第14話 いつでも君のそばに居る
♢
ルークがゴブリンキングと戦っている時シィーラはルークの指示に従い監視魔法の範囲を広げる、普段はルークの魔力をマーキングすることで手間をかけずに監視魔法を使うことができるが今回はそうもいかない
ゴブリンキングを転移した誰かがいるのはシィーラにもわかった、シィーラの監視魔法にも突然魔力の反応が出たゴブリンキングのものと、ノイズのかかった完治の難しい魔力の二つ、あれほどのノイズがかかる魔力特徴が強いため発見は容易なはずだが、シィーラは未だ発見できずにいる
(……全く監視魔法に反応が出ないね、転移して直ぐに戻った可能性もあるわけだが)
この時シィーラは第一軍の待機している団員たちを見つけた
(エータさんがいるんだし、他の第一軍の人たちもいると思ってたけど、エータさんとルークの衝突で起こった衝撃になんの疑問も抱いていないのか?)
その時シィーラは僅かな違和感を感じた
♢
「エータ様が向かった方で大きな衝撃がありましたが、問題ないでしょうな」
「魔力の反応もそれほど大きいものではありません」
エータが率いる第一軍は全員がbランク程度の魔物なら一人で討伐が可能な集団である、さらに副隊長は単体でゴブリンキングを倒すことのできる存在でもある
名前はコニー・ウィリアム
「エータ様が次の指示を出すまで持ち場で待機とする」
15分がたつと一人の兵士が口を開く
「ルーカス様はゴブリンごときの討伐になぜ我々を送ったのでしょうか?学生の戦闘訓練の相手として使う選択肢などもあったのではないですか?」
コニーが答える
「……詳細な情報はエータ様しか聞いていないただ我々第一軍の主戦力をこの森に来させるあたり、並な事情ではないな」
「それこそモンスターラッシュなどでしょうか?」
「可能性としてあり得ない話ではないが、それにしてはゴブリンの数が少ないな、それにモンスターラッシュを防ぐなら第一軍全員を動員しても足りないぐらいだ」
「ならばあり得るのは……単体として最強クラスのモンスターですかね?」
「Aランクオーバーのモンスターの可能性はあるかもしれないな」
「少し気を引き締めた方がいいかもしれませんね」
そんな第一軍を横切る存在、コニーでさえ僅かにしか感じることのできないそいつは
嘲り笑うかのような顔をしていた
♢
注意深く観察していたシィーラでさえ一度は何も見つける事ができなかった、しかし確かに残る違和感、ここでその違和感の正体を理解してしまえば決して生きていられない、シィーラの直感がそう訴えかける
それでもシィーラは止まるわけには行かない
自分の想い人が任せると言ってくれた、ならば自分の命など惜しくはないシィーラは覚悟を決めその存在を確認する、そこには信じられない光景が広がっていた
第一軍の精鋭70名そのうちの40名は地に伏し
残りの30名も半数が立つので精一杯の状況、副隊長のコニーはシィーラの感じた違和感の正体と戦闘している
そこに居たのは白髪の子供
「……不死者の悪鬼……」
♢
この世界はモンスターによってランク分けがされている下からGランク、Fランク、Dランク、Cランク、Bランク、Aランクの7つ、しかしごく稀にAランクの魔物よりも遥かに強い存在が現れ、その存在はAランクオーバーと呼ばれている、またAランクオーバーの中でも名持ちはSランクと呼ばれ世界に20体しか存在しない
不死者の悪鬼はその20体のうちの一体、sランクに指定された理由は一つ、今まで殺してきた人間の数が多すぎるのだ、世界全土がこの存在を認知した事件は学園の教科書に載るほどのものであった
当時、異常な速度で成長を続ける国が存在した、その国は土地の広さから他国との交易をせずとも生きることができただからこそ国境では、警備が大変厳しくよっぽどのことでもない限り他国の人間は入国することができなかった
『悪鬼はいつでも隣にいる』
この言葉が悪鬼のしたことを全て示しているのである
悪鬼はその圧倒的な存在感を抑え国境や人の波を抜け国王の隣に行き突然国王の首を飛ばした
その後悪鬼の存在に国のみなが気付き国中を敵に回したが悪鬼は笑い続けた、殺して笑い笑って殺す、それを続けるうちたった一晩で国が一つ滅ぼされたのだ、それは人々の記憶に深く根付いた
そんな存在が今目の前にいるのである、シィーラが悪鬼を恐れ動けなくなっても、第一軍の人間は死んでいく。それを黙って受け入れることができるほどシィーラも甘くはない
シィーラは自分にできることをする、それ以外今は考えない
この恐怖に打ち勝つ方法を模索し続ける
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