第4話
あれから半年が経過した。今では5人パーティーを組んでいて60階層を突破したところだ。半年の間に100階層踏破者は8人出ている。最初の一人にだけ賞金100億Gが与えられるわけではなく踏破者は何人出ても賞金100億G貰える、将来の踏破者は自分だと皆鼻息荒くやる気に満ち溢れている。
「アキラは左から、フタエは右から挟撃して。」
「「了解。」」
ミツコの指示に従って俺はタンクのヒトエの左脇から飛び出してオーガに切り掛かる。大きく振りかぶり今の武器である両手大剣を叩きつける、フタエが右から同じように切り掛かる、俺の方が先に切り掛かり時間差をつけフタエが突き込む。オーガは俺の方に反応してしまいフタエの長剣を左脇から突き込まれる。怯んだところを見て俺はオーガの首を刈り取る。
「ヨウコ。後続は?」
「無いよ、ミツコ。殲滅完了。」
「状況終了。先に進むよ。」
「「「「了解。」」」」
「65階層も熟せるようになったな。怪我することも少なくなってきたし、プレイヤースキルも60台階層にアジャストしてきたんじゃないか?」
「まぁ、そこそこね。モンスターの顔ぶれは変わらないのに10階層毎に大幅に能力値が上昇する鬼畜仕様。賞金100億G欲しければこのくらい熟して見せろ、てことなのかもね。ヒトエ、楯の調子はどう?前のより重量増えてるけど。」
「問題無い。新しい金属だが素晴らしいな、オーガに殴られてもびくともしない。71階層以降はわからないが70階層までは通用しそうだ。」
「ねぇねぇ。セーフティエリア近いしお昼にしない?おなか減ったよ。」
「ヨウコ、もう空腹なの?朝食しっかり食べていたじゃない。」
「フタエ、そんなこと言っても腹減りは腹減りなの。あっという間に消化されちゃうのよ。」
「相も変わらず燃費悪いのね。身体は小さいのに。少しは成長に使ってもいいんじゃない?まぁいいわ、セーフティエリアがあるなら休憩しましょう。」
「「「賛成。」」」
俺は隅っこで4姉妹の遣り取りを聞きながら、セーフティエリアに向けて歩き始める。エリアに入ると5人が楽に座れるサイズのシートをアイテムボックスから取り出し敷く。先日購入したローテーブルを取り出しシートの上に置く。次に5人分というには多い料理皿を取り出しては並べていく。最後に箸取り皿おしぼりを出し各自の席に置いていく。飲み物は各自が好きなものを持っているので要らない。
「良し、昼飯の準備ができたぞ。食べよう。」
パンパンと手を叩き声をかける。
「「「「待ってました。お腹すいたー。いい匂い。」」」」
「「「「「いただきます。」」」」」
それぞれ取り皿に料理を盛り付け食べ始める。俺も食べ始めよう、まずはおにぎりだ。うん、美味い。この塩味が身体に染み渡る。
昼メニューは肉類多め、野菜程々、デザート少しで組み立ててある。おにぎりは大量に作ってあるので足りなくなることはないはずだ。朝夜はもう少しバランスが変わるが作る量はあまり変わらない。
四姉妹はワイワイ楽しそうに話をしながら次々に料理を平らげていく。毎回毎回結構な量を作っているのだが必ず完食する。探索を続けて行くのに身体は資本だからな、それに自分の作ったものを美味しく食べてもらえるのは気分がいいものだ。
料理修行をしていた時はこんな状況になるなんて思いもしなかった。
今頃地球ではめしテロだなんだと騒いでいるのだろうか。地球に配信されている動画は迷宮内のみだから、昼食中の動画は恰好のネタだと少し前にギドの奴に教えてもらった。ひとの食事風景見るより戦闘を見るほうが盛り上がるんじゃないのかと言ったら、懇々と諭されてしまった。余りに長く続くものだからアイテムボックスに入っていたランチボックスを一つ渡すことで勘弁してもらった。
そんなことを考えながら四姉妹との出会いを回想していた。
23階層で知り合ったタツヤたち3人パーティーとギドと管理棟で飲んでいた。飲み始めて2時間経ったころタツヤと顔見知りだというミツコが相席を申し出てきた。食事に来たのだが満席で座れないとのこと、俺たちのテーブルはちょうどギドが急用で呼び出され席を外したところだったのとタツヤたちの知己とのことで了承した。
自己紹介をし話をしていくと自分と同い年、同じ地方出身だとのことで話が弾んだ。連絡先を教えてくれといわれたので教えたのだが、後で聞くと ”料理が上手だとタツヤから聞いていた。” とのこと。料理上手な人の伝手の確保はとても大事なことだとか。
何度か食事で顔を合わせる内、中々の実力の持ち主であるとタツヤ達に聞かされる。自分と組むことはなかったが、タツヤたちとは何度か組んで探索していたとのこと。
俺は50階層まではソロで実力を底上げしていくつもりだったので、そうなのか、ぐらいにしか聞いていなかった。ギドからの情報には名前が掲載されていなかったしな。
