第14話
20××年4月4日 12時20分
「何か嫌な感じだな…」
マンションの散策を再開していた誠二の足が止まる。
(待ち伏せか?人の気配がする)
誠二は前回の散策で鍵が掛かった場所を1つ1つ確認していた。その帰り道で必ず105号室の前を通らなければならない。だからこそ誠二はその周辺にだけは特に気を張っていたのだ。
(妙な物音が中から聞こえた…武器を構えてる可能性がある。俺を殺る気かもな)
「…はあ、疲れたぜ~今日はこの部屋で最後にしよう」
誠二が体をドアの外側に隠してからゆっくりとドアを開ける。
「死ね!!」
その瞬間にドガァッ!!と金属製のバットが地面に叩きつけられる。
(武器は金属バット。年は俺と同じくらい。くすんだ金髪の髪。血走って充血した目。栄養不足の影響か顔色は悪い。目的は強盗殺人の線が濃厚ってとこか)
「ちいっ!ダルい事しやがって!!おとなしく死んどけよ!!」
「…っ!?」
男が正面から突っ込んでくる。だがそれを黙って見ている誠二ではない。誠二もまた足を踏み出し前に出る。男の金属バットと誠二のシャベルがちょうど鍔迫り合いのような状態にもつれこむ。
「あ!?」
「しっ…!!」
誠二が男のバットを右側に弾き飛ばし、その反動で男の左足部分をシャベルで叩き付けた。
「ぐああああああああ!?」
「おらああああああああああ!!」
シャベルを正面に抱え、玄関先で苦悶していた男に全力のタックルを食らわせる誠二。加速した成人男性の重量は半端ではない。男は予想以上の勢いでリビングの奥へと飛んで行く。
「ぐあああっ!?」
「あああああああああああああああああああ!!」
誠二は止まらない。男に追撃を食らわせるべく全力で走り出す。
「くたばれ!!」
全体重を乗せて男の顔面を狙いサッカーボールキックをぶち込む誠二。
「ぐぐっ…!?」
だがこれは失敗。男も流石に顔面を狙われるのは理解していたようだ。両手でしっかりとガードされてしまう。
(頭部を優先的に守ったな。何かの経験者か?)
男と誠二が距離を取り立ち上がる。
(右腕部分が不自然にブラブラと揺れてる。あれは骨折してるな。当然と言えば当然の話ではあるが)
足の力は腕の力の約3倍。これに加えて速度と体重の力も加え誠二は攻撃した。生身の腕で受け止めて無事で済むはずがないのだ。
金髪の男と誠二が正面から睨み合う。圧倒的な暴力の雰囲気。剥き出しの殺意がこの場には充満していた。
(世界はもう壊れちまってる。今この瞬間は暴力こそが真実だ)
(殺るか殺られるか。それしか選択肢が無いのなら…俺は殺る方を取るぜ)
殺しを前提とした戦い。その事をごく自然に受け入れる誠二。何故ならばこの室内に足を踏み入れた瞬間にはもう、彼はとっくに覚悟を決めていたからだ。
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