第074話 新装備
もうすぐ9月中旬になるが、昼頃はまだ夏のように暑い。
そんな日差しと暑さの中、研究所廃墟の駐車場には金属が弾き合う音が響く。
この音は志郎と鈴保と佑希が特訓として星鎧を纏って模擬戦をしている音だ。
一方俺は星鎧を纏い、由衣と向かい合っている。
俺達は昨晩届いた新しい装備の使用実験をしている。それを少し離れた日陰から智陽が見守っている。
何故こうなったか。それは2時間ほど遡る。
☆☆☆
まず、昨日。
警察病院からの帰りに協会の人間から「新装備を届けに来た」と連絡があった。
新装備の名前は「Constellation power read gear」縮めて「リードギア」。
以前、智陽とAI スターに作ってもらった設計図を元に協会本部の工房でレヴィさんが作ってくれた。
それを本部から職員がわざわざこの街まで手渡しで届けに来た。
俺は受け取ってすぐに使用実験をしようかと思った。
しかし、受け取った時間が夜だった。疲れていたのもあり、その日は寝ることにした。
そして今日の朝、志郎と鈴保から「特訓してくれ」とグループにメッセージが入っていた。
こぎつね座との戦いや射守 聖也の件などで自分の実力不足を感じたらしい。
しかし、今日はリードギアの使用実験をしようと思っていた。
…それに、あまり強くなられると元の戦いのない生活に戻り辛くなるかもしれない。
だが強くなってもらわないと堕ち星とは戦えない。
返事に困っていると由衣が「まー君が無理なら私達3人で頑張る?私も実力不足を感じてるから…」と送られてきた。
すると佑希が「自分でいいなら」と参加してきた。
話によると佑希は俺の次に選ばれてからの期間が長く、実力は4人の中では1番だ。
それに直接焔さんに稽古をつけてもらっていたらしい。
…話が本当ならば、だが。
どちらにせよ実力は1番だ。佑希が相手をしてくれるなら助かる。
そう思い、俺は佑希に志郎と鈴保を任せた。
由衣は使用実験に念の為相手をして貰うために連れ戻した。
あまりこういうのに付き合わせたくないが…やはり相手はいてくれることに越したことはない。
それに由衣が1番長く一緒に戦ってきた。頼むなら由衣が1番良い。
そう思い頼むことにした。
という話をしていると智陽も来ることになった。
☆☆☆
「はえ座の能力は飛べる…ってこと?」
「…少し使い辛いがな」
「それ先にわし座を試したからでしょ。あと蝿は複眼だから使いにくいんじゃない?」
座ってる智陽が指摘をする。
俺はその指摘について考える。
わし座は星力が背中に集まり、鳥類の羽と成って飛べた。
蝿も同じように星力が羽と成った。だが目に関しては…
「…複眼には成っていなかった」
「そうなんだ。じゃあリードギアだと力は少しだけしか引き出せないのかな」
「かもな。次の星座行くぞ」
俺と由衣は日陰にいる智陽の元に集まる。
プレートを保管してるケースを智陽が開ける。
ケース中には9種類のプレートが入っている。
由衣が「次どうするの?」と聞いてくる。
…どれにするか。
わし座、はえ座と手に入れた順番に試してきた。
だとすると次は小獅子座か…
「ねぇ。私、気になってるのがあるんだけど」
「なになに〜?」
「この3つ」
そう言って智陽が指をさしているのは望遠鏡座、八分儀座、六分儀座のプレートだった。
これは6月頃に行った科学館で手に入れたプレートだ。
確かに使い方がいまいち想像できないから気になる。
「じゃあこれにするか」
俺はまず六分儀座のプレートを持ってさっきの位置に戻る。
そして右側面脇腹あたりに付けてあるリードギアにプレートを差し込み、ボタンを押す。
するとリードギア表面に六分儀座が浮かぶ。
能力は………
「…何も変化がない」
「え、そんな事あるの?」
「リードギアの不調?」
「いや、それは違う。星座は浮かんだ。」
「じゃあ…何で?」
俺達3人は首を傾げる。
…とりあえず、八分儀座を試すか。
☆☆☆
「これで…終わった…?」
「いや、まだ佑希が回収していた鳩座ととびうお座が残っている」
「……無理!1回休憩お願いしまぁ〜す!」
そう言いながらも由衣は既に星鎧を消滅させて日陰に向かっている。
まぁ…倒れられたら困るからな。
それにリードギアだってまだ安全性が完全に保証されてるわけではない。
…俺も休憩するか。
俺も星鎧を解き、2人に合流する。
すると智陽が保冷バッグからスポーツドリンクを渡してくれた。
「で、どう?使えそう?」
「星座によるな。わし座と小獅子座は使いやすい。だからすぐに使えるだろうが…」
結局、六分儀座と八分儀座の能力はわからなかった。望遠鏡座は遠くのものが見えるようになったが…戦闘中に使えるかは微妙だ。
小獅子座は身体能力が上がった。近い能力と考えられる獅子座と比べると力では劣るが、速度の面では使いやすいのではないだろうか。
実際使った状態で由衣と模擬戦をしてみたが「目で追えない〜!?」と悲鳴を上げていた。
子馬座は…持久力が上がったのだろうか。こちらも戦闘に使えるかは今のところ微妙だ。
「残り3つ、こぎつね座と…鳩座ととびうお座だっけ。どんな力なんだろうね?」
「いまいち想像できない」
「ね〜」
由衣と智陽がそんな会話をしている。
…由衣が復活したら残り2つを試すか。
そう考えていると鈴保が合流してきた。
「真聡…ヘルプ…」
「なんだ」
「すずちゃん…?どうしたの?」
「志郎と佑希の3人でやってたんじゃないの?」
「そうなんだけどさ。こう…私はどうもあの2人とは方向性が違うみたいでさ…ほら」
そう言われて俺と由衣と智陽は志郎と佑希を見る。
すると志郎は佑希に何やら教えられている。
魔力…いや星力を練って何かを飛ばそうとしているんだろうか。
…何となく言いたいことはわかった気がする。
「…どゆこと?」
「なんか私にはできないんだよね…だから真聡に相談しに来た」
「なるほど…」
恐らく特殊能力が星力を練って飛ばすのと相性が悪いんだろうが…
蠍座だと…毒か?
もしそうならば星力を毒に変えるから…俺の魔術に近いのか?
確かに毒魔術もあるしな。俺は使えないが。
まぁ悩んでても仕方ない。
「わかった。上手くいくかはわからんが教える。由衣はもう少し休んでろ」
「私も手伝うよ?」
「いらん」
そう言い残して俺は立ち上がる。
由衣が不満そうに文句を言ってるが由衣が混じると面倒になるのが目に見えた。
ただでさえ魔術や神秘の力は教えるのが大変なんだ。勘弁してくれ。
そんな事を考えながら俺は鈴保に最低限の情報で星力を毒に変換する方法を教え始める。
こうして結局、新装備の使用実験初日は違う方向にそれていった。
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