第109話 喋った!?

 土曜日、昼過ぎ。

 星座騎士のメンバー6人が俺の家へとやってきた。

 理由はもちろん俺が智陽に澱み出現情報を口止めしていたことについてだ。

 原因の俺が言うのもだが凄まじく部屋の空気が悪い。


 まぁ、バレれたらこうなることは分かっていたが。

 だがここまで早くバレるとは…そこは本当に予想外だった。


 全員が座ったのに俺が何も話さないことに痺れを切らしたのか、由衣が口を開いた。


「なんでちーちゃんに黙ってるように頼んでたの」

「…堕ち星の出現情報もなく、澱みの出現回数も量も減っている。これ以上お前らを付き合わせる必要がないからだ」

「だからって私たちに隠さなくてもいいじゃん!」

「そうだぞ!水……臭う?ことするなって!」

「水臭い。何でそこで間違えるの。あ、でも私も志郎と同意見。なんで今更そんなことするの」

「というか、佑希も佑希。気づいてたならなんで私たちに教えてくれないの」

「こいつが何考えてるかわからなかったからな。少し探ってからにしようと思ってたんだ。」

「私も佑希に聞かれたときに「皆に言わなくていいの?」って聞いたんだけどさ」


 予想通り由衣に続いて志郎、鈴保からも責められた。

 そして日和の一言で佑希まで責められている。

 恐らく佑希は取引の内容を守って由衣達には黙っていたのだろう。

 理由は自分について詮索されたくないからだろうが。


 そして智陽の言い方的にあの高架下に3人が居合わせたのは偶然じゃなく智陽が仕組んだな…?

 律儀に頼みを聞いてくれてると思ったが実はそんなことない気がする。

 その件について聞きたいがここで聞いたら俺が不利になるだけだ。それに確証もない。


 そして責められる対象はまた俺に戻ってきて、由衣が真剣なトーンで言葉を投げてくる。

 そろそろ喋らないと本気で怒られそうだ。

 

「今になって変な気を使わないでよ。私達みんな、仲間なんだから」

「…堕ち星が現れなければ、お前らの手を煩わせる必要はない」

「だ~か~ら~!そんなこと気にしないでって言ってるじゃん!」

「というか「堕ち星が出なければ~」って言ってるけど、出たらどうするつもりなの」

「可能性は0じゃないでしょ。地下貯水路の戦闘が終わってからは堕ち星が出たって噂は拾ってないけど」

「私、また出たときのために1人でもちゃんと戦えるようになりたい。強くなりたい」

「俺だってもっと強くなりたいぞ!1回目の地下貯水路みたいに負けるのはもう嫌だからな。というか、あの流星群っていうの俺達は使えないのか?」

「それ私も考えてた!」


 鈴保に嫌なことを言われた。

 堕ち星がまた出る可能性。それは十分ある。

 だが、いつ現れるかわからない相手のためにこいつらの青春を犠牲にしたくない。

 智陽の言葉的に今はまだそんな情報はないようだが。


 そして日和の発言で会話の流れが変わった。

 今は志郎と由衣主体で流星群談義が行われている。

 ただ聞いてると……話がそれてきている気がする。

 まぁ俺的にはこのまま有耶無耶にしたいが。


 そのとき、突然フロアの扉が開いた。

 俺含めて全員が驚いて扉の方を見る。


「おぉ!全員お揃い…また増えたのか?」

「「焔さん」!」


 日和以外の声が重なった。

 赤髪の男が。星座騎士リーダー兼俺の保護者役である鳳凰 焔がそこに立っていた。

 また連絡なしで来たなこの人は…


 そして案の定、日和が由衣に焔さんについて聞いている。

 そっちは任せて俺は焔さんにいつもの文句を投げる。


「だから来るなら連絡してくださいって何度言ったらわかるんですか」

「悪い悪い。でもまぁ頼まれていた物はちゃんと運んできたから」


 そう言いながら焔さんはテーブルの上に大きな黒いケースを置いた。

 俺は開けて中身を確認する。


 中にはレプリギアが2つ入っていた。

 …もう使う必要がないといいんだがな。

 確認している間に焔さんはメンバーに何を話していたかを聞いている。


「なるほどなぁ…真聡が澱みが出たのを口止めして教えてくれなかったと」

「そうなんすよ!俺、もっと強くなりたいのにこのままだと体がなまってしまいそうっす」

「そうか、ならちょうど良かった。助っ人を連れてきたんだ。へび座とからす座の堕ち星を倒したって聞いたときには遅かったかと心配してたんだが…」


 そう言いながら焔さんは自分が背負っていた鞄に手を突っ込んでいる。

 いや助っ人って人じゃないのかよ……なら助っ人ってなんだ?


 全員の視線が焔さんに注がれている。

 十数秒後、「あったあった」と言いながら鞄の中から出てきたのは黒いケース。

 

 そして「お待たせしました。ようやく出番ですよ」と言いながら黒いケースを開ける。

 するとそのケースからプレートが勝手に出てきて宙に浮かんだ。


「現代って不便だな…。身体があったらもう少し便利なのだろうけど…」

「ぷ…プレートが…」

「「喋った」!?」


 プレートが喋った。

 その事実に俺を含めたメンバー全員が驚きの声を上げた。

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