第9話 心情

【優奈 視点】


 高校一年生の頃、お兄ちゃんと恋人になった。


 お兄ちゃんと恋人関係になってから、色んな思い出を作った。

 休日にデートしたり、気になる飲食店で一緒に食事したり、家でイチャイチャしたり。

 本当に幸せだった。


 けど、お兄ちゃんが高校3年生に進級した辺りから、アタシ達の関係は壊れ始めた。

 アタシがデートに誘うと、「受験勉強したいから」と断られ、エッチに誘っても「勉強に集中したんだ。邪魔しないでくれ」と拒絶された。

 受験勉強に夢中で、全然アタシの相手をしてくれないの……。

 お兄ちゃんにとって大切な時期なのはわかってる。

 分かってるけど、けど寂しいよ……。

 たまに相手して欲しいよ。


 そんなときだった……。

 

「俺と付き合ってくれ」


 ある日、同じクラスのカズキくんが告白してきた。


 カズキくんの告白は嬉しかったけど、

 アタシにはお兄ちゃんがいるから告白は断った。

 けど、カズキくんは諦めてくれなかった。

 振られると分かっていながら、

 何度も告白してくるの。


「なぁ頼むよっ、俺を選んでくれっ。絶対お前のこと幸せにするから」

「……」


 告白される度に心が揺れて、気づいたらカズキくんの好意を受け入れてしまった。

 そう、最終的に拒絶できなかったの……。


「優奈ちゃんっ……」

「カズキくんっ……」


 カズキくんの部屋で熱いキスを交わし、

 服を脱がせ合う。

 全裸になったアタシたちは、ベッドの上で一つになる。

 行為が終わり、後悔の念が押し寄せてくる。


 どうしようっ、お兄ちゃん以外の男の子とエッチしちゃった……。

 お兄ちゃんにバレたら、怒られるっ。

 下手したら、お兄ちゃんに振られるかも。

 嫌だよっ、お兄ちゃんと別れたくないっ。

 ずっと一緒にいたいよっ。

 

 焦燥感に駆られているアタシに、カズキくんが話しかけてくる。


「優奈ちゃん、もう一回しようぜ」

「え……? け、けど」

「いいじゃんっ、もう一回気持ちいいことしよ。ね?」

「……」


 アタシの好きな人はお兄ちゃんだ。

 この気持ちは本物だ。

 なのに、またカズキくんを拒絶できなかった。

 気づいたら受け入れていた。

 

「優奈ちゃんっ、優奈ちゃんっ」

「カズキくんっ……」


 カズキくんに激しく求められる度に、快楽という電流が全身に走る。

 気持ちよくて、後悔や不安が浄化される。

 この瞬間だけ嫌なこと忘れられる。

 本当に幸せだっ。

 もっとカズキくんとエッチぃことしたいよっ。


「優奈ちゃんっ、中に出すよっ」

「うんっ、出してぇぇっ……」


 最終的に中に出された。

 中出しされちゃった……。

 お兄ちゃんにもされたことないのにっ。

 アタシ、何やってんだろうっ。

 けどっ、けどっ、お兄ちゃんが悪いんだよ?

 受験勉強に夢中で、全然アタシの相手してくれないんだもんっ。

 そうだよっ、お兄ちゃんだよ。全部お兄ちゃんが悪いんだよっ。

 もっとアタシの相手してよっ。

 なんで相手してくれないのっ。

 相手してくれないから浮気しちゃったんだよ?

 全部お兄ちゃんが悪いんだよっ。


 違うっ。

 間違ってる。

 お兄ちゃんは何も悪くない。

 悪いのはアタシだ。

 けどお兄ちゃんを悪人にしないと、罪悪感に押しつぶされる。

 今アタシが正気を保っていられるのは、お兄ちゃんのせいにしているから。

 そうしないと心が保たないよっ……。


 もしお兄ちゃんに浮気シてることバレたらどうしよう……。

 アタシ、フられるのかな? 

 アタシとお兄ちゃんの関係終わっちゃうのかな?

 そんなのヤダよっ……。


 カズキくんとエッチするのもうやめようかな?

 えぇぇ……そんなの無理だよ。

 だってカズキくんのお◯ん◯ん気持ちいいんだもん。

 あんなの一度体験したら、他のお◯ん◯んじゃ満足できないよっ……。

 たぶん、大丈夫だよね?

 お兄ちゃん凄く優しいから浮気がバレても、きっと許してくれるよね?

 だから浮気楽しんでいいよね……?

 ねぇそうだよね?

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