第20話 超常事件捜査班
「小野は無事に病院に着いたらしい。」
「良かったです。手続きなどして頂きありがとうございました。」
「こういうのが俺達の仕事だ、気にするな。それにしても悪いな。疲れてるだろうに。」
「いえ、別に。」
日が落ち、外が薄暗くなっていく19時過ぎ。俺は星雲警察署内にいた。
その理由は丸岡刑事と今後について話すためだ。流石に病院の駐車場という誰が聞いてるかわからない場所でそんな話はできないため、俺達は警察署に行くことにした。疲れているから少し落ち着きたかったというのもあるが。
俺は丸岡刑事との向かいに座り、資料などの準備を待っている。
一方、由衣はというと別の部屋で他の署員の方と話していて、時折楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
一体何の話をしてるんだ?とぼんやり考えていると末松刑事が資料などを持って帰ってきた。
「丸岡さん。本当に学生に任せるんですか?」
「文句があるのか?」
「いや文句は無いですけど…。」
「じゃあ、いらないことを言うな。」
丸岡刑事は俺のことを認めてくれたようだが、どうやら末松刑事はそうでもないらしい。しかし、そこは気にしてる場合じゃない。
今するべきことは情報の共有、そして今後の行動方針を決めることだ。
俺は渡された資料に目を通し始める。
☆☆☆
超常事件捜査班。それが今、この街での堕ち星や澱みについて調べる調査する警察の捜査チームのようだ。そして、そのリーダーが丸岡刑事らしい。
しかし、こういう神秘絡みの事件は公安などを通して協会が直接対処するはずでは…。まさか協会は墜ち星を俺に丸投げするつもりなのか?
嫌な予感がするが、今は考えないことにする。
「とりあえず、今後の怪物…あ~…堕ち星?との戦闘は陰星、お前達に頼みたい。」
「もちろんです。」
「そして、そこに至る捜査はこちらで行う。」
「わかりました。ただ、堕ち星が関係してそうなら早めに連絡を頂けると助かります。俺も俺で動くつもりですので。」
「わかった。ただあまり無茶をして、いらないことまで首を突っ込むなよ。警察に任せたほうが良いことはすぐに連絡しろ。」
「ありがとうございます。」
これで一通りは済んだだろう。窓の外を見ると完全に真っ暗になっている。俺は貰った資料を整理し、持ち帰っていいものは鞄に入れる。
そして席を立とうとしたとき、丸岡刑事が1つの質問をしてきた。
「ところで…お前がリーダーなのか?大人とかはいないのか?」
完全に忘れていた。今のConstellation Knightは戦えるのが俺だけだったというだけで、一応大人はいる。リーダーもその人がやっている。ただ今は…
「いるにはいるんですけど…今はこの街にいません。というか、どこにいるのかすらわかりません。」
「なんだそれは…。大丈夫なのか?」
「えぇ…まぁ…。とりあえず、次に会ったときには話をしておきます。」
「そうか。一応、話をしておきたいからな。頼むぞ。」
「はい。では失礼します。」
そう言って俺は超常事件捜査班の部屋を後にする。由衣を迎えに行かなければな…。そう考えながら廊下を歩く。
しかし、探す必要はなかった。なぜなら話し声が廊下にまで響いている。
俺は話し声が聞こえる方向に向かい、その部屋に入る。
俺は目に入ってきた光景にツッコまずにはいられなかった。
「何してんだ、お前。」
由衣は職員の人達と楽しそうに俗に言う、お菓子パーティーをしていた。
☆☆☆
俺は警察署を出て、夜道を歩いている。今日は色々と疲れた。早く休みたいのもあったが、今日起きたことを記録しておきたい。そして、疑問についてもまとめておきたかった。
そんな俺の背中を元気な声が追いかけてくる。
「まー君〜!待ってよ〜!私が悪かったからさ〜!機嫌直してよ〜!」
俺は思わずため息がこぼれる。怒ってはいない。どちらかというと呆れている。別に俺1人が丸岡刑事と話をしたことなんてどうでもいい。というか、こいつが丸岡刑事との話に参加しなかったのは俺が呼びに行かなかったのもある。
それにしても、こいつはどこに行ってもすぐ人と仲良く話ができるよな。
色々と考えながら歩いてる俺に由衣が追いついてきて、「ねぇ!ねぇ!」とうるさいので俺は口を開く。
「静かにしてくれ。あと、怒ってはない。」
「な〜んだ!良かった!…でもごめんね?でさ、職員の人たちみんな色んな話を聞かせてくれてね〜!」
「そうか。」
「お土産も貰っちゃったんだ〜!これまー君の分!」
由衣は俺にビニール袋を手渡す。その中には色々なお菓子が入っていた。
「あのなぁ…。」
「い、いやこれはね?みなさんが仕事中に食べる用を持ってきてくださって、だから私も持ってたやつを…」
またため息をこぼす。もう何も言うまい。今の俺だと逆に疲れるだけだ。由衣の家もすぐそこだし、今日はもうここでいいだろう。
「悪いが今日はここで帰る。じゃあな。」
そう言い自分の家の方向に向かって歩き出す。
しかし、前に進めない。鞄が掴まれている感覚がある。まさか…。
「遅くなったからお母さんが晩ごはん一緒にって言ってたから…さ?」
いや、俺は帰りたいんだが。
俺は少し抵抗を試みて前に進もうとするが、進めない。
なんか前にもこんな事あったよな。仕方ない、諦めるというか、白上家の好意に甘えるとするか。
こうして、俺の長い1日はもう少しだけ続くことになった。
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