ラビリンス

第8話

そのワールドアナウンスが聞こえると緊張が解けその場に座り込んでしまう。じわじわと達成感が沸き上がってくる。死に戻りしなくて良かった、最終ボスで死んだりしたら再挑戦とか無理だろう。100階層攻略と攻略失敗はあるけどギブアップの記載はなかったよな、心折れたらもう無理ゲーだろう。

　「やったーーー。」　

　「100億Gゲット」　

　「地球に帰れる。」

等々の声が聞えたと思ったら4人の走ってくる音が聞こえて圧し掛かかられた。潰れる助けて神様。4人が喜んでいるのを背中の上で感じる。ホントやめて。お願い。

　”パンパン ”　

手を叩く音で4人が我に返る。助かった神様ありがとう。

　”パチパチパチパチ "　

拍手が聞える。

　『おめでとう。いい戦いを見せて貰った。』

　「ありがとうございます。」　　

　「「「「ありがとうございます。」」」」

　『約束通り賞金100億G進呈するよ。確認しておいてね。』

　『何か質問ある？答えられる内容なら回答するよ、無いなら表彰式とかは無いからそのまま亜空間に送ってあげるよ。準備が出来たら地球に帰還するといい。』

　「あ、じゃあ俺いいですか？さっき思ったんですけど ”ギブアップ ”て選択出来るんですか？今回挑戦してみて最終ボスの黒ドラゴンで死に戻りしたら心がポッキリ折れるんじゃないか。再挑戦できそうにないと考えてしまったんですよ。プチっと潰されたら絶対トラウマものです。迷宮世界次元に精神科病院が開設されればOK？ でも時間制限あるから回復は無理？ PTSDが状態異常扱いなら状態異常回復薬でリカバリー可能なんですかね？ どうです？ 」

　『うーん。そうだね。ギブアップは面白くないから状態異常扱いにしようか。あくまでこの世界限定になるけど。』

　『後でワールドアナウンス流しとくよ。』

　「ありがとうございます。」

　「次は私いいですか？」　

　「私も。私も。」

　『どうぞ。』

　「クリアして地球に帰還した人が再挑戦することは出来ますか？」

　「賞金の世界通貨はどうやって調達しているんですか？」

　「迷宮世界次元への移住は出来ますか？」

　「どうやって神様になったんですか？」

　「どうすれば不老不死になれますか？」

　「癌は状態異常回復薬で治せるんですか？」

　「多い多い、一遍に聞きすぎ。」

　『まあ大丈夫だよ。　再挑戦は可能、補充希望者に選ばれるかどうかだけど。　　世界通貨調達については禁則事項です。　　移住は考え中、移住者の役割仕事を考えなきゃいけないからね。地球みたいにベーシックインカムは想定してないからね。働かない人間はいらない。この世界ではね。　　　神になる方法も禁則事項です。　　　人間は不老不死にはなれない、神になるしかないね。　　　癌を直す方法はあるけど提示はしない。状態異常ではない。』

　『こんなところかな。あとは？』

　「思いつくのは以上ですかね。質問受け付けてくれるなんて思わなかったので。」

　「そうそう。」

　『分かった。じゃあお別れだ。亜空間内に転送するよ。地球に帰る準備が出来たらタブレットから操作してくれ。それで手続き完了だ。』

　『あ、そうだ。アキラくん。アイテムボックスにいつも食べてる料理入ってないかい？ 有れば分けて欲しいんだが。君達が美味しそうに食べてるの見てて食べたいって思っていたんだ。』

　『ちゃんと報酬は出すよ。どうだい？ 』

　「ええと、アイテムボックスに入ってはいますけど食べるんですか？」

　『そうだよ。食べなくても構わないんだけど美味しそうに食べる君たちを見ていて食べてみたいと思ったんだ。』

　「わかりました。差し上げます。どこに置きますか？」

　『ありがとう。それじゃこのテーブルの上に置いてくれるかい？ 』

大きいテーブルが現れたのでアイテムボックスに入っている料理を並べていく。全部並べ終える、置ききれなくてもう一つテーブルを出してもらった。数えていなかったがこんなに入っていたんだな、アイテムボックスの中身を管理できていない自分にドン引きする。無駄が多すぎる。

　『こんなに貰えるとは、ありがとう。いま代金入れといたよ。楽しみができたよ。』

　『じゃあ、亜空間に転送するね。』

目の前の風景が切り替わる。亜空間内に戻ってきた。四姉妹に連絡を取り管理棟で打ち上げをした。知り合いも集まって祝ってくれた。二日ほど日にちを使い地球帰還に備えた、冷蔵庫の中を使い切るのに掛かった時間でもある。俺食材買いすぎ。

タブレットを操作して帰還を選択する。迷宮世界次元の亜空間内から地球日本にある自分の部屋に戻ってきた、久しぶりの風景に懐かしさがこみ上がる。

四姉妹に連絡を取ろうと自分の端末からタブレットを起動させる。見ると見慣れないアイコンがあり点滅しているのに気が付く。”？ ”何だろうと選択するとメッセージが浮かび上がる。

　『　無事帰還できたようだね。おめでとう。最後の質問に今まで聞かれなかったことが一つあってね、面白そうなので採用してみた。希望するなら参加してほしい。地球上で事前にパーティーを組むのも OK だよ。楽しみに待っているよ。』

神様からのメッセージだった。え？と少し呆けてしまう。その間にメッセージが消えて新たなるアイコンが出て点滅している。恐る恐る選択する。

　　”迷宮世界次元に新たなる迷宮が誕生しました。

　　　表の迷宮を踏破した者のみに参加資格があります。

　　　全200階層、攻略失敗150回、賞金500億G、難易度激ムズ。

　　　参加しますか？　”

　　” Ｙ　／　Ｎ　 ”

地球に帰って来たばかりなのに気持ちの高まりをおさえられない。

　『俺の戦いはこれからだ。』

終