15

 次に目を覚ますと、雨はすっかり上がっていた。シートの外で作業をしていたサクの背が、身じろぎの気配に気づいたのか、こちらを振り向いた。彼にしては珍しく、ぱっと表情が明るくなる。

「カイ、よかった、目が覚めた。身体はどう」

 火はすっかり消えていたが、昼の日差しに温められた空気は丁度よい。半身を起こしてみたが、すっかり気分も身体も回復していた。身に残る怠さは、珍しく寝すぎたせいか。軽く肩を回し、手渡してくれるコップの水を飲む。冷たい水が全身に行き渡る。

「良くなった。もう何ともない」

「本当に?」

「ああ、おかげでな」

 サクは焚き火に鍋をかけていた。二つの器に中身を盛り、並んで寝床に座る。サクは山鳥を仕留め、茸を見つけたと言った。器の中では鳥の肉と茸、加えて柔らかく炊いた米が温かな湯気を立てている。おまけにアケビの実もいくつか手に入れていた。

「もう、お米はこれで全部なんだ。でもきっと、食べれば元気になると思って」

 済まなさそうな彼に、カイはありがとうと礼を言う。

「またどこかで分けてもらえばいい。ありがとうな。サクがいなかったら、俺は死んでたよ。間違いなく」

 久方ぶりに身体は空腹を訴えていた。カイがスプーンを口に運ぶと、安心したようにサクも食べ始める。しばらく黙々と食べ進め、器が空になるとナイフでアケビを割った。見栄えの良くない乳白色の果肉をスプーンですくって食べると、口の中に柔らかな甘さが広がる。

 サクは俺がいなくても、もう立派にやっていける。隣りで同じ物を食べる彼を見て確信し、カイは安堵した。自分に万一があっても、彼は一人で生きていける力を持っている。

 同時に寂しさが湧くのを感じた。彼が力強くなるのは喜ばしいことのはずなのに、いつまでも頼っていてほしいと、自分勝手な思いが浮かぶ。

 そんな気持ちなど知らないサクは、カイが自分を見つめていることに気付くと、不思議そうな顔をした。

「なに」

「いや、美味そうに食うなと思って」

「そうかな……。食べないなら、僕がもらう」

 笑いながら、カイは実の残りをスプーンでこそげ落として口に運んだ。

「俺も、もっと強くなるからな。置いてかれないように」

「何言ってるんだよ。僕がカイを置いてどっかに行くわけないだろ」

「そうだな。これからも、二人で一緒に旅してこうな」

 きょとんとしつつも、サクは大きく頷いた。

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