第110話 ギリシア神話の英雄
「現代って不便だな…。身体があったらもう少し便利なのだろうけどな…」
「ぷ…プレートが…」
「「喋った」!?」
プレートが喋った。
その事実に俺を含めたメンバー全員の驚きの声を上げた。
「わかります。不便ですよね~」
「君は体があるからいいだろ。僕は体がないんだぞ」
プレートが宙に浮いて焔さんと会話している。優しいが芯の通った印象がする男の声で。
…いやなんで喋ってるんだよ。
星座の力自体に意思は存在する。しかし、力を分け与える現代人を選ぶ以外には現代社会に直接干渉してこないって話じゃなかったのか。
そもそも何座だ?
俺がそこまで思考した時、全員が固まっていることにようやく気づいたプレートが話を戻した。
というかずっと焔さんと現代不便談義をしていたな?
「…もしかして、驚かせてしまった?」
「ほ…本当に喋ってる…どうなってるの…?」
「真聡、説明して」
由衣が混乱しながらも宙に浮かぶプレートを見つめている。そして日和が俺に説明を求めている。
いや、俺もさすがにこれは聞いてないんだが。
「俺だってさすがにこれは知らん。焔さん」
「いやぁ…俺も最初は驚いたよ…という訳で説明お願いします」
「丸投げか…まぁいいか。初めまして、星座に選ばれし者たち。僕の名前は……」
「道中でも言いましたけど、現代ではペルセウスって名前になってますよ」
「そうだったね。じゃあペルセウスって呼んでくれ」
「え…ペルセウスってあのギリシア神話の!?」
「あぁ…まぁそうだね」
智陽の目が珍しく輝いている。
そんな智陽に志郎が「有名なのか?」と質問した。
すると智陽は「嘘!?知らないの!?」と言いながらペルセウスの神話を話し始める。
智陽の知識が凄い。
だが星座の力の成り立ちから考えると、恐らくペルセウス本人ではないだろうけど。それなら焔さんと普通に話しているのも納得がいく。
だが、確かに喋っているプレートに描かれている星の並びはペルセウスだ。だからペルセウス座の力ではあるんだろう。
…いや、問題はそこじゃない。なんで喋っているかだ。
俺は質問をする許可を求めると、ペルセウス座は快く承諾してくれた。
「なんで喋れるんですか?星座の力は現代社会には干渉しないって聞いてたんですけど」
「どうやら僕は特殊らしくてね。何故かこうやって君たちと話せるんだ。なんでか…と聞かれると僕にもよくわからないんだ。質問に答えられなくて申し訳ない。
でも、こうして話せるからには君たちに力になるよ」
「それって…俺達に力を与えてくれるってことすか!?」
「でも真聡以外は選んでくれた星座以外の力は使えないでしょ」
智陽の説明が終わったのか志郎と鈴保が会話に参加してきた。
そのまま由衣や日和、智陽も加わって「何故、俺以外は星座の力が1つしか使えないのか」という説明が始まった。
理由は他の星座の力を引き出せるリードギアはまだ1つしかない。
そのため、ペルセウス座の力をプレートから引き出せるのは俺だけだ。
…俺にリードギアを人数分つくるように頼めと?
それは…無しではないが気が乗らない。
そう考えていると話を聞いたペルセウス座が口を開いた。
「そうか…そうなると……とりあえず、全員の今の力を見たい…かな」
☆☆☆
俺達はペルセウス座が喋った驚きで忘れていた自己紹介をした後、全員ジャージに着替えていつもの研究所跡地に移動してきた。
どうやらペルセウス座に自分にできることを探すためと、俺達の実力を見るために模擬戦をして欲しいようだ。
そして、いつものように手荷物を建物の陰に座っている智陽に預けた。
…というか何で全員ジャージ持ってきてるんだよ。用意良すぎだろ。
そんなことを思っていると鈴保が口火を切った。
「で、どういう組み合わせでやる?ちょうど偶数だし割り切れるでしょ」
「だね!じゃあグーチョキパーでやる?」
「よっしゃ!やるぞ」
「あ~~ちょっと待って。その必要は無いかも」
やる気満々の由衣と志郎が利き手を振りかぶっているところに、ペルセウス座からストップがかかった。
俺を含めて全員が声がした方向を見る。
すると焔さんの隣には、男が立っていた。
その男は頭には兜、足には羽が付いたサンダルを身に着け、そして鏡のように磨かれた盾と鎌のような剣を手に持っている。
服装も相まって、立っているのはまさに神話などで聞くペルセウスだった。
「やっと実態のある身体だ…これなら、僕自身が君たちと戦える」
「え……ど、どうなってんだ!?」
「いやなんか、急にプレートが光ったと思ったらいきなりあの姿に成った…」
志郎の驚きの声に智陽がそう返した。さっきまで座ってたはずだが今は立ち上がっている。
その言葉から考えるに、いきなり実態を得た。つまり、概念体に成ったということか?
「じゃあこれからは一緒に戦えるんですか!?」
「いや、残念ながらそれはできない。この姿は恐らくここでしか無理だ」
ペルセウス座のその返事に由衣は「そんなぁ…」残念そうな声を上げた。
恐らくこの研究所の地下を通っている地脈から魔力を吸い上げて概念体を生成しているんだろう。
そのため、ここから離れると魔力供給が途絶えて概念体を保てなくなるんだろう。
現状についてさらに考えていると、ペルセウス座が話を本題に戻した。
「じゃあ模擬戦を始めよう。誰から来る?」
「俺からお願いします!」
間を開けずに立候補したのは志郎だった。
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