第13話 覚悟とhighになったルーク
ゴブリンキングとの戦闘で感じるのは先ほどのエータとの戦闘でも課題として上がった火力不足である、相手の攻撃は威力こそ地面がエグれるほどのものだが速度がなく回避が容易い、そんな相手の攻撃後の隙を狙い攻撃を入れるが
「硬すぎて通る気がしねぇ」
炎帝の鎧を完璧にマスターすればゴブリンキング一体倒すぐらいならば問題ない火力が出る
しかし、ルークは今炎帝の槍以外使いこなすことができていない
『今のお前には倒すのが難しい相手だ、戦いの中で炎帝の鎧を完成させる以外の選択肢はないぞ』
「そうと決まれば」
ルークは瞬時に距離を取り自身で纏っている魔力に属性を付与していく、その時魔力の暴走により右手が爆発する
(くッ……力が入らん、右手が使い物にならなくなった…)
その爆発を待っていたとばかりにゴブリンキングはルークの右足を狙い剣を振る
「右手一本使えなくなった程度で…俺が止まるかよッ」
ルークはステップを踏みゴブリンキングの攻撃を回避する、しかし右手が使えなくなった以上槍の攻撃力は半減してしまう
(炎帝の鎧を完成させる、現時点で一番勝てる可能性があるのはこの作戦だが……)
先ほどのような爆発が再度起こらないとも限らない
自分の死=エータの死
この意識がルークの選択肢を狭めてしまう
しかし、考えがまとまらなくともゴブリンキングは止まってくれない
ステップを踏んで攻撃を避け続けるルークだったが、右手を使えないためにバランスを崩してしまう
そこにゴブリンキングの蹴りが炸裂しルークは木に打ち付けられる
(……冷静に判断しろ、敵の状況を俺自身の状態を)
『今は目の前のこいつを倒すためだけに全てを注ぐ時だと思うぞ』
クロの言葉を聞いた瞬間ルークの中の何かが切れた、思考を回すあまり頭がパンクしたとかではなく、それは大切なものが無くなるような、けれど大切なものを守るために必要な力を得たような感覚
「右手に力は、はいんねぇけどこの右手ならいくらでも試せるよな、動かないもんを有効活用して勝たなきゃなぁー」
クロやシィーラに見せる喋り方とも違う、ルーカスや社交界で見せる姿とも違う、まるで本能を剥き出しにしたようなルークの姿
『実践の中で一皮むけるとき感覚は極限まで研ぎ澄まされる、それと同時に新たな自分が顔を見せる時がある、世間一般ではその状態をゾーンに入ったという』
そんなクロの言葉もルークには届かない。今のルークにあるのは目の前の化け物を倒すただそれだけ
「行くぞクソ野郎、絶対にぶっ殺すッ」
ルークは木と木の合間を縫うように動きゴブリンキングの攻撃を回避していく、その間何度も右腕を爆発させながらも属性付与を試し続ける
「…これを逆に利用した方がいいのかね…」
ルークは爆発を続ける右腕でゴブリンキングを殴る、その一撃がゴブリンキングに確実にダメージを与える
【ガフォォ】
「うーん想定よりダメージがはいってねぇな」
ゴブリンキングの肌が想像以上に硬いこともあるが、やはり未完成の炎帝の鎧では一撃の威力が違う
「次に試すのは魔力の回転率を上げることか」
さっきまでルークは魔力を1m/sで全身に回していたがその回転率を2m/sにまで上げる
そのままゴブリンキングに殴りかかるが
「速度こそ倍になったけどクロの炎帝の鎧みたいな破壊力があるわけでもないな」
「なら次は…」
そうしてルークはゴブリンキングを相手にしながらいくつものパターンを試す、魔力の放出量を倍にしたり、放出する魔力の密度をあげたりもした、だがどれもうまくいかない
「何が原因なのかねぇ」
ルークは独り言を言いながら試行錯誤を続ける自分自身の右腕を犠牲してだ
痛くないわけがない、むしろ今なおルークは痛みを感じるだろう、アドレナリンがどれだけ出たとしてもルークの痛みは消えない、それでもなおルークは続ける
そして時間にして20分、打撃を打ち込んだ回数で言えば200を超えた時
「完成した、これが俺の"炎帝の鎧"」
ルークにはこれこそが正解だという感覚があった、そしてゴブリンキングの攻撃に合わせてカウンターを叩き込んだところ、その姿が見えなくなるところまで飛ばされた
「今まで散々自由してたんだ、殺される覚悟ぐらいできてんだろうな?」
死の間際にゴブリンキングは感じ取った、ルークがドラゴンなどこの世界で最強と言われる存在に近しい気配を持つことを、しかし今気付いたとしても遅いとしか言えないだろう
"炎帝の槍"
ルークが投擲した槍はゴブリンキングの心臓を貫いた、それと同時にルークの意識は途切れる
(早く帰って飯食いたかったなぁ)
『ルークよ見事であったッ』
そんなクロの言葉に満足し、ルークはエータやシィーラの状態を確認することなく寝てしまう
このゴブリンキングとの戦いは明確な成果を得ることのできた、始めての実践であった。
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