第7話
俺たちは遂に100階層に到達した。この扉の向こうにボスがいる。
「さぁ、行くぞ。」
「「「「了解。」」」」
扉に手をかけ押し開く。開く。開く。開かない。
「おい。」
思わず声を上げる。開けられて当然と思っていたが鍵が掛かっているようだ。扉に蹴りを入れると後ろから肩を叩かれた。
「アキラ、扉右にインターホンが付いてる。」
「え?」
ミツコに声をかけられ扉右を見ると本当にインターホンがあった。しかもモニター画面付きのやつだ。
「え?」
後ろを振り返ると4人とも頭痛が痛そうな顔している。
「何で?」
ヨウコが可哀そうなものを見るように声をかけてきた。
「100階層挑戦は神様が必ず観覧したいから ”アポイントメントを取って、入室前にインターホンを鳴らすようにすること。” って100階層注意事項に記載されてたでしょう?読むように言ってたのに忘れたの?ほらココ。ちゃんと見なさい。」
ミツコが自分のタブレットを起動可視化させて俺の前に持ってきた。どれどれ、・・・・・・ホントだ。一番最後に書いてある。
「ごめんなさい。」
「「「「はぁ。」」」」
呆れて何も言えないようだ。
「アポイントメントは取ってあるんだよな。」
「勿論よ。」
”んんっ。”
のどをならしインターホンを押す。
”ピンポーン ”
『はい、神です。』
「あ、神様?オレオレ。」
”スパーン ” ”スパーン ”
「「気安く声をかけるな!!!」」
ハリセンが二連発で飛んできた。
「神様。申し訳ございません。」
「ごめんなさい。」
謝罪して頭を下げる。
『あぁ良いよ。最近の君達面白いよね。80階層のボス戦は笑わせて貰ったよ。今開けるよ。』
”ピッ、ガチャ ”
開錠された音がした。今度はちゃんと入れそうだ。扉に手をかけ押し開く。音もなく開いた。100階層はこれまでのボス部屋に比べてかなり広い、中に入ると部屋の真ん中まで歩いて行く。神様がいるのかと思っていたのだが誰もいないモンスターもいない。キョロキョロと見回していると後ろから声をかけられた。後ろを向くと神様?らしき人物が立っていた。入ってきた扉はいつの間にか閉じたようだ。
『こんにちは。よく来たね、自分がこの世界の神だよ。100階層挑戦者は久しぶりだ待ちわびたよ。』
「こんにちは。普段はお世話になっております。今日はよろしくお願いいたします。」
挨拶をして深々と頭をさげた。
「「「「よろしくお願いいたします。」」」」
『うんうん。よろしくね。』
『では開始しようか。用意はいいかい?』
それぞれ装備を確認、タブレットを操作し練ってきた作戦通りの魔法をセットしていく。4人を見ると頷いてきたので神様に返事をする。
「準備完了です。始めてください。」
『うん。では始めよう。ボス戦は笑いは要らないからね。健闘を祈るよ。』
サッと手を振ると、神様の後ろにドラゴンが5匹姿を現す。神様の姿が消えていく。目の前に数字が現れてカウントダウンが始まる。
”5 ” ”4 ” ”3 ” ”2 ” ”1 ” ”0 ”
”始め。”
開始の合図と同時にドラゴンに向かって走り出す。ヒトエが中央で盾を構え「挑発」スキルを重ね掛けして使用。5匹のドラゴンのヘイトが強くヒトエに向く。残った4人は二人一組で両端のドラゴンに向かう。
魔法の効果範囲ギリギリまで近づきセットした魔法を連続して放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。最上位の魔法を5連続行使、悲鳴を上げて倒れてきたところを首に一閃。散々練習してきた斬撃を叩き込む。
”ザン” 一撃で叩き落し残心をとる。まず一つ。少し遅れて ”ズズン” と巨体が倒れる。
反対側でも同じように悲鳴が上がり首が切り落とされたようだ。ドラゴンが倒れる音がした。
一緒にこちら側にきたミツコはすでに次のドラゴンに向かって魔法を放っている。反対側のヨウコも同じようにしているはず。
二呼吸ほど遅れ俺も次のドラゴンに向かう。魔法をセットし三連続で放つ。
ミツコの攻撃でこちらにヘイトが向いていたようだ、魔法は確実に当てられたが怯まずに大きく口を開けて噛みつきにきた。
「ミツコ、頼むぞ。」
「了解。」
鼻ずらを狙って大剣の腹を叩き付ける。 ”グシャ” 肉が潰れる音がしてノックバックでドラゴンの頭が止まる。開けたままの口に向かってミツコが魔法を放り込む。爆裂魔法だ効果大だろう。尻尾の薙ぎ払いを警戒して間合いを取る。
真ん中の3匹は両端のドラゴンより強く設定されているらしい。事実、頭を吹き飛ばすことは出来なかった、口から血を流しているがこちらを殺す気満々だ。すぐさまタブレットから魔法をセット、ミツコに向けて頷くと駆け出す。
「フラッシュ。」
ミツコの声が聞えた。無魔法で足場を作り駆け上がっていく。肩口に向かって一太刀、切り付けると背中を駆け下りていく。大きく振りかぶり尻尾に向けて振り下ろす。今なら六割位の力で切り落とせる、スルリと音がするように刃筋が入っていき抵抗も無く大剣が通り過ぎて尻尾を切り落とす。
