第6話

80階層を突破した俺たちは待機時間ギリギリまで休息を取り、身体、スキルの調整のために51-59階層を探索していた。

80階層での尻尾ぶった切りの検証、81-89階層に向けての準備にじっくりと時間をかけるつもりだ。あれが任意で発動出来れば攻略が容易になる。まぁ残心が出来なければまたお笑いコントを繰り広げてしまうのだが。

地球での反響はかなり良かったようだが、笑いをとりたいわけじゃない。残り20階層まできたことだし用意万端で探索することで意見を統一した。






「シッ。フッ。セイッ。・・・・・ヤァ。」 

モンスターを切り伏せ残心を解く。それなりに時間がかかったがようやくものに出来たようだ。刃筋を立てることに意識をさき残心を忘れない。それまで叩き潰すことしか考えてこなかったからなぁ。

日本刀でも使えばよかったのかな地球じゃ本物の刀剣は使わせて貰えなかったし生き物を切る経験も出来なかったからなぁ。そんなことしたら犯罪者だよな。モンスターを相手にするには日本刀のような刀身では心細い、昔のファンタジー物語で語られていたアダマンタイトとかヒヒイロカネとか迷宮世界次元に存在すれば良かったのにそれらなら日本刀でいけたのかな。無いものねだりしてもしょうがないか。


この大剣、あれから ”ドラゴンキラー ” とか呼ばれているが完全に名前負けだよな、尻尾しか切ってないし差し詰め ”ドラゴンの尻尾切り” か?いやダサいな、それこそ無いな。モヤモヤする。


滔々と考えていると ”スパーン ” と頭をしばかれると同時に軽い音がした。

 「アキラ、また下らないこと考えているね。シャキッとしな戦闘中だよ。」

 「悪いヨウコ。ようやく狙って刃筋を立てられるようになったんで余計なことに意識が向いていた。」

 「謝ることは当然だけど、叩かれたことスルーする?ツッコミ返しなさいよ。」

 「いや最近そればかりだからハリセンに慣れてしまった。」

 「慣れただぁ。今度は100tハンマーでしばいてやろうか?ヒトエが。」

 「止めろそれは流石に死ぬ。ヒトエに鈍器で叩かれたらペチャンコになる。PK判定付くからヒトエも死ぬぞ、残り20階層なんだ無駄な死亡は減らそうぜ。」

 「ハイハイ、そこ迄よ、戦闘終了しているとはいえ気は抜かないでね。次行くわよ。」

 「「了解。」」



注意されてしまったので集中して探索を続けていく。80階層でプレイヤースキルが上がったのだろうか50台階層を探索していて以前より楽にまわれているように感じる。温いとか言うと怒られそうだけど、沈黙は金。正座で説教はもうたくさんだ。


 「俺のほうは目途が立ったけどそちらはどうなんだい?81-89階層への対策は考えがあるとか言っていたけど、パッと見変化があるように見えないのだが。」

 「私たちもちゃんと対策はしてあるわよ。アキラみたいに必ずモンスターを相手にしなければいけないわけでは無いから。」

 「それならいいんだが。準備万端なら81階層以降へ挑戦しようぜ、連携の練度は上げとかないといけないだろ。」

 「そうねそれなら明日から81階層に行きましょうか。アキラ、帰りに私たちの亜空間に寄っていって。VR使って私たちの対策を見せてあげるわ。」

 「おぉ、VR使ってたのか。どんな必殺技が出てくるのか楽しみだな。」

 「必殺技て……。男はなんで必殺技が好きなのかしら。理解できないわ。」

 「バカ過ぎて頭痛い。」 

 「頭痛が痛いって言うのが正解みたいよ。」

 「どこの正解なのよ。」


 「今日はこれで切り上げ。帰るよ。」 

 「「「「了解。」」」」










次の日、85階層まで来ている。うーーん、新しい連携が嵌り過ぎている。対策がバッチリなのは当然あるが80階層踏破してレベルアップしたんじゃないのか?神様が言うにはレベルキャップ制にはしていないということらしいが。強化された理由が分からん、ドラゴンを倒す毎に何かしらの物質を取り込んでいるとかないし、ステータス表示ほしいわぁ、数値表示なんて現実的じゃないのは理解してるがゲームで遊んでいた人間としては要希望切望。神様実在しているんだし出来そうに思うんだがなぁ何が足りないんだろう。神様の上の存在でも必要なのかな?

”スパーン ” 

 「痛て。」 

昨日に続きハリセンが入った。

 「探索に集中。」

 「ごめんなさい。」




 85階層のセーフティエリアで正座で説教された。

 「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。……」

 「今日の探索はこれ以上無理ね、帰りましょう。明日は90階層まで行くわよ。今日の連携なら攻略できるはずよ。」

 「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。……」

 「状態異常回復薬かけておいて。ゲートに向かうわよ。アキラは簀巻きにしてヒトエが引き摺ってきて。帰るよ。」

 「「「はーい。」」」

 「三時間説教はやり過ぎだったかしら。」





気が付いたら簀巻きにされて四姉妹の亜空間の中で蓑虫のように吊るされていた。何があったんだろう、思い出そうそすると身体が震える。何故だ。考えるのは止めよう。誰か状態異常回復薬をくれ。簀巻き状態ではタブレット操作が出来ない。こんなことで新しい発見をしてしまうとは。後で意見箱にあげておこう。








 ”戦闘終了です。ボスの討伐を確認しました。”




 「こんな簡単に90階層クリア出来ていいのか?もっと苦労すると思ったのに。」




 ”ダイジェスト版でお送りしております。”



 「ハッ。何かメタなワールドアナウンスが流れた気がする。」

 「深く考えないようにしましょう。」

 「「「それがいい。次行こう。」」」



 「俺たちの探索もあとわずか。」

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