第15話 ヒーローと変態は遅れてやってくる

「総員退避ッ」

コニーは自身の直感を信じ叫ぶ、次の瞬間コニーの指示に反応が遅れた半数以上が四方に飛ばされた、その中心に立っていたのは白髪の子供であった。


「不死者の悪鬼……」

「副隊長こいつが、俺ら第一軍に与えられた任務ですかね?」

「不死者の悪鬼の討伐…」

「エータ様なしで倒せるんですかね?」


第一軍最古参の男がコニーに聞く

コニーは悪鬼の状態と自分たちの状況を考え指示を出す


「総員自身の命を第一に考え行動し、エータ様の合流を待つ、それまで持ち堪えろッ」

「「「ハッ」」」


コニーは指示を出して直ぐに一人で特攻を始める、当然これで倒せるとは思っていない、それでも相手の1分1秒を奪いエータと合流したうえで挑むことができるならチャンスは巡ってくる

そう考えたコニーは悪鬼と本格的な戦闘を始める


それが絶望に挑む戦いだと知りながら


(ルークに今の状況を伝えるべきか?)

シィーラが最初に考えたのはルークに今の現状を伝えるということ、しかし

(ルークは今ゴブリンキングの討伐に全力を注いでいる。ここで無駄な情報を増やすとルークの邪魔になりかねない)


ならシィーラにできることは一つしかない


『コニー副隊長殿聞こえますか?』

『……どなたか分かりませんが、今少々手間取っておりまして対応が難しいです』

『聞こえていることが確認できた時点で問題ありません。突然で申し訳ありませんが援護します』

『……この化け物には何をしても通用しそうにないのですが…』

『なので直接手はだしません、私の見えている魔力の動き、それをコニー様と共有すれば回避が楽になると思われます』


コニーは考える

(現状のままなら間違いなく負ける、手数、パワーでは完全に負けている、活路を見出そうにも俺に剣以外の戦闘手段はない)


コニーは生まれながらに魔力を持たず魔法を使うことができない、それは魔力を感じることができないということにも繋がる


『名前を聞いてもよろしいでしょうか?』

(ここで聞くようなことではない、こんな状況こんな場面では一番無駄であろう、しかし相手を信頼するためには名ぐらいは聞かなければな)


『シィーラ・コールトですッ』


(ルーク様に心酔しているという、魔国の侯爵令嬢か、ならば迷う余地なし)


『共有をお願いします』

『了解しました』


直後、悪鬼の体を流れる魔力が右足に動くのを確認したコニーは右足の蹴りを完璧に弾いてみせた。なおも続く悪鬼の攻撃をコニーは完璧に防御してみせる


悪鬼は感じとる、さっきまでとは違うと

その直後、悪鬼は狙いをコニーから最初に四方に飛ばした団員に変えた


「止まれッ」

そんなコニーの叫びに耳を傾けることなく進み続ける悪鬼


「これ以上は行かせんぞッ」

動ける団員が悪鬼の正面に立つが、腹部に一撃をもらい動けなくされる


(僅かに遅くなったがまだ間に合わん)

コニーはコンマ1秒の間に思考を回し続ける、エータへの誓いを守るために


コニーは魔法を使うことのできない自分がなぜ副隊長に任命されたのか隊長であるエータの元を訪ねた


その時エータから帰ってきた答えは

「私があなたを副隊長に選んだ理由は、その責任感ですよ」

「責任感ですか?」

「はい、規律を守る力はもちろんですが仲間を守るために命を捧げるあなたの姿は危機感を感じるとともに、とても美しく見えました。だからですよ」

「本当にそれだけで魔法の使えない私を副隊長に選んだのですか?」

「魔法が使えないのならそれ以外で他を圧倒できる力を身につけてください」

「そんな無茶な」

「無茶でもあなたに身につけて欲しい圧倒的な力を」

「圧倒的な力……」


「話は変わりますが私があなたにお願いすることはもう一つだけです、必ず仲間の命を救ってください」

エータは独断専行の数がかなり多い、だからこそ隊を守って欲しい、そうコニーに伝えたつもりだったが本人の受け取り方は違った

(エータ様に、自分を信じてくれた人との誓いを違えたくない)


(俺の全てを投げ打ったとしても今この瞬間目の前で誓いを違えてたまるか)


悪鬼との距離を自身の安全を考慮しない深すぎる踏み込みで埋める


流石の悪鬼も面食らっていたが、その一撃がコニーにとって賭けだということを悪鬼の勘が告げる

この一撃さえかわせば自分の勝利だと

その瞬間、悪鬼は自身の目の前に転がる団員をコニーとの直線上に盾にするよう置いた


コニーにはその瞬間迷いが生じた、動きを止めたのだ。悪鬼がその隙を見逃すはずもなく団員の腹ごとコニーを貫く

(……………貫かれているのは腹の腎臓部分運が良ければ生きられるか……)


同じように腹を貫かれ自分の死が間近にある中で仲間の心配をする、この様子からわかる通り、コニーの誓いは呪いでもあったのだろう


悪鬼はコニーにトドメを刺すため拳を振り上げる


死は呪いを伝染させる


この世界では有名な言葉である。コニーの誓いも他者に伝染し呪いとなるのだろう、しかし


「……流石に遊びがすぎましたね……」


コニーの呪いは変態の手によって伝染を免れる


変態の部分は、ルークを抱えたエータによってと言い換えてもいいだろう


















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