第083話 チーム分け
「じゃあ……行こっか」
「何でお前が仕切る。……全員ギアは既に付けているな」
真聡の問いに私達はそれぞれ返事をする。
全員付けていることを確認した真聡は地下貯水路の中へ入っていく。
私は1番最後に入る。
…少し気が進まないのは内緒。
ちなみに智陽は地上に残った。
行っても戦えないし「念の為や連絡役として」と真聡が言ってた。
真聡が地下貯水路の入口の封印解除したあとに少し休憩した。そのとき真聡に防水の術を教えてもらった。
星力って本当に色々な使い方ができるみたい。
防水の術を使えば傘をささなくても濡れない。
…何か他の使い方もできそう。
あと警察から全員ライトが付いたヘルメットを貸してもらった。
真聡は他にも鞄を受け取ってた。中にはスポーツドリンクが入ってるらしい。
私達もスポーツドリンクを貰った。
警察と繋がりがあるって話は聞いていた。
だけどまさかこんなにしっかり警察と協力する日が来るなんて想像もしてなかった。
……今でも少し実感がわかない。
そんな事を考えながら、地下貯水路の奥へ進んでいく。ときどき真聡が立ち止まって風を起こし、澱みを奥へ押し返しながら。
すると道が2つに分かれた。
私達は足を止める。1番最初に口を開いたのは由衣。
「分かれ道…だね」
「あぁ」
「どうする。俺は何も感じない…感じれないが」
「俺もだ。もう感知の術は切っているからな。…まぁ、使っていてもこの澱みの濃さじゃ何も分からんだろうが」
真聡と佑希が何か難しい話をしてる。
…感知の術って何だろう。さっき地上でも話してたけど……話の感じからすると遠くにいる澱みや堕ち星がわかるとかなのかな。
薄々思ってるんだけど、真聡はまだ何かを隠してるよね。あと佑希も。
でも流石に今は聞くことはできない。
考えているとまた由衣が口を開いた。
「…どっちに行くの?」
「…考え中だ。決め手がない」
「…別に普通に二手に分かれたら良いんじゃねぇの?」
志郎がそう言うと真聡は振り返える。そしてしばらく志郎を見つめてから口を開く。
「あまりこの状況で戦力分散はしたくないが……」
「でも道が2つに分かれてる以上そうするしかないでしょ」
「…………そうだな。チーム分けを考えるか」
私の一言で真聡は決意したのかチーム分け会議が始まった。
「…まず、俺と佑希は分けたい」
「そうだな。俺も同意見だ」
「次に……由衣と志郎も分けるか」
「理由聞いてもいいか?」
「お前達は最初の2人の次に戦ってきた期間が長い、それにそこまで選ばれたときの差がない。つまり実力が近いからな」
「で、その分けたのをどう組ませるわけ?」
「……俺が由衣を連れて行く。目が離せない」
「理由が酷いな……」
と言うわけで真聡と由衣、佑希と志郎というチーム分けになった。
まぁ私が1番遅いし、まだ選ばれて戦い始めてから1ヶ月ほどだから戦力として頼りないか。
そう思っていても必要だと思うので私は自分がどうすればいいか尋ねる。
するとまた少し考えてから真聡が口を開いた。
「佑希の方に入ってくれ」
「……理由を聞いても良い?私は真聡の方になると思ってたから」
真聡からの返事はない。
私は真聡も由衣も色々飛ばして戦うタイプだから2人だけで堕ち星と戦闘するなら辛いと思う。
まぁ私達全員、志郎のお父さんに鍛えてもらってるから完全に戦えないとわけじゃないと思うけど。
でもやっぱり私は真聡の方に入った方がいいと思う。
私がいて前で戦えば2人が言葉を唱える時間が稼げるはず。
色々考えていると真聡が答えを出した。
「いや、佑希の方に入ってくれ。俺の方は何かあっても俺が何とかできる。佑希達の方が心配だ。人数が奇数だからそっちに1人多くしたい」
「……わかった」
納得はできない私は渋々返事をした。
真聡がそう言うなら従うしかないし。
チーム分けも決まったし、あとはどっちのチームがどっちの道に行こうか。そんな話をしてると元気な声が左側の道から響いてきた。
「まー君!!!!みんな!!!これ見て!!!」
「何がいるかわからないのに叫ぶな。というかお前、どこ行ってたんだ」
「あ…えっと…何かないかなって思って両方の道をちょっと見てたら何か落ちてるのを見つけてさ。拾いに行ってみたらこれが!」
そう言って由衣が差し出したのは生徒手帳だった。中には『水崎 日和』と書いてある。
……チーム分けの会話が珍しく静かだと思ってたら由衣が参加してなかったんだ。
でもこの状況で単独行動は危ないと思うんだけど。
しかし、真聡、由衣、佑希の3人はそれどころじゃなさそうだった。
「日和…」
「つまりひーちゃんはこの中に入って、こっちに行ったってことだよね」
「何かから逃げてて落とした……ってことか」
「……そうだと良いんだがな。由衣、お前は俺と一緒だ。左に行くぞ。お前らは念の為に反対側を頼む」
「手がかり見つかったんだしみんな一緒に行こうよ!」
「いや、罠かもしれない。それに日和が意図的に自分が行く方向と反対側に投げた可能性もある。だから念の為に佑希達には反対側に行って欲しい」
「おう」「わかった」
私と志郎が返事をして右側の道に進もうとしたとき、佑希が口を開いた。
「……俺も左側に行かせてくれ」
「……理由を聞かせろ」
「俺だって日和が心配だ。左にいる可能性があるなら、俺も左に行きたい」
「…………駄目だ」
「何で!?いいじゃん、3人で行こうよ!」
「駄目だ。戦力的に志郎と鈴保を2人にしたくない」
「俺は良いぜ」
志郎がそう言った。私も同意見だから肯定する。
しかし、真聡は反対らしい。
「…堕ち星に出くわしたときにどうする」
「そのときは戦うしかねぇだろ」
「へび座やからす座、それより強い堕ち星がいたらどうするんだ」
「最悪逃げるわよ。私達は普段から運動してるんだから星鎧を纏っていたら簡単には追いつかれないでしょ」
「そうそう。だからお前ら3人で友達探しに行けよ。……大事な幼馴染なんだろ」
真聡から返事はすぐに返ってこない、
しばらくしてから「……すまない。行くぞ2人共」。そう言い残して左側に進んでいった。
佑希が入ればチームバランスも良くなると思うから私的には反対する理由がなくなった。
…ただ志郎と2人っきりなのが少し嫌だけど。でも今そんな事言ってる場合ではないし。
そんな事を思いながら私は真聡達の背中が暗闇に消えるまで見送った。
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