第062話 怪事件
住宅街を急いで歩く。
呼び出されていたのに変に時間を食ってしまった。
別に由衣の誘いを断っても良かったが、佑希に変な誤解を与えたくなかった。
あと断ると後々由衣に文句を言われそうだ。
そもそも突然現れた幼馴染の児島 佑希。
俺はあいつの話に違和感を持った。
いや、大事な懐かしい友人ではある。それに喋ってみた感じは記憶の中の佑希と変わらない。
しかし、やはり違和感が拭えなかった。
この違和感を拭えない以上、星座騎士の話はしたくないのが本音だ。
そんな事を考えていると、俺は目的地に着いた。
星雲市警察署。
俺は今日、超常事件捜査班の丸岡刑事に呼び出されていた。
建物に入り、受付で名前と要件を言ってしばらく待つ。
すると数分後、丸岡刑事が降りてきた。
そして俺は丸岡刑事に連れられて移動する。
階段を上り、案内された部屋はいつぞやの部屋だった。
中には末松刑事が資料の用意をしていた。
俺が言われた椅子に座ると、2人の刑事もそれぞれ椅子に座った。
「さて…じゃあ始めるか。今回呼んだのは他でもない、警察で捜査している事件で堕ち星が関わっている可能性が浮上した。内容的には怪事件だ。」
恐らくそうだろうと思って来たので驚きはしなかった。
しかし、俺の方から協力を頼むことは何度もあったが超常事件捜査班の方からの頼みは珍しい。
堕ち星に至っては初めてだ。
「どのくらい関わってそうなんですか。」
「ほぼ確定だ。初めは窃盗事件として捜査していたんだが、先日傷害事件が発生してな。被害者の傷と、窃盗事件の現場にあった傷が一致した訳だ」
丸岡刑事は机の上に写真を並べた。
それは明らかに人のものとは思えない爪痕が映っていた。
まず最初に動物の爪痕かと考えた。
この街の付近に熊などの動物は…生息しているかわからないが、事件現場はどうやら街中らしい。
すなわち動物が原因ならば街中での目撃情報があるはずだ。
しかし、そういった情報は寄せられてないようだ。
つまり、人を襲う何かがこの街にいるということだ。
俺が呼び出された以上、常識では考えられない事件なのだろう。
堕ち星か、神秘を宿す生物かはまだわからない。
どちらにせよ魔術師でありホルダーである俺の仕事だ。
本当は秘匿守衛隊の仕事だが。
とにかく俺は詳しい話を聞くことにした。
☆☆☆
「では失礼します。」
「おう。話した件、頼むぞ。基本は末松になるが、何かあれば俺にも連絡してくれ」
「ありがとうございます。」
俺は下まで見送りに来てくれた丸岡刑事に礼を言って、星雲市警察署を後にする。
俺は歩きながら先程聞いた話を整理する。
まず、この怪事件は7月末頃から起きていた。
初めは窃盗事件。被害店舗のカメラには犯人は映っていなかった。
しかし、例の爪痕が確認されたため警察は捜査をしていた。
その後も窃盗事件は起きていた。
そしてつい先日、ついに被害者が出た。
被害者はこの町にある中学に通う3年生の男子生徒。
被害生徒は「化け物にやられた」と証言しているらしい。
その証言が確かならやはり犯人は堕ち星だろうか。
いや、神秘生物の可能性もある。
…この街にいるかわからないが。
今後の行動方針としては、明日末松刑事と共に窃盗被害にあった店舗の爪痕を確認に行くことになった。
堕ち星が犯人なら爪痕から澱みの残滓が確認できるかもしれない。
犯人が堕ち星なら相手は誰だ?
爪がある生き物の星座…
小獅子、獅子は既に回収してある。ならば…小熊座、大熊座か?
もしそうならばかなり厄介だ。トレミー48星座が相手ならば強敵の可能性が高い。
あとは…山猫か?
…情報が少ない今は考えても仕方はない。
今日のところはとりあえず…智陽に相談してみるか。あいつなら何か噂を掴んでるかもしれない。
一通り整理を終えた頃には、もう既に自分の家として使っているビルの近くだった。
俺は少し歩く速度を上げた。
☆☆☆
ビルにたどり着き階段を上がる。
何やら人の話し声が聞こえる。他の階に来客が来ているのか?
しかし階を上がるごとに声は大きく、そして聞き覚えがある声であることに気づく。
そして5階のドア前には驚きの光景が繰り広げられていた。
「…何してるんだお前ら」
「あ、まー君…おかえり!」
「お〜遅かったな」
ドア前には由衣、志郎、智陽がいた。
いや、何してるんだこいつら。
と言うか俺が声をかけるまでドアを少し開けて中を覗いていたよな?
「…ドア、開いてるのか。」
「何か開いてるし…誰かいる…」
「は?」
誰かいるって…ここの鍵は俺と焔さんしか持っていない。由衣は焔さんと面識がある。焔さんなら焔さんと言うだろう。
…じゃあ誰がいるんだ?
俺は自分の家なので遠慮なく扉を開ける。
中には金髪の男がソファーに座り、テーブルにノートパソコンを開いている。
その男はドアを開けた音で気づいてこちらを向いた。
「お〜真聡!お邪魔してるぞ」
「いや…何でここにいるんですか」
そこにはこの街にいるはずのないレヴィ カールソンがいた。
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