9節 助っ人…登場?

第108話 バレた

 中間テストも終わり、10月下旬のとある日。

 約1週間ぶりの澱み目撃情報を受けて俺は現場にやってきた。


 場所は街中のとある高架下。数は10体程。

 俺はギアにプレートを挿し込み、いつもの手順で左腕を目の前に持ってくる。


「星鎧生装」


 そう唱えると同時にギア上部のボタンを左手で押す。

 すると俺の身体は光に包まれ、光の中で星力から紺のアンダースーツと紺と黒の鎧が生成されて俺の身体をを包みこむ。


 そして、光は晴れる。


 俺はもう一度目の前にいる澱みの量を確認する。

 この少なさなら杖を生成して魔術を撃つより、近接と簡易詠唱を主軸とした方が楽に終わる。

 そう思いながら、俺は手始めに1番近い澱みに拳を叩き込む。


☆☆☆

 

 地下貯水路での戦い以来、澱みの出現回数や量はやはり減ったままだ。

 事件の後始末のような感覚を覚えている。


 結局、何故澱みが黒い靄ではなく人の形をとって人を襲うかはわからない。

 だがこのまま時間が経てば、人型の澱みは現れなくなるのではないか。

 そんな感覚が俺の中にはあった。


 そのため、俺は文化祭が終わったテスト期間中のとある日。智陽に「澱みが出ても俺以外に連絡するな」と伝えた。

 もちろん智陽には意味が分からないという顔をされ「別にそんなことする必要ないでしょ」と言われた。

 そのため説得するのに苦労した。


 俺は自分自身を除いた由衣達5人の星座騎士から星座の力を切り離そうと考えは変わっていない。

 このまま堕ち星が現れなければ、この街で活動する必要がなくなる。

 そうなれば協会から移動や帰還の命令が出る可能性がある。


 その指示に由衣達を付き合せたくない。


 もっと言うと、一般人である由衣達をこれ以上戦いに巻き込みたくなかった。


 戦いの場がこの街でなくなれば、あいつらには関係のない話になる。


 切り離す方法としては「かに座の力を使えば、星座の力を選ばれた人から切り離すことができるのではないか」と考えている。

 理由は安直ではあるが、蟹と言えば鋏だからだ。

 そのため、俺はかに座の力を使えないか試している。



 しかし、残念ながら全然上手くいっていない。


 ギアに挿し込むとボタンを押した直後にプレートがギアから飛び出し、俺も吹き飛ばされる。

 リードギアに挿し込んでも力は使えず、代わりに全身の魔力回路が痛む始末だ。

 結局、由衣達を普通の高校生に戻す方法は分からないままだった。


☆☆☆


 残り3体。あと一息だ。

 そう思った瞬間、真ん中の澱みにカードが突き刺さった。

 俺は咄嗟に後ろに下がって距離をとる。


 すると予想通りカードが爆発した。

 爆破による煙が晴れると澱みは消滅していた。

 とりあえず、戦闘は終了した。


 俺は星鎧を消滅させる前に、カードが飛んできた方向を見る。


 その方向には予想通り、紺色と黄色の鎧の星座騎士。幼馴染の1人である児島 佑希が立っていた。

 その姿を見た瞬間、凄く嫌な予感がした。


「真聡…お前やっぱり黙ってたな?」


 的中した。

 というかわりと早くバレたな…。

 この場所は市街地寄りではあるが、俺達の通学路的には遠回りになるはずなんだが……いや、今の佑希の家は知らなかったな。

 それよりも先にこの状況を何とかしないといけない。

 俺はとりあえず言葉を返す。


「…だったらどうした」

「お前…何を考えてる?」

「どういう意味だ」

「…最近、俺を含めて全員から距離を取ってるよな。放課後もすぐいなくなることがまた増えたって由衣が文句言ってたぞ」


 やはり嫌なところを突かれた。

 確かに俺は文化祭以降、意図的に由衣達と距離を取っている。

 だがその理由はこいつらには…いや、そういえば佑希は焔さんから協会の事情を聞いてたよな。


 …少し話してみるか。


「…お前だって、協会の事情を聞いているならわかるだろ。このまま堕ち星が出なければ、俺達はこの街を離れることになるかもしれないことを」

「そうらしいな。……まさか、真聡は「別れるのが辛くなる」とかそういう理由で距離を開けているのか?」

「…俺は、ただの高校生であるお前らをこれ以上巻き込みたくない。だからそうなる前に由衣達から星座の力を切り離したいと考えている。もちろん佑希、お前からも」


 そう言った瞬間、佑希から殺意を感じた。

 同時に佑希は剣を生成し、戦闘態勢に入る。

 そして口から放たれる言葉は圧を感じる。


「俺の戦いはまだ終わっていない。それまではこの力は絶対手放さない。…もし邪魔をするなら、例え真聡が相手でも容赦はしない」


 俺の言葉次第ではすぐに襲い掛かってくる勢いだ。

 本気で戦えば勝てるだろう。

 だが、できるなら戦いたくはない。


 本当に切り離せるかわからない今は特に。


 なので俺はとりあえず誤魔化すことにした。


「…聞いただけだ。それに本当にできるかはわからない。お前の事情も…覚えておく」

「そうか。助かる」


 佑希はそう言って剣を消滅させた。


 ……そういや、まだ星鎧を身に纏ったままだったな。

 とりあえず解くか。星力の無駄だ。

 そう思いながら、俺はギアからプレートを抜き取る。


 その瞬間、聞きなれた声が耳に入った。


「まー君!?ゆー君!?ここで何して……もしかして、澱みと戦ってたの!?なんで教えてくれなかったの!?」


 星鎧を消滅させた俺と佑希がその声がした方向を向くとそこには



 由衣、日和、智陽の3人が立っていた。



 1番バレたくない相手にバレた。

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