肉厚の大剣を手に入れ、モンスターを叩き潰しながら探索を順調に進めて行く。50階層攻略が見えてきたと考えながら45階層を探索していた。
ゲートの位置は確認してある、時間に余裕があったのでもう1時間探索していこうと考えていた時だ。幾つかの悲鳴が聞こえてこちらに向かってくる足音がする。何か以前にもこんなことあったなぁと考えてしまう。まさかいつかのあいつらか?今度は落とし前をつけてやろうとタブレットを操作、スタンの魔法を選択セット。さあ来やがれと身構えた。
足音が近付いてくる角を曲がって姿が見えた、スタンを叩き込もうと相手を見てビックリした。ミツコを先頭に他女性3人の姿が見えた。その後ろには20匹程か?モンスターが続いている。
叩き込もうとしたスタンを咄嗟にキャンセル、前と同じ雷魔法を選択セットして彼女たちに指示を出す。
「俺の脇を走り抜けろ。早く。」
指示された4人は怪訝な顔をしたがそのまま駆け抜けていく。それを確認すると同時に魔法を使用、極太の光と音が駆け抜けた。
「目がーー。目がーーー。」
叫びながらのた打ち回る気配が後ろでした。殲滅したわけではないので振り返ることなく、大剣を構え生き残ったモンスターに突っこんで行く。2回目だからか?今度は喰いつかれることもなく殲滅することに成功した。自分の成長を感じ取れたことに嬉しさを嚙みしめる。
そういえばと4人の方を見ると呆けたようにこちらを見ていた。トレイン紛いの行為について聞こうと声をかけることにした。
「久しぶりミツコ、トレイン行為は厳罰だぞ。言い訳することはあるか?」
「「「……」」」
「あ、あぁ、久しぶりだねアキラ。すまないトレインするつもりはなかったんだ。戦闘中に挟撃にあってね、こっちにゲートがあるのは分かっていたから無理くり突破してゲートに飛び込もうとしたのさ。」
「はぁ……」
思わずため息が出てしまう。
「角を曲がった先に人がいるとは思っていなくてね。ごめんなさい。」
「「「ごめんなさい。」」」
「はぁ……」
呆れてしまいまたため息が出る。
「まぁいいや。今回は俺の方も無事だったし。飯奢ってくれよ。それでチャラってことでいいよ。取り敢えずさっさとゲート潜って迷宮から出よう。」
「分かった。ご飯奢るよ、管理棟に行こう。」
了解は取れたようなのでゲートへと向かう。さっさとゲートを潜り迷宮前に転移、ようやく一息つけた。管理棟に入り奥のテーブルを陣取り料理を注文する。どうせなら高いものを食いたいなと思い、高いものから注文していく。ミツコの顔が引き攣っていたようだが無視して注文を終える。
食事をしながらお互い自己紹介をし話をしていく。4人が四姉妹で俺と同時期に迷宮に来たこと、4人でパーティーを組んでいて探索を進めていること、ミツコはスカウトが出来るので腕を磨くためにタツヤと組むことがある、四姉妹としては探索に行き詰まりを感じており試行錯誤をしていることなど。
俺の方はソロで探索していること、50階層以降はパーティーを組むつもりでメンバーを探していることなど。酒が入っていたので少し喋りすぎたかもと帰ってから思い返した。まぁいいかとそのまま寝てしまう。
その後猛烈なアピールを受け、お試しにということでパーティーを組み探索をする。用意周到に外堀を埋められ50階層以降にパーティーを組むことを了承させられることとなる。
後で教えてくれたことだが、美味しいご飯を作ることが特技だと聞いていたのでぜひともパーティーを組みたいと思っていたとのこと。
「俺の特技は料理じゃねえ。」
反論はしたが、周りの奴らは賛同してくれなかった。
ハーレムパーティーなどと地球では呼ばれているらしいが、これまでのところ役得なことなど何も無いし期待することなど何も無い。ホントだよ?
兎に角俺としては少しでも早く100階層踏破したい。大剣振り回して魔法を使えるのは楽しいのだが、100億G獲得して地球でのんびりと暮らしたい。ベーシックインカムがあるから労働の必要はないのだが、世界各地の観光地巡りをしてみたい。
残り40階層を切り稼ぎも高い水準で安定している、エンゲル係数が高いのが気に係るところだがモチベーション向上のために手は抜けないところだ。
昼飯が終われば65階層の続き、今日中には67階層に辿り着きたいところだ。食器とテーブルを片付け4人に声を掛ける。
「探索再開の準備は出来たか?気を引き締めて行こう。」
「準備OKよ。」
「「了解。」」
「稼ぐよ。」
「よし。俺たちの探索はこれからだ。」
右腕を掲げる。
「「「「……」」」」
「いつも言うセリフだけど何か気が抜けるわね。」
「「ホントホント。」」
「バカ言ってないでさっさと行くわよ!!」
「「「はーーい。」」」
「……」
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