第肆話 陽炎
八島ともう一度握手し、八島が拠点を案内すると云って、八島と私で、拠点を回った。
歩きながら会話した。
千歳「このバーは、陽炎のみんなの憩いの場だ。食堂はほとんどの人が使用している場所で、医療室は基本人はいないが、と云うより、居てほしくないが、医者の腕は一級品だ。そして、銃保管庫。ここには、ピストルやアサルトライフルやスナイパーライフルやショットガンやロケットランチャーや爆薬や大量の弾丸がある。あとは、訓練場がある」
私「訓練場には案内してくれないのか?」
千歳「使いたいのか?」
私「可能ならば、陽炎の武術の練度が気になってな」
男「ボス。義手の修理が完了いたしました」
千歳「分かった。上終さんに渡すんだ」
手渡され、感謝を伝えて装着した。
千歳「きっと、1位2位を争う武闘派が訓練場にいるだろう。気になるのならば、タイマンを申し込めば良い」
訓練場は、古き日本の道場をこの空間に落とし込んだような場所であった。訓練場に入ると、ちょうど数枚の板を容易く蹴り壊す、百七十センチの老人が居た。
老人「おや、新入り…のようですが、その佇まい、歴戦の猛者ですなぁ。う~む。私の所見が正しければ、元ソルジャーかな? しかも、初期のソルジャーでしょう。初期のソルジャーは寿命を延ばされ、肉体の老化が遅くなり、そして、現代のソルジャーと比べて、肉体強化が現代の比じゃない。佇まいもそれが理由でしょう」
私「……ご名答。名前は何と云う? 私は上終勇と言う」
老人「私か? 私は「北竜 誠」《ほくりゅう まこと》と言う。年は70歳。老人同士、仲良くしようじゃありませんか」
私「宜しく」
誠「宜しく願う。さて、何の用件で来たのかね?」
私「ここに、陽炎で一位二位を争う武闘派が居ると聞き、やって来た。北竜、お前がその武闘派か?」
誠「さぁ?(突然雰囲気が変わり)気になるのならば、それはうぬが確かめよ」
北竜はそう云うと、構えた。私も構えた。構えながら、中央へ歩いた。
距離を一mに縮め、踏み込んで右アッパーを放つ。アッパーが空を切ると、左ストレートを打ち込み、北竜右腕で滑らすように防ぎ、後ろ回し蹴りを放った。北竜は軽く吹き飛んだ。
誠「ボクシングとテコンドーか? 随分と強靭な蹴りだ。やはり、生きていたか」
そう云うと、天高く飛び、踵落としを仕掛けてきた。避けたが、畳は壊れた。北竜は着地してすぐさま左足で穿つように蹴った。私はその足を掴み、引っ張り、胸を殴るが、左手で手首を掴まれて、みぞうちを殴られた。四秒ほど悶えると、その間に、右足を蹴られて、両足は地面に膝を付いた。
誠「私の格闘技は我流だ。そして、私はソルジャー程ではないが、強靭な肉体を持っている」
その頃、食堂やバーで、1人の人間が「今訓練所で、北竜さんと元ソルジャーが戦ってるぞ」と叫んでいた。
数十秒が経った。
顔を幾度と蹴られて、口には血が滲む。呼吸がいささか荒くなってきた。私の顔を蹴ろうとする膝を受け止め、立ち上がり、食らう相手にとって底なしの恐怖を込めた、尋常ならざる力の拳を北竜の顔の寸前に打ち付けた。北竜は手を放し、距離を離した。血が滲んだ唾を飲み込んだ。
双方が強靭な蹴りをしようとした時、「そこまで!!」と云う八島の声が響いた。
千歳「北竜さん! 戦うのは良いですが、やりすぎないでください! 勇さんも!!」
誠「いやぁ、すまんなぁ。ついつい……な?」
私「すまない。これほど強い者と戦うのは久しいが故に、楽しくなってな」
その後、医療室で治療を受けた。
第肆話 終
続
一口解説「昇華の槌」
模様が刻まれた火造槌。この槌で作る、又は鍛えなおすと、なまくらであればオーパーツになり、オーパーツを鍛えなおす場合は神器へと昇華する。新たに作る場合は、使い手によって変わる。
昇華の槌は、名刀蜻蛉に斬られ、昇華の槌は天下取りの神器の座を奪われた。
天下取りの神器 国芳九十九 @Kabotya1219
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