第11話 勧誘はほどほどにしないと悪徳業者か何かと勘違いされるから注意しろ

『cランク程度なら問題なく倒せるな』

「束になったゴブリンとかじゃなく単体として強いゴブリンと戦いたいな、ゴブリンソルジャーとかはいないかねぇ?」

『一国の公爵家の人間に詳細も伝えずにそんな危ないとこに行かせるか、冷静に考えればわかるだろ』


その時少し奥から武国軍の制服を着た男が歩いてきた


「逃げたゴブリンを追っていたのですが、なるほどあまりの数の多さにルーカス様に救援を要求したのは僕でしたがまさかあなたが来るとは、予想外でしたよルーク殿」

「エータか」

「はいあなたのお兄様であるルーカス様の直属の部下であり、武国軍第一部隊長エータ・マエバシにごさまいます」


この世界には召喚術というものが存在する

異国とのゲートを繋ぎ様々な生物を呼び出すことができる、この世界に魔物や動物が混在している理由はそれである


ゲートは魔力を吸収する故に魔力を持たない異界の動物のみがこの世界にやってくる

しかしごく稀に魔力とゲートの相性が良いものが異界からやってくる、そのうちの一人がコータマエバシである


偶然にこの世界にきたエータは兄に拾われ軍の見習いとなった、というのもゲートと相性のいい魔力を持つような人間は得意な魔力を持つ

そもそもゲートの魔力が得意だからこそ言えることなのだが、その持ち前の才能を活かし、努力を重ね今や第一軍の隊長になっている


「ルーク様はいつ進路を軍への入隊に決めるのですか?」


「私はずっと待っているのですルーカス様を支え自身も特攻隊長として国を発展させるその姿を夢見てあなた様に期待しているのです、ルーカス様の弟としてあなたを」

『なんだこの自己満男』

「ブフー」

「ルーク様何かございましたか?」

「いや………なん…でも…ない」

(クロ笑わせないでくれ)


自己満男大いに納得である、この男俺が9つの時から事あるごとに、やれ第一部隊の見学に参加しろだとか、やれ進路を軍に決めろだの言ってくる、しかも理由が俺と兄さんが一緒に戦ってるところを見たいとかで俺の実力を知っての勧誘ではない


「エータさん自分はまだ進路を決めかねています、どうしても公務に付きっきりになる未来が見えていて軍に所属する余裕があるかどうか…」

「それでもあなたの父上は軍に所属しております、あなたも軍への所属を真剣に考えてくだされ」


冷静に考えれば公務を初めて10年以上が経つ者と始めた直後の者どっちの効率がいいかなんて小学生でもわかる、盲信とも言えるような思想ゆえにルークはこの男が苦手なのである


『この男を部下に置くルーカスの気持ちがわからんな』

(戦闘に関しては有能だからな)


「ルーク様討伐の協力ありがとうございます、

逃したゴブリンは100体だったと思いますが死体は20ほどしかいませんね、残りの80はどこへ?」

「こちらには20体しか来ていませんが…力になれずすいません」

「いえお気になさらず、それでは私は残りのゴブリンを追いますので失礼します」


すれ違ったタイミングでエータが裏拳で殴りかかってくる

『受けるなッ』

その言葉に反応することができず俺は受け身を取る


「やはり強くなっていますね、元のあなたならゴブリン100体倒すのにもっと時間がかかっていましたから疑ってわいましたが、私の裏拳を防いだことで確信に変わりました」

「なんの話でしょうか?そもそも突然殴ろうとしたことについて説明を求めてもいいですか?」

「とぼけなくても大丈夫ですよ」

「ルーク様の変化が確認できたので私は満足です、今日のことルーカス様には言わないでいただけると助かります、それでは」

『ルーク仕掛けろ』


俺はクロの指示通りに動く

再びすれ違う時、俺はコータに蹴りを入れる

しかし完璧に受け身を取られる


「待てよコータお前のいうようにゴブリン100体は全部俺が倒したぜ」

「……口調が随分と違いますがそれが本来のあなたと言うことですか?」

「そっちが先に仕掛けてきたんだ兄さんには報告しない代わりにここで俺と闘れ」


『どうせお前のレベルがばれているのなら経験を積んでいこう、強者と戦い実践で得られるものがある、この男の佇まいやステップから学べるものも多い

ここでまた一つ殻を破ろうじゃないか』


「少し意外です、前までのあなたならここは何もせずに無視していたでしょう?」

「自分の技を試せる相手を探してたんだよ、打倒兄さんが今の俺の第一目標だからな」

「……本気ですか?」

「本気だよ信じられないかも「なんと素晴らしい」

「『え?』」

「強大な兄を前に本気で勝とうと努力し続ける弟実に健気だ、これこそ私が理想とした姿に限りなく近い、そんな君の目標を達成するための礎となるなら本望だ、こんな私ならぜひとも使い潰してくれ」


この時クロとルークの気持ちは完全に一致した

『(こいつ変態だあ)』


「さぁいつでも来てください修行をつけてあげましょう」

「修行?」

「いくら強くなったと言ってもまだまだでしょう、駆け引きや戦術に関しては課題を感じますしね、私の鎌掛けに気づかずゴブリンを100体倒したことをなし崩し的に認めたようにね」

「わざとに決まってるじゃないですか〜

あんたが俺と戦うように仕向けただけですよ」

「なるほどそれもあなたの戦術だと?」

「当たり前に決まってるじゃないですか〜」


次の瞬間一体に衝撃波が走る


ルークとエータの拳と拳の衝突による衝撃波は魔物の森全域を駆け抜けた、それは森の少しはずれにいるシィーラまで届くほどの衝撃であった



ルークがエータとの殴り合いをしていく中で感じたこと、それは自分が決め手にかけていると感じたことであった

エータの攻撃は徐々にルークの防御を突破してきているにも関わらずルークの攻撃は一向にコータの防御を崩すことができない

実戦の中でエータを観察しルークが気づいたのはステップのリズム変化である

こちらの早い攻撃に対して相手は確実に防御できるリズムを刻む、こちらの防御に対しては速い攻撃と遅い攻撃を織り交ぜて攻撃し体制を崩そうとしてくる

それを真似てみたところエータはこちらのフェイントやタイミングを見抜きテンポを変えてくる、ならばとことんこちらのペースに持ち込んでいく


"低炎"設置型の炎魔法トラップ一定以上の圧力がかかることで起爆する


自分の仕掛けた位置にエータを誘導して行く

「ルーク様確かに強くなりましたがまだ甘いですな」

罠にかかる直前エータは静止し、罠を避ける

「罠を仕掛ける時は相手だけでなく時には自分自身を騙すことさえ必要になります、覚えておいてください」


「…一通りルーク様の動きを見ることもできましたのでそろそろギアを上げていきますよ」





























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