深度99999+ Emptiness Horizon(無の地平線)
〔Depth Level〕340,282,366,920,938,463,463,374,607,431,768,211,456 (推定)
〔Threat Rank〕Destructive
〔理解度〕2% (暫定)
【概要】
当エリアはShadow Worldにおける事実上の最深部であり、1つの終点だと考えられています。
当エリアは、19XX年にエドモンド調査員によって初めて存在が確認されて以降、現在に至るまで1度だけ存在が報告されています。
エリア内部は視界いっぱいに真っ白な空間が広がっており、辿り着いた放浪者の前に「The end :-o」と記された木製の立て看板が出現することが報告されています。
以下、当時の音声記録です。
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音声記録1
19XX年
通信対象:エドモンド調査員
[記録開始]
本部研究員(以下、本)「こちら本部、いかがなさいましたか」
エドモンド調査員(以下、エ)「よかった、通信は繋がるみたいだな、こちら調査員のエドモンドだ、未確認エリアに到達したんで報告したい」
本「承知しました、音声記録は既に開始しています。詳細の報告をお願いします」
エ「あぁ、俺が着いたのは視界の端から端まで真っ白なエリアだ。ただ、目の前に『The end :-o』って書かれた木製の立て看板が1つある。もしかしたら、ここの何処かにこのクソッタレな世界から出るための出口があるかもしれない。これからこのエリアの調査を始める、通信はそのままで頼みたい」
本「承知しました。エドモンドさん、貴方はどのようにしてそこへ辿り着きましたか?」
エ「あぁ、俺はDL◾︎◾︎◾︎◾︎の調査を終えて次のエリアに向かおうとゲートに向かった。そしたらそこに通常のものとは別に白いゲートがあったんだ、そして調査のためにそこに飛び込んだ。そしたらここに辿り着いちまった」
本「はい。ありがとうございます。ではそのままそのエリアの調査と報告をお願いします。どんなに些細なものでも、あなたが感じたことでも構いません」
(中略)
記録開始から1時間27分が経過。
エ「あ、あ。まだ通信は繋がってるか? あれからだいぶ歩いたと思うんだが、一向に景色に変化が見えない。あのふざけた看板が見えなくなってから、白以外の色が見えない。SWの中でも特段訳がわからない。俺は前に進めているのか? 徘徊者どもの気配すらないなんて」
本「大丈夫です。通信は安定しています。どうか諦めないでください」
その後、82分間エドモンド調査員の少し荒い呼吸音のみが記録される。
エ「なぁ、研究員さん。なんか話してくれ、ここを無音で歩くのは相当精神にきやがる」
34分間他愛のない雑談や冗談が交わされる。
エ「あぁ、研究員さん。さっきからなんとなく察してたが、やっぱここはダメだ。多分だがここは本当に終わりなんだ。ここには『無』がある! いや、それ以外の全てが無い!! もう限界だ、頭がおかしくなりそうだ、水や食糧も多くない、俺が野垂れ死ぬのも時間の問題だ!」
エドモンド調査員が錯乱状態に陥る。約17分後、再び落ち着きを見せる。
エ「すまねぇ、取り乱した。辿り着けるかわからないが、俺はこれからあの入り口に戻ろうと思う。もしかしたら戻りのゲートが現れるかもしれない」
本「承知しました。通信はこのまま維持しておきます。何かわかったら引き続き報告をお願いします」
44分間他愛のない話と、エドモンド研究員の疲労が混じった呼吸音が記録される。
エ「くそっ、通信機のバッテリーがもうねぇ。多分これが最後の通信だ、このエリアには誰も入れさせるな、俺みたいになる。本当に何もないんだ。それから■■■に『約束守れなくて悪かった』って伝えてくれ。それから、それから……くそっ予備のバッテリーを持ってくりゃ、いやそもそも安直にゲートに飛び込まなきゃっ。ちくしょう、死にたくねぇよ。母さん、助けてくれ……あぁそうだ、研究員さん、色々情けねぇこと聞かせてすまない、長々付き合って来れてありがとよ、もし生きて帰れたら一緒に酒で」
[記録終了]
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音声記録2
20XX年
通信対象:調査員ウィリアム氏
[記録開始]
本「こちら本部です。いかがなさいましたか」
ウィリアム調査員(以下、ウ)「こちらウィリアム。以前記録にあった白紙の世界だったか? そこに流れ着いちまった」
本「まさかとは思いますが、報告にあった白いゲートに?」
ウ「バカを言うな、あの記録は俺だって確認してる。そんな自殺行為はしない。俺はDL5の丸鏡に触れたらここに辿り着いちまったんだ」
以下、エドモンド調査員の物と同様の報告が上がり、バッテリー切れにより通信が終了した。
[記録終了]
両名ともに、当エリアにて餓死したものと思われます。
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以上の出来事から、当エリアへの入り口と思われる『白いゲート』への接触はS13全会一致により禁止されています。
また、ウィリアム調査員の報告にあった『丸鏡への接触による侵入』に関しては、ランダムなエリアへの転送効果を有する全ての通用口にその可能性があるものと推測されています。
上記の2例以降、現在まで存在が確認されていないのは不幸中の幸いであると言えるでしょう。
S13をはじめとしてSWST全域でランダム転送型の通用口への接触への対策を思案していますが、有効な手段は確認されていません。
【行き先】
存在しないものと推測。
【戻り先】
存在しないものと推測。
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