第22話 公爵夫人だった者の視点

 

 アフタヌーンティーを楽しむ時間なのに、憂鬱で、退屈で、面白くない。

 何度目かわからない溜息が漏れる。


 ああ、どうして人生はままならないかしら。姉の婚約者を奪って隣国の法国、それも一番厳しい修道院に追いやってせいせいしていたら聖女になって自国に戻ってくるし、パーティーを組んでいた公爵家の嫡男と結婚! 

 姉が公爵夫人だなんて許せるはずがなかった。だから姉の持っている全てのモノを私がごっそり奪い取るはず……だったのに!

 アレが邪魔をしたせいで私が死ぬ羽目になるなんて、ありえない!

 邪竜の眷族になっていたから姉の肉体を乗っ取れたけれど、不便で表に出て来られる時間も限られている。


 ユティア。

 姉の娘。私にとっては姪だけれど、憎々しいだけ。

 姉を助けようとして鹿。結局、助けられずに死なせたんだから本当に愚かだわ。


 ああ、やっぱり姉の子供なんて、さっさと捨てるか他国の修道院に送れば良かった!

 王妃がユティアを気に入っていたから王都に無理矢理送り出したのに、ギルフォード様は「心配だから」と領地を親族に任せて王都に住み込むし!

 ついて行こうとしたら、私は静養すべきだとかで置いていかれるなんて!


 どうしてギルフォード様は、私を見てくださらないの?

 クローディアの体を乗っ取っても、あの方と一緒に居られないなら意味がないわ。

 ユティアが無能で、無価値だと王太子を唆すようにたちを使って指示を出したというのに……これも失敗ね。


 ん? あら? 

 私──

 なんだか変ね?

 私は──クローディアの妹で、姉の全てを壊すためにににににに……。私は……遘√?繧ッ繝ュ繝シ繝?ぅ繧「縺ョ螯ケ縲√ぐ繝ォ繝輔か繝シ繝画ァ倥r遘√?迚ゥ縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺あああああああああああ……。あ。


『案ずるな。ギルフォードの呪いは確実に魂を蝕み、近い将来、我の糧となる──お前と同じようにな』


 クローディアの妹シャロンの魂を完全に食らったことで、完全にこの体の所有権を得た。本当に長かった。

 これで──ようやく復讐ができる。


 今度こそ人の時代に終焉を。

 この世界に聖女と呼べる者はない。あのエリーという娘も私の──我の眷族に落ちた。公爵も呪いによって本来の力は出ないだろうし、勇者オウカは宵闇の魔女をけしかけて呪われているので、我の脅威とはならない。

 完璧だ。


 ここには神の代の時代に辛酸を舐めさせられた神半人半の王も、黄金の林檎を宿した娘もいない。

 この体もようやく馴染んだのだ、忌々しい元騎士ギルフォードを殺しに行くか。


「世界を渾沌に──ああ、楽しみだ。本当に、楽しみだ」

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