第098話 あの笑顔を
2体の堕ち星と2種類のへびの概念体が戦闘態勢に入った。
私達6人も構える。
私は羊の長と名前をつけた角のある羊を生成した影響で既に少しだけ疲れを感じていた。
というか無茶だと思うんだよね。
ひーちゃん助けたくて夢中で作った羊をもう1回やれって……ねぇ?
だからちゃんと出来て安心した。
出来なかったらいつものサイズの羊を作りまくることになってたかもと思うと……少しゾッとする。
でも、まー君がちゃんと私を頼ってくれてると考えると嬉し……いや、やっぱり困るよ。
昨日1日練習できたけどさ。
というかひーちゃんも星鎧も武器も生成できるようになるの速いし。
というか私以外みんな早いよ。
私だけ時間がかかったの恥ずかしいというか、自信がなくなる。
いや、今はそんなこと言ってる場合じゃない。
私は気合を入れなおして集中する。
「みんな、やるぞ」
まー君のその言葉に私達はそれぞれの言葉で返事をして、事前に決めた相手に向かっていく、
まー君はへび座の堕ち星、しろ君とすずちゃんは蛇の概念体。
そして、私はひーちゃんとゆー君と一緒にからす座の堕ち星。
ひーちゃんが向かいからからす座に水弾を撃ってる。
そこにゆー君がからす座の後ろから斬りかかる。
しかし両方とも避けられた。
ゆー君はそのまま何度も剣を振るう。
今度はそれに合わせてひーちゃんが水弾を撃って、私も羊を1匹送り込む。
でもからす座はゆー君の攻撃を避けながら羽根を飛ばして私達2人の攻撃を打ち消した。
そしてからす座は空へと逃げた。
「俺1人に対して3人がかりって……正義のヒーローなのに卑怯じゃない?」
「お前達だって2日前、真聡に3体がかりだっただろ」
「それはそうだな!」
そう言ってからす座は私達3人に突撃を仕掛けてくる。
私達がそれを避けるとからす座はそのまま上昇して、また届かないところまで行ってしまった。
「だけどお前達は俺達に正義を振りかざしてるだろ?世のため人のため〜って」
「別に俺はそういうので戦ってるわけじゃない。ただ俺は、俺の目的で動いているだけだ」
ゆー君はそう言い切ってからす座に向けてカードを5枚投げた。
からす座は飛んでくるカードを羽ばたいた風で撃ち落とそうとする。
しかし、カードは落ちる前に爆発した。
そして、爆風はからす座を巻き込む。
落ちてくるからす座。
さらにゆー君は距離を詰めて、追い打ちの蹴りを叩き込む。
からす座は後ろへ勢いよく吹き飛んで柱にぶつかって、地面に落ちた。
私達はゆー君を先頭にからす座に近づく。
すると、立ち上がったからす座が言葉を投げてきた。
「いった……というか殺意つよ。
僕たちはただ苦しんでる人を救おうとしてるのにさ。
それなのに双子君、君は自分の目的で俺たちを攻撃してる。君の方が悪だよね?そしてそいつに手を貸してる牡羊ちゃんと
私はその言葉を受けて言葉を失った。
もし、本当にこの2体の堕ち星になった人達が苦しんでる人を救うなら。
それで救われる人がいるなら。
こうやって、私達が堕ち星の邪魔をすることが間違ってる?
その疑問にたどり着いたとき、ゆー君の声で我に返る。
「化け物に成って人を襲うのがまともな救いなわけねぇだろ。被害者の気持ちもわからねぇ癖に純粋な奴騙すために適当言ってんじゃねぇよ。
それにお前は、適当な理由で好きなように暴れたいだけだろ」
ゆー君の言葉には怒りが込められていた。仲間の私でも怖いと思うぐらいには。
ゆー君、再会してからは時々すごく怖い時がある。前はそんなことなかったのに。
私がそんなことを考えていると、ゆー君は既にからす座に斬りかかっていた。
「バレてたか……そして怒りに支配されてる君に俺の言葉は響かないか。残念」
「口を閉じろよ、化け物が」
でも、ゆー君の剣はからす座によって弾き飛ばされてしまった。
そこから武器なしの殴り合いが始まる。
私も援護しなきゃ。
そう思ったとき、ひーちゃんが私の手を掴んだ。
「由衣はやっぱり優しいね。…でも、迷わなくていい。
私はあのとき、由衣がへび座から守ってくれて本当に助かった。
確かに抱えてる苦しみから解放されたいと思ってる人は沢山いると思う。
でも人じゃない姿に成って、誰かを傷つけてまで解放されたいと思う人は多くないと思う」
そうだ。
そうだよ。
私は自分の身勝手で関係ない誰かの笑顔を奪うのが許せない。
そして、私はあの名前を知らない女の子の泣いていた顔を。
「ありがとう」と言ってくれたあの笑顔を、忘れない。
だから堕ち星と成った人が暴れて、誰かを傷つけるなら私はそれを止める。
そう思ってたのに、なんで迷ったんだろ。
「…ありがと」
「うん。…いける?」
「もちろん!」
私はそのままからす座との距離を詰める。
そしてそのままパンチを繰り出す。
そのパンチが決まってからす座を後ろに下がった。
「全員戻ってきちゃったか」
「確かに少し迷ったよ。でも、私は決めたの。誰かの笑顔を守りたいって!」
自分の思いを叫びながら距離を詰めて、また右のパンチを繰り出す。
止められたので次は左、また止めれたので今度は脇腹辺りを狙って蹴りを入れる。
蹴りが決まって、からす座はまた後ろに下がる。
「山羊の金魚の糞が大口を叩くようになったね。……そんなにあいつがいいのか」
「確かに私はまー君に色々影響されたよ。でも、この思いも、あの時貰った笑顔も!私だけのもの!」
「…既に手遅れ……か」
確かに私は最初、まー君の力になりたくて戦いと思った。
それは今も変わらない。
まー君の力になりたくて、1人で背負わせたくないって気持ちは変わらない。
でも私は、それとは別に私だけの理由をちゃんと見つけてる。
今改めてそれを思い出した。
だからもう、迷わない!
一方、からす座はまた上に飛んだ。
そこに、水弾が飛んできてからす座の動きを制限する。
そして「目を閉じろ!」というゆー君の声と共にカードがからす座へと飛んでいく。
目を閉じた直後、一瞬眩しくなるのを感じた。
そして「スタングレネードかよ」というからす座の声が聞こえた。
私は目を開けて、目元を抑えてふらふらと立ち上がるからす座に向かって走る。
からす座はパンチを受ける体勢を既にとってる。
パンチなら受けられていしまう。だったら!
私は杖を生成して思いっきり振る。
その一撃は受ける体勢を取っていたからす座を吹き飛ばした。
からす座は地面をバウンドしながら転がっていく。
私はいきなり攻撃方法を変えたのでどこかひねりかけてしまったみたい。
少し痛い。
痛がってると後ろからひーちゃんとゆー君が来た。
「やったじゃん」
「うん!」
「…その使い方は杖じゃなくてバットだろ」
「そ、そんなことないもん!」
そのとき、凄い音が響く。
音の方を見ると、からす座が吹き飛んだ先に2体の蛇の概念体とへび座の堕ち星も合流していた。
そして私達の方にも。
「やっぱり1人で概念体と戦うのキツイわ」
「堕ち星の方が強いんだから文句言わない」
「雑談するな。まだ終わってない」
しろ君、すずちゃん、まー君が合流してきた。
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