第参話 初志貫徹の盗人

中央の巨大なビル群から随分と離れた所にある、廃墟同然の2階建ての家が俺の家である。2階は完全に崩れている。1階に敷いてある薄汚れたぼろ布に横になって寝ている。今や家族は誰一人生きていない。俺には天下取りの神器を集めて、憎き龍宮カンパニーを潰し、この世を平等にするという信念を幼時から24歳になった今でも、一度も変わる事無く、生きてきた。俺は平等にする為になら、この手を汚す事を厭わない。故に、俺は「打倒龍宮カンパニー・打倒政府」を目標とする組織、「陽炎」に入った。(陽炎の理由は組織が所有する神器が竜を倒した伝承を持つ特殊な槍)

 陽炎から貰ったピストルを隠し持って外へ出た。今日はずっと雨が降るそうだ。陽炎の拠点に入ると、「井上 浩二」さんが話しかけてきた。「君が初霜ハツシモ…初霜…下の名前が…」と云って、持っている書類を見て云った。「え~っと、「初霜 直哉」《ナオヤ》…だね。予定さえ無ければ、私と今から中央寄りの所に行かないか?」と云われて、俺は「特に予定は無いので、行けますよ」と答えた。

歩いて中央寄りにある、露天商が乱列した所に着いて、食事を済ませると、少し離れて浩二さんが、「あそこに特徴的な髭を生やして、ロングコートを着ていて、麺類啜っている義手のソルジャーが居るだろ? あいつの、財布を盗んで来るんだ」と云った。俺は「どうしてですか?」と聞くと、「あいつは何かある。俺の目と感が云ってる。そして、君はスリが上手いと聞く。ソルジャーの免許証は価値が高い。売れば一定の値段になるし、作戦でも使える」と答えた。渋々、別の人にぶつかり、財布を盗むと、案外気づかなかった。浩二さんの元に戻った。

(勇視点)そばを食っていると、若い男に財布を盗まれた。男は少し離れた所の路地に入った。そばを食べ終え、食器を返し、男の方に行くと、若い男と皺のある男が居た。男達に言った。「気づいていないと、思ったか?」と。すると、男たちは驚いた。

皺のある男「す、すまない…。財布を返そう…。ほら、初霜、渡すんだ」

皺のある男は怯えて云った。

若い男から手渡された。

私「名前は何というんだ?」

皺のある男「井上浩二です…」

私「若いのは?」

若い男「俺は、初霜直哉です」

私「お前たちは、何かの組織に入っているのか?」

浩二「私たちは龍宮と政府を倒すことを目標としている組織、陽炎に所属しています」

私「初霜もか?」

浩二「は、はい」

私「なるほど…。陽炎には何かしらオーパーツを所有しているか?」

浩二「私が知る限り、神器が2つと、オーパーツを20個ほど所有しています」

初霜が井上の耳に小さな声で何か云った。なんと云ったのかは分からない。井上が初霜に何か云うと、初霜が少し驚いた。

今の私は追われている身。沼田にすぐに襲われるとは分からなかった。陽炎は両方を打倒する事が目標だ。利害は一致する。

私「私もその陽炎に入っても良いか?」

浩二「え? えっと、ボスに聞いてからで良いですか?」

私「承知した」

井上は少し離れた所で電話した。

数分経つと、初霜が口を開いた。

直哉「あなたが本当に、伝説のソルジャーなら、あのオーパーツ」

浩二「上終さん、許可が下りました。拠点に案内します」

私「頼んだ」

初霜に密かに一言云った。「小僧、貴様の聞きたい事は、どこで知ったのかは知らんが、死ぬ覚悟が出来たら聞きに来い」と圧を掛けながら云った。

「陽炎」本部

少し大きめの家の地下に入ると、そこはコンクリートで壁や床や天井が作られて、様々な機械があった。廊下を進むと、バーや食堂や医療室や銃を多数収容してある部屋や少し長い廊下の先に訓練場があった。最奥にある書斎には、キリっとした顔立ちの女性が椅子に座って足を机に置き、上を向いて眠っている。

浩二「ボス! 上終勇さんを連れて来ました!」

ボスと云われた女性は、目を覚まし、「あ~」と云いながら首を回して姿勢を正して椅子に座りなおし、少しぼさついた髪を直して云った。

女性「私の名前は、「八島 千歳」と言う。あなたが、かの上終さんですね」

八島はそう云って、握手した。

千歳「その義手壊れていますが、修理しましょうか?」

私「良いのか?」

千歳「もちろんです」

八島に呼ばれて入って来た人物に義手を渡した。

千歳「さて、本題に移りましょう。上終さん、あなたは龍宮や政府と手を組み、陽炎を一網打尽しようとしている訳では、無いのですね?」

私「私は龍宮に蜻蛉を奪われて東京に来た。そして、国務長官の沼田にも襲われた。どうせ、どこかに噓発見器の類のオーパーツがあるのだろう? 嘘をつくことはできん」

千歳「お見事。確かに嘘発見器がありますが、反応がありません。ようこそ、革命組織「陽炎」へ」


第参話 終

つづく


ゲーム風一口解説「失われた天下の神器」

天下取りの神器は、基本変わる事は無いが、神器中には神器さえも破壊する物がある。故に、天下取りの神器が変わった事がある。名刀「蜻蛉」は前回の戦いの際に、一つの神器が蜻蛉で破壊されたが故に、蜻蛉が新たに天下取りの神器になった。「陽炎」は大昔は天下取りの神器の一つであった。だが、紛失し、天下取りの神器の座を下ろされた。蜻蛉に破壊された神器は、「昇華の槌」である。主に陽炎や昇華の槌の様な物を失われた天下の神器と云う。

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