第11話
朧気に今後の行動方針を誠二が考えていると、ドンドンドン!と、自室のドアを叩く音が誠二の耳元へと聞こえてきた。
「おい!空いたか!?」
「クソ…!ダメだ。この部屋はしっかり施錠されてる!」
(……マジかこいつら)
おそらく空き巣目的の行動と誠二は判断し、警戒レベルを一気にMAXへと引き上げる。仮に男たちが無理やり敷地内に侵入した場合一切の容赦をしないという厳戒態勢だ。
「…仕方ねえ。別のマンション行くぞ」
「ああ。オートロックじゃないマンションやアパートなんざ腐る程あるからな」
(……)
男達が去っていく姿を誠二はインターホンの映像でじっと監視していた。
「……ふぅ」
誠二が安堵の息を洩らし、武器を床に置く。
「あいつら…イカレてやがるな……」
インターホンの映像。そこには誠二の部屋のドアの前に1体の死体が転がっていたのだ。
「あいつらが殺ったのか?…強盗殺人とか怖過ぎだろ……」
このままでは外に出れない。その事に頭を悩ませていると、更に不幸は畳みかけてきた。
「……げっ」
転がっていた死体が動き始めたのだ。
「おああああああああああああああ…!!」
ガンガン!と、ゾンビが誠二の部屋のドアを叩き始める。
「…クソが」
長い夜は、まだ始まったばかりだったのだ。
20××年4月2日 8時00分
パンデミックが起きてから1日。外では相変わらず物音が聞こえていた。
「おああああああああああああああ…!!」
ガンガン!と、相も変わらずゾンビが誠二の部屋のドアを叩き続けていた。
「クソゾンビが…」
(これだと外に出れねえな……)
何か対策を講じるか、それとも静観するか。誠二はその対応に悩んでいた。
(今動くのは危ないよな。もう少し様子を見よう)
食料は十分にある。籠城しつつも誠二は機会を伺う事に決めたのだ。
20××年4月3日 8時00分
「…ゾンビの気配が消えたな」
ドアを叩くあの音が聞こえなくなったのだ。
「……」
「…今がチャンスだな」
誠二は安全確保に向けて行動する事を決めた。ゆっくりとドアを開け玄関から外に出る誠二。
(サイレンの音も喧騒も聞こえない。静かだ)
部屋の外は奇妙な程の静けさを保っていた。
(テレビの情報だと、今は学校や市役所とかが緊急の避難場所になってるんだったか?みんなそこに避難したのかもな)
「……居るな」
張りつめた誠二の耳が足音を聞きつける。予想通り目先の階段から這うように一体のゾンビがにじり寄ってきていた。
「ん…?」
(あの人は…確か一番奥の部屋の人だったか?一体何があったんだ……)
ゾンビの片腕は引きちぎれ、腹部には角材のようなものがめり込んでいた。
「まあ…どちらにせよ排除するだけだけどな」
誠二が片手に持ったシャベルを構え直す。安全に外出する為には目の前の障害を撤去しなければならない。
「さて…お片付けの時間だ」
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