第9話 奪うも奪われるもその人次第

「奪えなきゃ奪われるだけそんなのクロが一番よくわかってるだろ」


嫌だ嫌だ嫌だ


「お前の親も兄も姉も部下も上司も全員死んだそれでもまだ、お前は心なんて不確定要素に頼るのか?」


約束を……守らないと…


「その契約を誓った奴らは全員死んだ、自身の身を守るために必要なのは力だ、お前に必要なものは自身を守り保つためだけの偽りの姿だ」


本当の僕は家族と仲間と絆で繋がったんだ


「その絆とやらも今では見る影もない、さぁお前自身の力を見せてみろ。本来のお前自身の力をなッ」


違う僕にはまだ何かある。その何かを手に入れれば…

僕はまだ前に進みたい、約束を果たすために


「…クロ…………クロ、クロッ」


「起きてんなら早く返事してくれよ」

無言で床を見つめていたクロはどこか落ち着かないようだった

「すまんな」

「別にいいけどさ…って話は違くてだな属性付与までできるようになったぞこれで魔法もクリアか?」

「想像以上に早かったな」

「ってことはまた兄さんモドキとやるのか?」

「いやここからはよりレベルを上げていこうと思う」

「それこそ本物に限りなく近いレベルの兄さんモドキと戦うとか?」

「それよりも遥かに強い相手と戦おう」

「誰とやるんだ?それこそ最後の剣聖クロード・イディアとか?」

「あの女まだ生きてるのか?」

「まだ?」

「俺の部下だった女だよ」

「そうだったのか…まぁエルフなんだし50年生きるぐらい普通なんじゃないのか?」

「アイツは運命に……」

クロが言った言葉が俺にはしっかりと聞き取ることができなかった

といってもここで話を切るわけにもいかず

「…それで結局誰と戦うんだ?」

「あいつは一歩踏み出せているのか…」

「…………クロさーん?」

やっと気づいてくれたクロが話し出す

「すまんな」

「お前とこれから戦うのはこの俺だ」

「……人類史上最強の男と戦うのか…」

「模擬戦なんだ肩の力を抜け」

「お前はまだ俺には勝てない」

「今すぐは無理でも必ずいつかは勝つ、そのための布石だ今回は」

「その粋や良し」


「ルールは?」

「魔法と格闘術のみの純粋な力勝負としよう」


お互い配置につき戦闘が始まる


「お前から来い」

「お言葉に甘えてッ」


不意打ちにも関わらず余裕を持った受け流し

上段を意識させた上で攻め方を変え下段に攻撃

予想外にもその下段の攻撃はクロに命中し俺はクロに魔法を放つ

「炎帝の槍」


俺はクロに教わった魔法を実践で活かすことができ、油断していた。

……させられたが正解だと思うが


「体制を崩した相手にする行動としては悪くない遠慮も徐々に無くなってきている」


ただ


「正解は」


その瞬間俺の視界は天井へと向く


「相手を動けない体制にした上でマウントをとり手足からもいでいくことだ」


この精神世界での修行で俺は確実に成長していると思う。クロに感謝だってしている


しかし一つだけお願いをするならば痛覚だけは無くして欲しいと切実に思った、骨を折られて叫ぶのはまじできつい


「俺のさっきの戦い方を見てどう感じた?」

「必要なのは知恵と自分が生き残るために他者を切り捨てられる覚悟ってことか?」

「察しが良くて助かるよ……他者を切り捨てると言ってもパターン自体はたくさんある」

「自分では勝てない強靭な敵と仲間が戦っている時、逃げることで勝利条件を満たすことができるときなんかが具体例だな」

「なるほどな」

「俺は自分より相手がどれだけ強かろうとも立ち向かって勝つ以外の選択肢がない

そういう状況に追い込まれてるやつをたくさん見てきただからこそ逃げる選択肢があるからこそ言える言葉だけどな」


この日からクロに対する尊敬度は少し上がった厳しいことも言う人だけれど俺よりもすごいんだってね

面と向かって話して初めて感じたよ














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