口を目指す。
出入り口の坂を上って地上に出る。
戦況を確認すると、ちょうど天秤座から澱みを衝撃波のように放たれたのが見えた。
そして、
俺は反射的に無詠唱の身体強化魔術を使用して走り出していた。
そして清子の後ろに回り込んで、左手を前に出して言葉を紡ぐ。
「風よ。渦巻き、人を受け止める壁と成れ」
吹き飛んできた清子は風の壁にぶつかり空中で止まった。
「大丈夫か、清子」と声をかけると、清子がこちらを向いた。
大丈夫そうに見えるのでとりあえず、地面に下ろす。
すると「……もう大丈夫なの」と清子が聞いてきた。
仲間たちに聞いた話によると「
……神秘には神秘しか通用しないと知りながらも生身で。
清子にまで迷惑をかけたと思うと少し、頭が痛くなってくる。
だが、今はそんなことを言っている場合ではない。
「…あぁ。あとは俺が、いや俺達がやる」
そして清子の前に出る。
追いついてきた5人の仲間たちが横に並んだ。
一方、天秤座は射守が射った矢を落とし切ったところのようだった。
そして俺を見て「戻ってきたんだ」と呟く。
「あぁ。お前が元に戻さないといけないからな。
全員、決めたとおりに頼むぞ」
俺はそう言いながら、ギアを喚び出す。
仲間達はそれぞれ返事の言葉を口にしながら、レプリギアを喚び出す。
それぞれが決めた手順を取る。
「星鎧生装!」と6人の声が重なる。
それぞれのギアから星座が飛び出し、選んだ相手を光に包み込む。
その光の中で、高校生達は神秘の力である星座の力を宿した鎧に身を包む。
そして、光は晴れる。
俺は真っ先に飛び出す。
今回はちゃんと話して決めたことだ。
まずは俺が一番前に出て、天秤座を消耗させる。
間合いに入ったため、言葉を紡ぐ。
「水よ。我が右腕に宿りて押し流し給え!」
水を纏った右手を天秤座に叩き込む。
その拳を天秤座は腕に土を纏いながら受けてきた。
しかし、天秤座は後ろに吹き飛ぶ。
だが、へび座に同じ技を当てたときよりも威力が弱い。
あのときと条件は違う。
だが、俺自身が万全じゃないのもあるだろう。
厳しい戦いになるかもしれない。
そう思っていると、天秤座が口を開いた。
「水…また昨日と同じ爆発を起こすつもり?」
「さぁな」
「まぁ言う訳ないよね!」
その叫びと共に天秤座の周りに岩が生成され、地面からは岩の柱が現れる。
天秤座が見えなくなった。
しかし、金属がぶつかるような音が広場に響く。
別で動いている
だが、まだあいつらだけに任せるわけにはいかない。
俺はリードギアにプレートを差し込んで空を舞う。
3人の星座騎士が天秤座と戦っているのが見える。
そして少し離れたところから2人の星座騎士、由衣と日和が半透明の羊と水弾で遠距離攻撃をしているのも見える。
だが今回はあまり長くは飛べない。
俺は急いで天秤座との距離を詰める。
佑希達3人が下がった。
俺は入れ替わるように突っ込む。
「これはこれで鬱陶しいな!」
天秤座が自分の目の前に壁を生成した。
このままだと壁に激突することになる。
俺はプレートをリードギアから引き抜く。
そして交代でエリダヌス座のプレートを差し込む。
翅が消滅する。
俺は足でブレーキをかけながら、杖を生成する。
そして言葉を紡ぐ。
「エリダヌスの座よ。今、その大いなる神秘の力と水の力で、澱みに塗れ、堕ちた星の座と成りし天秤の座を流し浄め給え!」
杖先に青い魔法陣が現れる。
そして、エリダヌス座の力が上乗せされた水砲が杖頭から放たれる。
水砲が土壁とぶつかる。
俺は万全の状態じゃない。
だが、こちらは2つの星座の力を使っている。
この条件なら、負ける通りはない。
水砲が土の壁を貫く。
水砲の勢いは止まらず、土壁の後ろにいる天秤座を飲み込む。
俺はそのまま、杖を消滅させて距離を詰める。
言葉を紡ぎながら。
「電流よ。我が身に宿れ。そして澱みに塗れ、堕ちた星の座と成りし天秤の座に天の裁きを与え給え!」
天秤座目掛けて、電気を纏った拳を振るう。
拳は体勢を立て直していた天秤座に命中した。
天秤座は再び吹き飛んで地面を転がる。
「なるほどね……面倒な相手……か…」
天秤座は体勢を立て直しながらそう呟いた。
「何の話だ。誰に言われた」
「こっちの話」
だが今思えば、稀平も誰かに堕ち星にされたと考えるべきか。
そう思いながら、天秤座の次の出方を窺う。
だが、その判断は間違いだった。
「テーブルさん座」
その言葉と共に俺の足元が勢い良く盛り上がる。
予想していなかった攻撃に、俺の身体はあっけなく宙を舞う。
テーブルさん座。
南天にあり日本からは見えない星座。
モチーフは確か実際にあるテーブルマウンテンで近代に作られたとなっている。
それを土魔術の強化に使ってくるとは。
俺のエリダヌス座の使い方をヒントにしたのか?
そう思いながらも、俺はリードギアに差しているプレートを入れ変えようとする。
しかし。
既に澱みの塊が目の前まで迫っていた。
俺はその塊に被弾して、さらに吹き飛ばされた。
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