ストーカーの正体

涙の頭に浮かんだのは、1人しかいなかった。


――やっばりあの男、普通じゃなかったのね。


「ありがとう、未有ちゃん、明日香ちゃん、あたしは大丈夫だから。

明日香ちゃん、怖い思いさせて、ゴメンネ。」

「涙さん・・・」

「大丈夫だから、ちょっとした知り合いっていうか・・・とにかく、あなた達はもういいわ。楽しんできて。」


未有と明日香は心配そうに涙を見る。


「ほんとに大丈夫ですか・・・?」


涙は笑顔で頷いた。

未有と明日香は店を出ると、笑輝が仕事を終え出てきた。


「あ、お疲れさま。涙はまだいますか?」

「笑輝さん・・・涙さんを守ってくださいね!」

「え?」


涙は仕事を終え、サロンを出る。


「涙。」

「笑輝、お疲れ。」


涙は笑顔で答えた。

2人は、ゆっくり歩き出す。


「今日さ、朝一で男性客が来たんだ。」

「そうなの?」


笑輝は話し出す。


「涙が郵便物持って来てくれた時に来てたんだけど、その男、涙を気にしてる感じだった。」


涙は足を止めた。


「あの男が涙のストーカーか?」

「・・・・」

「お前の過去には興味ない。

あの男と何があったのかも聞かない。

けど、

俺はお前を守る義務がある。

しばらく俺から離れるな。」

「え?」


笑輝の顔を見る。


「しばらく、俺の部屋で暮らせ。」


笑輝は涙を見つめる。

涙は頷いた。


思わぬところで、2人は同棲する事になった。


「いいか、これからしばらく仕事も買い物も、全て俺と一緒だ。部屋で1人の時は、誰か来ても出なくていいから。」

「はい。」

「そして、何かあればすぐに警察に通報する事!」


涙はクスッと笑う。


「お父さんみたいね。」


笑輝もつられて笑う。


「笑い事じゃないから。とりあえず、必要な物を取りに行く時は、俺も一緒に行くから。

あと、ベットは使って。俺は床で寝る。」

「え?一緒に寝ればいいじゃない。」


笑輝は、ニヤッと意地悪く微笑む。


「俺は涙の寝相の悪さを知ってるから。」


カァ〜っと涙のほほが赤くなる。


「やだっ、あたし寝相悪い?」

「何度、腹や足を蹴られたか。怪我する前に一緒に寝るのはやめとくよ。」


――恥ずかしいっ。ぜんっぜん知らなかった。


「だけど・・・」


笑輝は涙の髪を撫でる。


「寝付くまでは、同じベットにいよう。」


笑輝は涙の頬に触れ、キスをした。


◇◇◇◇◇


夜が明け、2人は一緒に出勤する。

涙はサロンに入り、開店準備をする。

未有も涙を心配しながら準備を進める。

今までにない緊迫した朝だった。


明日香の職場でも、涙の話題が出ていた。


「涙がストーカーに合ってる?」


明日香は深に、昨日の事を話した。

深はホテルで見かけた涙の姿を思い出した。


――アイツ、何かヤバい事してるんじゃないか・・・


「阿川君、次のイベントの代表の方との打ち合わせ、来月の20日でどうかしら?」


中村が、書類を渡す。


「ああ、いいよ、それで。建築会社、山崎慎太郎さんか。」


深は名刺を見る。











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