第068話 締まりのない

 「では作戦会議を始めます!」

「何でお前が仕切る。」

「だってこういうのってやってみたくない!?」

「わかる」「だよな!」


 俺は思わずため息をつく。

 前にもこんなやり取りをしたよな…

 そう思っていると、佑希が少し笑いながら「大変そうだな」と俺の肩に手を置いた。

 笑ってんじゃねぇぞ。


 あれから数日後、ようやく全員の予定が合う日ができた。

 俺は佑希を含めた5人を家に集めて、作戦会議をすることにした。


 まず最初に俺は超常事件捜査班から聞いた話をする。


「堕ち星の正体は森住もりずみ あきら、中学3年生だ。」

「嘘、年下!?」

「マジか…」

「…堕ち星って勝手になるものなの?」

「…いや、恐らくそれは違う。俺の推測だがへび座の堕ち星が何かしら関わっていると思う。」


 由衣と志郎が何か言っているが気にせず話を進める。


「行動理由は恐らく恨みによるものだろう。どうやら窃盗は最初の被害者を含めた複数の生徒と共謀してやってたらしい。」

「じゃあやっぱり堕ち星の力を使って物を盗んでたってこと?」

「多分な。だが防犯カメラや目撃情報がないのが気になる。」

「だけど戦っているときは分身しか使ってこない…そこ気になるよな」

「あぁ。そこは引っかかる。だが戦闘中に使ってこない以上、そちらよりも分身の対処を考えたほうがいい。」


 使って来るかもしれない手よりも現在使われている手を考えた方が良い。

 俺はそう思い話の方向性を変えた。

 すると由衣達が情報の整理を始める。


「分身…まー君の水の攻撃では消えたよね?」

「でも私や志郎の攻撃では消えなかった」

「あとは俺の攻撃でも消えたな」

「ゆー君、何か爆発させてたよね?」

「あと閃光弾のようなものも使ってたな。」

「あぁ、あれはな」


 そう言いながら佑希は左腕を前につき出す。

 そして少し左手を傾けて真上に戻したとき、カードが手の中にあった。


「…手品?」

「星力をカードにしてるんだろ。」

「真聡の言う通り。これを投げて爆発させたり、光らせたりしてる」

「すげぇな…」

「何でカードなの?」

「それは…俺が手品を習ってたからだな」


 佑希がそう言うと由衣が「ほら~!」と言ってくる。

 しかし、俺はそれを無視して話を続ける。


「つまりは俺と佑希ならやつの分身を消すことができる。ということだな。」

「何でその…2人の攻撃だと分身は消えるの?」


 由衣の質問に対する正確な答えがわからず俺は言葉に詰まる。

 すると困っている俺の代わりに智陽が口を開いた。


「驚かせたら消える…ってことじゃない?」

「じゃあ水は?」

「狐は水が得意ではないらしいよ」

「…何でその2つで消えるの?というか何で分身できるの?」

「狐が人を化かすって話あるでしょ」

「…そうなの?」

「そこで詰まるな。…続けてくれ。」

「狐が人を化かしているときって、驚かせたら逃げれるらしい。だから苦手なもの、刺激が強いもので攻撃されたら驚いて分身が消えるんじゃない?」

「ちーちゃん凄い…」

「今調べただけ」


 どうやら智陽はずっとスマホで狐について調べていたらしい。

 通りで会話に入ってこないわけだ。

 そんな智陽に由衣が感動している。

 …そんなに感動するほどのことか?

 そんな感想を抱いていると、鈴保が口を開いた。


「つまり、真聡と佑希は自由に動けたほうが良いよね」

「そうだな。あと前衛と後衛で分けるなら由衣も後衛のほうが助かる。」

「私は前でも良いよ?」

「お前の武器と能力だと後ろの方が楽だろ。」

「……そだね」

「つまり、俺と鈴保のパワー組は前ということだな!」

「前なのはいいけど、その変な名前やめてくれない?」

「何でだよ〜。コンビ名あったほうが気持ちの入り方が違うだろ?」

「いやどうでもいいし。それに私は一応頭脳派だから。私は力で何でも解決しない。」

「いやそうは言ってないだろ!?」


 志郎のツッコみで俺と志郎以外の4人は笑いだす。

 こんな締まりのない作戦会議で大丈夫なのだろうか。

 俺はそんな不安を覚えた。

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