第16話 悪鬼vs変態とストーカーの攻防
エータはゴブリンキングに吹っ飛ばされた時即座の復帰が可能だった、しかしその選択をしなかった。
(私が飛ばされた瞬間ルーク様は臨戦態勢になっている、戦う覚悟を決め、あのゴブリンキングを自身の糧にしようとしていますね、ならば見守るのが吉と出ることでしょう)
その後ルークとゴブリンキングの戦闘が終わりルークが倒れたタイミングで動き始めた
(部下に待機を命じていた地点で大きな魔力の反応がありますね…コニーがいる以上、直ぐに誰か死ぬことはないと思いますが…)
エータはルークを抱えた状態で部下に待機を命じていた場所は急ぐ
エータが現場に到着する時に見たのは悪鬼がコニーにトドメを刺そうとする瞬間だった
悪鬼とコニーの間に、それこそ針を通すようにギリギリに剣を差し込むことで間一髪のところでコニーを守ることができた、しかしエータの目に映った光景は悲惨なものだった
仲間の半分以上が四方に散らばり、生死の狭間にいるものもいる。この時エータに求められたのは人命の救助か悪鬼の討伐かの2択であった
いや、2択というのも間違いであるエータに与えられた選択肢は実質1択であった
「この悪鬼を討伐したうえで仲間全員を転移魔法で武国王都の病院に送り届けることですか……流石の私でも少々手こずるかもしれませんね……」
今の悪鬼は獲物を奪われた猛獣に近しい、それほどまでの圧倒的存在感をまとっていた
直後エータのすぐ側に魔法陣が出現する
『エータ様、こちらシィーラです今すぐその魔法陣の中に倒れている人全員を入れてください』
『………ルーク様のいるところにいつでも君はいるね……………』
『かなり気持ちの悪い発言をしてルーク様に引かれていたエータ様に何を言われても気にしませんよ』
くだらないやりとりをしながらも、仲間を魔法陣の上に置いていく
この時悪鬼は動いていなかった、いや動けなかったという方が正しいかもしれない
エータを一眼見た瞬間から悪鬼の意識は常にエータに向かっている、コニーを瀕死に追い込み国を破壊したS級の魔物がエータに全神経を注ぐこの光景を見たシィーラは改めてエータの強さを思い知る
(強いのは知っていた、でも知っていただけだ。エータさんが本気で戦う、せっかく間近で見れるんだ僕もこれを糧にする)
2ヶ月の修行を経てルークは強くなった、それこそシィーラとは比べ物にならないほどに。シィーラは焦りを感じている。
というのもシィーラには強くなりたいという向上心があまりない、ならなぜルークが強くなることに焦りを感じているのか、理由はルークが語った好きな異性のタイプに直結している
「ボーイッシュで、強くて、かっこいい人と付き合いたい」
ルークが唯一語っている好きな異性のタイプ
シィーラがそんなことを聞いて行動に移さないわけがない、元々顔立ちや髪型はかなりボーイッシュなものだったのでシィーラは残りの、強さという要素を強く求めた、その過程で監視魔法などを開発したのである。
それだけがシィーラが強くなりたいと願う理由なのである。ルークに好きになってもらいたいそれだけがシィーラが強くなる意味
ルークよりも自分が強いならルークが自分のことを好きになってくれると考えるから
♢
シィーラは元々内気で引っ込み思案な性格であった。変化があったのはルークが魔国に訪れた時であった
魔国と武国は同盟国である、それ故に公爵家と侯爵家の繋がりは大切とされている。そのため見合いが開かれた
「武国公爵家次男ルーク・アスタルクです。よろしくお願いします」
「………シィーラです………」
「こらッシィーラ……無礼をお許しくださいルーク様」
シィーラの親はルークに謝罪をする。この時シィーラは自分のせいで親がルークに頭を下げていることの罪悪感で押しつぶされそうだった。そんな時ルークは
「そんな、顔をあげてください僕は気にしていませんから」
「寛大な対応感謝いたします」
「いえいえ……一つ質問をしてもよろしいでしょうか?」
ルークが聞く
「なんでもお聞きください」
シィーラの両親が答える
「この見合いはシィーラ嬢も了承した上でのものでしょうか?」
「了承ですか?」
「はい、突然婚約者と言っても困惑すると思うんです。なのでまずは友達から始めようと思うのですが……いかがでしょうかシィーラ嬢」
この時シィーラには初めて友人ができた。それは徐々に恋慕へと変わっていった。
ルークに好きになってもらう、これがシィーラの目標となった。そのためにできることをシィーラは身につけた。社交性を身につけ、実力をつけ、みなから尊敬される人間となった。シィーラの欲望のためだけに
そもそも最初に婚約を結んでいれば良かったのではないか?そう考える人もいるだろう、しかしシィーラの考えは違う。初めてできた友人であるルークに強要はしたくない。自分の力でルークに結婚して欲しいと言わせることそれこそシィーラの目標なのである
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