第20話
階段からすごい音がした。
オデが倒れていた。
「大丈夫か」
「大丈夫ですど」
オレは彼を抱え起こす。重くて力負けした。
「病院へ行こう」
「いいえ、大丈夫ですど。一段踏み外しただけだど」
「行こう」
頑丈なオデとはいえ、オレは心配だった。
オデを医者に診てもらった。
「過労です」
やっぱり。オレは思った。
いつ寝ているのかとずっと心配していたのだ。
「オーク種は持久力がある分、自分の限界がわかりづらいところがあります」
「大丈夫ですど」
「大丈夫じゃないから倒れたんでしょう」
医者に言われてオデがちぢこまる。
「睡眠時間は御主人が管理されるように。いいですね」
「はい」
待合室に戻る。
耳を切られた少年を見て、オレは裁判所でのことを思い出し足がわずかにすくむ。
「……試験日まであと三日もないど。勉強時間は減らしたくないど」
「試験当日に入院してもいいのか?」
「それは困るど」
「だったらオレの言うとおりにしろ」
診察料を払ってオレたちは帰った。
「オレが言ったら寝るように。いいな」
「わかりましたど」
夕食後、オレは勉強するオデを隣で監視することにした。
「どの程度進んだ?」
「一通り終わってあとは復習だど」
「苦手なところはあるか?」
「刑法を攻略したいど」
「わかった。時間を決めて集中しよう。二時間したら無理せず寝るんだぞ」
オデが不満そうに眉根を寄せる。
「主人の命令だ」
オレは言った。
オデはうなずいて、ノートに向かった。
ふと、オレは椅子の上で目を覚ました。
時計を確認する。一時間も経っていない。
情けないことに先にオレが寝てしまっていたようだ。
集中するオデの横顔が見えた。
「………」
オレはそれを見守る。
時計の針が進む。監視から二時間が経った。
「終わりだ。もう寝ろ」
「あと少しだけだど」
「駄目だ」
オデの肩を叩いて促す。
彼はしぶしぶ立ち上がってベッドに横たわった。
「問題文が浮かんで眠れないど」
「寝ろ」
オレは少し考えて、言った。
「子守唄でも歌うか」
オデが首を動かして、顔だけこちらに向ける。
「そこまでしてもらうほどではないど」
オレはすこし恥ずかしかった。
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