第2話 ゴーストが流暢に喋るのは想像できない

「ゴーストなのに喋れるってのはどういうことなんでしょうか?」

『そんなの俺の魂が高潔だからに決まっているだろう』


会話が成立するあたり従来のゴーストとは違うことがわかる

ゴーストってのは基本的に喋ることができない

で有名だ。喋れるとしてもうめき声ぐらいなものでヴァーとかアーとかだ。

意思疎通を図ることのできるゴーストはハイゴーストと呼ばれる。

しかしハイゴーストはその存在感の大きさから一定以上の実力者なら感知することが可能である

だからこそ今の目の前の存在はさらに高位の存在感を消すことのできるアークデーモンである可能性すらある。

実体化していない今ならば急ぎ兄に報告するべきだろうか?

『俺は正真正銘のゴーストだ』

俺の思考を読んでいる時点でアークデーモン以上確定である。


"スキル思考看破"


アークデーモンクラスが覚えられる高等スキルそして実体のない存在であるのならば顕現していないアークデーモンで確定だろう


今俺がするべきなのは兄への報告である。

『因みに俺の姿はお前以外には見えてないと思うぞ』

お前の言うことを俺が信じると思っているのか?

『まぁ無理だろうな』

そう思うなら言わないでくれ……








「突然呼び出して何のようだルーク?姫が早く戻ってこいオーラを部屋から放ってるんだけど」

「兄さん俺の後ろにゴーストが見える?」

「…………いい診療所なら紹介できるぞ?」

「……冗談だよ」

『ほら他の奴には見えないだろ』

まだ決まってないだろ兄さんにだけ見えない可能性もある

『絶対に見えないぞ他のやつにはな』

「ルークもう戻っていいか?」

「悪いね兄さん俺の冗談に付き合ってもらって」

「別にいいがお前が冗談でも俺を呼び出すのは珍しいな」

「本当に気にしないでくれ」

「了解、じゃあまた後で」


俺以外に仮に見えないと仮定したとして俺にしか見えない理由はなんだ?

『俺が聞きたいぐらいだ』

理由は現時点では全くわからないと言うことか

『質問に答えてもらうぞ』

…少しぐらいならいいぞ

『ここはどこだ?』

五大国の一つ武国だ

『また国が別れたのか?』

国家の統一なんて50年前に終わってるぞ

『次の質問だ』

『クロと言う名に聞き覚えはあるか?』


クロ100年前この世界を統一した男

後にも先にもこの男以外で国家の統一は叶わないだろうと言われた人だ

法・武・理・商・魔が五大国の名前にそれぞれ入るのはクロの弟子5人がそれぞれ最も得意であった物の名を冠するとされていて歴史の勉強をする時に誰もが前提として知っている話だ


クロを知っていると言うことは50年以上前の人物ではなさそうだな

『なんならそのクロ本人だ』

冗談はやめてくれ

『本気で言っている』

あの英雄クロがゴーストだなんて悪い冗談か何かだろ

『俺自身も今の状態をゴーストというのは不服だ』

『…俺はこの状態を霊魂と呼ぶことにしよう』

……まぁ今の平和な世の中には国を統一する英雄なんていらないんだけどな

『英雄?』

知らないのか?クロは史実だと英雄だとされているが

『俺は英雄などと敬われるようなことはしていない』

国を統一して戦争を終わらせた男が何を言っているんだ?

『それしか手段がなかったからその決断を下しただけだ』

『必要がないのならあんな手段俺はもう取りたくない』

天才様にも悩みの一つや二つはあると言うことか?

『天才?俺がか?』

英雄になるような男だ俺とは生まれ持っての力が違う

『俺は天才なんかじゃない』

天才は自身が天才であることを自覚していないものだ

『それはお前自身の感覚に過ぎない』

俺は答えを得ている、今から俺がいくら努力したとしても兄やミアには勝てない

『限界値を自分で決め、努力を怠っただけだろ』

努力?死ぬほどにしたよそれでもわかるのは天才との距離の遠さそれだけだったよ



この後に自称クロの霊魂から紡がれた言葉は俺の今までの生き方を否定するものでありながら尚も前を向けと、そう言われるような言葉であったのは間違いない




『自身の目標を達成せずに終わる努力など真の努力でない』












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