第10話
「正面のドアの前に来い。そこで食料を分けてやる」
「…了解」
少女の姿が消えたのを確認してから誠二も行動を始める。
「まったく。仕方がねえな…」
誠二が冷凍庫から3日分の食料を取り出し袋に詰める。
(先行投資だ。せいぜい恩を感じてくれ)
誠二が食料を持ちドアの外に出ると、既に少女が待機していた。
「さて、話を聞かせて貰おうか?」
「…ん」
20××年4月1日 21時00分
「なる程。まあそうなるよな……」
誠二が少女から聞いた話を脳内でまとめ始める。
(近所のコンビニは半グレ共が占拠。スーパーでも争いが勃発か)
「…正直、怖くてお店には入れなかった」
「そうか。まあそれはそれで正解だったかもしれないな」
「…?」
少女が不思議そうな顔をしていると、その怒号は聞こえ始めた。
「てめぇ!?何噛みついてんだあああああ!?」
「きゃああああああああああああああああああ!?」
「おいっ!?何してんだあんたら!?」
誠二は驚くことなく周囲の光景を見回し始める。何かが壊れるような音、誰かの悲鳴、奇声。大きなサイレンの音がひっきりなしに鳴り響く。
「始まったな…」
「……」
「予想よりも早かったな。てっきりこの周辺は明日の昼頃までは大丈夫かと思ってたんだが」
人が人に噛みつき、次々と死体が動き始める。その地獄のような光景をまるでゲームを楽しむかのような表情で見つめる誠二。その姿には流石の少女も言葉を失っていた。
「さてと、情報提供に感謝する。そんなわけで3日分の食料だ。こいつを持ってけ」
「…ありがと」
「ああ。それと今夜はしっかりと施錠しといた方がいいぞ。悪いやつらがドアをブチ破って入ってくるかもしれないからな~」
ヒラヒラと手を振りながら誠二は自分の部屋へと戻りドアを閉めた。施錠とチェーンロックがしっかりと効いているのを確認し、武器を持ちながら部屋の中心部へと腰掛ける。視線をテレビに向けながら、誠二は遠くから聞こえる悲鳴や怒号を警戒し続けていた。
20××年4月1日 23時55分
「死ねえぇ!死ねえぇ!死ねえぇ!死ねえぇ!死ねえぇ!死ねえぇ!」
「痛えよぉおおおお!?痛えよぉおおおお!!」
「……」
日付がもう少しで変わるという時間。本格的に騒動が始まってから約2時間程が経過していた。
「こっちに来るなああああああああ!?」
「何なんだよ!?頭おかしくなっちまったのか!?」
同じマンション内のあらゆる場所から怒声や悲観の声が上がっていた。ドタバタと大暴れする音も聞こえてくる。
(外の様子は…)
誠二が窓から外を確認する。二人の人間が口論をする姿が見える。
「あんた、子供に暴力とか正気かよ!?」
「お前バカか!?あれは人間じゃねえよ!!」
(……げ…)
誠二の目が遠くを彷徨う大量のゾンビ集団を視認。即座に窓からテレビ前へと戻る。
(あんな数、もうどうしようもないだろ……)
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