”???? ” 突然尻尾がなくなったと感じたのかドラゴンが振り向いた。
”えっ? ” て感じでドラゴンの二度見をみることができた。
”ギャオーーー!!! ” 怒りの咆哮を上げ俺に向かって噛みついてきた。
”ミツコ頼む。”
”了解。”
振り向いてこちらに噛みつこうとしていたドラゴンの腹下で爆裂魔法が炸裂。噛みつきの狙いが逸れて鼻ずらから突っこんでしまう。頭が浮いたところを狙い大剣を構え切り付ける。 ”ブツリ” と音がして首を切り落とした。体が倒れてくるのを躱しミツコに合流すると向こうの2人の確認をする。
「フタエとヨウコの様子はどうだ?加勢が必要か?」
「ちょっと待って。……うん。うん。わかった。 今終わったって。」
「じゃあ5匹目にいけるな。ヒトエも大変だろうから急ごう。」
「了解。」
5匹目のドラゴンに向かう。フタエとヨウコも合流するとヒトエに声をかける。
「遅くなった。どんな具合だ?」
「問題無し。躱すか受けるだけだから余裕。」
「「「「流石。」」」」
「とっとと片付けるぞ。」
「「「「了解。」」」」
5匹中では一番強いとはいえ5人全員でかかればタコ殴りだ。悲鳴を上げて倒れていく。止めを刺す。
流石に疲れた、4人も息が上がっているようだ。成る丈早く息を整えラスボスの登場に備える。
”ドラゴン5頭の討伐を確認しました。”
”最終ボスの召喚を行います ”
”5 ” ”4 ” ”3 ” ”2 ” ”1 ”
”ゼロ”
これまで見てきた中で一番巨大なブラックドラゴンが現れた。
”ラストバトル スタート”
咆哮を上げることも無く広範囲ブレスを吐いてきた。
「うえ。」
思わず声が漏れる。
「散開。」
ミツコの鋭い声が聞こえる。想定してきた通りにダッシュして散開するとブレスを躱し大剣を構え直し作戦通りの動きをする。俺は右脚を目指し疾走する。想像していたより太くて大きい。俺の攻撃は通じるのか?武者震いが出る。戦意高揚のスキルを選択、セット、使用。戦意が一段上がるのを感じる、これが最後の相手だ、持てる力魔法を全て叩き込んでやる。
「いくぞ。」
大廻することになったが足元に着いた、膝裏と脛どちらからいこうかと考えているとミツコから膝裏から尻尾のコンボの指示が来た。
”了解 ”
応答を返し脚の裏側にまわりこみ大きく振りかぶり大剣の腹を叩き付ける。”ガン ”と鈍い音がするが想定していた結果を引き出せなかった、また振りかぶり叩き付けるが同じ
”ミツコ、すまん重量が大きすぎるのか膝カックンが出来ない。効き目があるか分からないが脚の小指をぶっ叩いてみる。”
”了解。”
ドラゴンの末端神経がどんなものか知らないが人間なら効果覿面なんだ、他に方法が思いつかないし思いっ切り叩いてやる。ハンマーなら良かったのに俺は鈍器使いではないからな。
「せーーーの。」
”ガン "
衝撃を全て叩き込めるように大剣を振り下ろす。
・
・
・
”ギャーーーーーーーオォーーーーーーーー ”
効果覿面だったらしい。反応速度は著しく遅いみたいだが、こんな大きいドラゴンが柱の角に小指ぶつけて悶絶する場面なんて無いだろうし初めての感覚だったのかな。ちょっと聞いてみたいかも。
あ、ヤバい。こっちに倒れるかも ”蠢動 " すかさずスキルを発動、尻尾側に抜ける。ドラゴンの下敷きで死にましたじゃ死に戻った後で4人に説教して殺されそうだ。ヤバイヤバイ。
ドラゴンが倒れてきた。
”ドドーーーーーーーン ” 大地震が来たと思うような揺れだ。ドラゴンは右脚を抱えて悶絶してるちょっと可哀想なことことしたな、著しい罪悪感を覚える。
「ごめんなさい。」
深く頭を下げておく。さあこの隙に尻尾を落とさなくては。尻尾の根本を見る、ちょっと切り落とせる気がしない太さだ。どうしよう……よし報連相は迅速に。
”ミツコ、尻尾が太くて根本から落とせそうにない。半分くらいから切り落としでいいか? ”
”了解。それでいいわ。サイズ感は完全に見誤ったわね。とっととやっちゃって。 ”
尻尾の半分位のところに素早く陣取り、無魔法で足場を作り大剣を構え集中する。良し。いくぞ。
「せいっ。」
”ブチブチ "
音が聞こえる、下まで切りきるため足場を順次消し床につくまで大剣を振り下ろす。途中骨で引っ掛かりがあったが切断できた、切り落とした尻尾がビタンビタンと跳ね回っている。ドラゴンだよな?トカゲの切れた尻尾が動いてるは見たことあるけど、それだけブラックドラゴンの生命力があるという証拠なのか。
”みんな、悶絶しているうち倒すわよ。 ”
””””了解。 ””””
即座に頭周辺に集まり魔法と斬撃でタコ殴りボコりまくり、予定とはかなり違った展開だったが15分後ラスボスを討伐した。とても疲れた、帰って寝たい。
”戦闘終了。最終ボスの討伐を確認しました。 "
”おめでとうございます。新たなる迷宮踏破者が誕生しました。”
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