狭間を駆けよ異世界旅人

帽子の男

プロローグ『門』

「……起動」


 一人の青年が廃墟の中央にある円形のプールのプールサイドにある端末に触れる。


 ガコン……という鈍い音と同時にプールの中にある液体がゆっくりと掻き回され始める。


 それをプールサイドから確認した青年は足元に落ちているリュックサックの中からボロボロの本を拾い上げ、中からこの世のものとは思えないほど美しい羽を1枚、プールの上でつまみ上げる。


 彼は祈るような表情で、その羽を手放すと、その羽はひらりひらりと、プールの上を舞いながらも水面へと吸い込まれていく。



 そして、水面へと着いたその瞬間だった……



 凄まじい光に包まれたと同時に、衝撃波が廃墟の中に響き渡り、青年はでんぐり返しのように数メートル吹き飛ばされる。


「畜生……やっぱり、魔術なんてッ!」


 痛みからか、悔しさからか青年の目から涙が1滴流れ落ちる。


 そして無慈悲にも、作動した装置の音が小さくなって行く。


「畜生っ!!!」


 青年は目元を擦ると近くに転がっていた瓶を掴むと、力任せにプールに向かって投げ込む。


 その瓶は端末に衝突した後に、中の液体を撒き散らしながらプールに落下していく。



 それから数秒後、装置は徐々に速度を落として遂には止まってしまう。


 青年は深いため息を着いた後に、床にちらばった、色んな液体が入った瓶やら携行食糧を一個ずつ回収し、自分のリュックサックへと戻して行く。



 全てを戻し終わり、リュックサックを持ち上げると蚊の鳴くような声で呟く



「……ごめんなさい。部長」


 そう言ってプールに背を向けた瞬間だった。



 ガコン……



 ゆっくりと反対向きに掻き回され始める液体。


 そして次の瞬間、凄まじい光に包まれ、衝撃波が来ると思われた、


 しかし、青年が気付いた時には身体はプールの上を舞っていた。



「あっ⋯⋯」



 息をつく間もなく、青年は美しい虹彩を放つ液体へと落下して行く。


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