第5話 スーパーカーでギルドに行く
アーサーはヘッドライトを光らせた。
そは五つの星を模る。
「うわ! 五つ星だ! これは失礼しました!!」
門番の兵士は恭しく頭を下げる。
どういうことだ?
「どうぞお通りください」
僕はそのまま通された。
門は大きく。スーパーカーでも余裕を持って潜れる広さがある。
「なぁアーサー。さっきのはなんだったんだ?」
『この地域では星の数が身分を証明いたします。後ろをご覧ください』
すると、後ろの旅人は一枚の用紙から星一つを浮かび上がらせていた。
『星は王族から授かります。黒い星は罪の数。白い星は偉業の証なのです』
「……でもさ。僕はなにもやってないよ? せいぜいゴブリンを狩ったくらいだ」
『星の数は、この周辺で名を轟かせた大賢者ナゾットの記憶から作成しました』
「なるほど」
『ナゾットの記憶があればどこでもフリーで入ることが可能なのです』
「そのナゾットって人はすごいんだな」
『このスーズカ地方の英雄です。銅像が立つほどの方ですね』
ふむ。これは便利だ。
女神ヌラはドジっ子だけど、アーサーにナゾットの記憶を入れたのは英断だったな。
『ナビにはギルドの場所を示しておりますので、そこを目指していただければ問題ありません』
「あんがと」
快適だな。
街は石レンガの道路だった。
ほとんどが馬車だが、ポツポツと魔導車が走っている。
信号機まで設置されているのは驚きだ。
そんな中、僕の車は目立ちまくった。
ピカピカの真っ赤なボディカラー。シザーズドアのスーパーカーは注目を浴びるのだ。
ゆっくり走っていると子供たちがついてまわった。
よし到着。
ギルドの前に停車すると、たちまち子供に囲まれた。
「この魔導車、兄ちゃんの車か?」
「まぁね」
「すげーーーー。見たことがないタイプだ。カッコいいなぁ」
と目をキラキラと輝かせる。
「ふふふ」
やっぱりスーパーカーの魅力はこの世界の子供でもわかりますか。
『
「「「 すげぇえええ! 魔導車がしゃべったぁああ!! 」」」
まぁ、これは日本でもすごいことだからな。
よし。
んじゃあ、ゴブリンの耳を売りますか。
トランクスペースを開けると、葉っぱに包まれたゴブリンの耳がどっちゃりと出てきた。
これを運ぶのは結構大変だな。
「あ、そうだ。なぁ、駄賃を上げるからさ。この耳を運んでくれると助かるんだ。協力してくれないか?」
「ああ、いいよ! でも、こんなにゴブリンの耳をたくさん……。兄ちゃんってすげぇ冒険者なんだなぁ」
「いや。それほどでもない」
今日来たばかりの転移者です。
僕は子供たちと一緒にギルドに入って、受付に耳の山を置いた。
ポニーテールの受付嬢は目を丸くする。
緑色の綺麗な瞳をパチクリとさせた。
「こ、こ、こんなにたくさん!?」
「売りたいんですができますか?」
「は、はい! 可能です。冒険者の登録証はお持ちですか?」
どうやら、星の身分証明とは違う登録証が必要らしい。
「この街に来たのは初めてなんだけど?」
「では、登録していただけますか? ギルドの冒険者登録は無料でできます。初めての方は最低ランクになりますがよろしいでしょうか?」
耳が売れるならなんだっていいや。
「では、ご記入をお願いします」
そういえば、この世界の文字って読めるのだろうか?
おそるおそる記入用紙をもらう。
あれ? 読めるぞ……。
不思議なことに読むことも、文字を書くことも可能だった。
そういえば、話し言葉が通じているな。
この適応性は女神ヌラの采配だろう。
登録名は名前にしておいた。
記入用紙には魔導車の所有有無があった。
まぁ、一応は有りだな。
「では、
聞けば、この街の冒険者ランクは5段階で、Dが最低。最高はSということだ。
「アイテムや素材の買い取り価格はランクに影響ありませんが、受ける依頼や紹介する仕事にはランクが影響します」
ふむふむ。
まぁ、イメージどおりだな。
「
どうやら食いっぱぐれはしないようだな。
「ゴブリンの耳は全部で2万5千コズンとなります」
コズンか……。
1コズン1円の感覚っぽいんだが、今ひとつ物価がわからないな。
僕は3人の子供にそれぞれ100コズンづつ渡した。
「はい。お駄賃」
「こ、こんなにくれるのか!?」
「ああ。ゴブリンの耳を運んでくれたからな」
「兄ちゃん太っ腹だな! ありがとう!!」
「ああ。僕も助かった。あんがとな」
子供たちは大喜びで帰って行った。
100円を渡した感覚だが、もしかしたらかなり多く払ったかもしれない。
まぁ、でも子供が喜ぶならいいだろう。僕も助かったしね。
よし。んじゃあ、このお金で今晩泊まる宿を探しに行こうかな。
「おい待ちなぁ」
見ると、周囲を冒険者に囲まれていた。
老若男女。様々な人種がいる。
な、なんだぁ??
「兄さん。魔導車持ちなんだろ? 俺のパーティーに入らないか?」
「あたしんとこに来なよ。悪いようにはしないからさ」
「
ああ、パーティーの勧誘か。
仲間といわれてもな。
群れて行動するつもりはないんだ。
すると、ツンツンに髪の毛を立てた剣士風の男がみんなの声を静止させた。
「カスどもは黙っていろ。ったく。魔導車も持てないボンクラどもが」
男は嫌な笑みを見せた。
「俺様はジャレル。B級冒険者だ」
俺に様付け……。
あんまり関わり合いたくないなぁ。
でもまぁ、自己紹介は礼儀か。
「僕は
「ふん。貴様の持っている魔導車は最新モデルか?」
「え?」
最新かどうかはわからないな??
まぁ、古くはないと思うけど……。
「俺様の魔導車は最新式だぞ。聞いて驚け! なんと2人乗りだ!!」
周囲は少し騒ついた。
なんか2人乗りがすごいことらしい。
まぁ、一応、
「僕の車も……2人乗りだね」
「なに!? ふん!! 1人乗りを改造でもしたのか? 俺様のは純正だぞ」
「改造なんてしないよ」
そういうのには疎いんだ。
基本は乗ること専門だからな。
「ククク。ほれ。これを見ろ」
それは1枚の絵だった。
ベビーカーのような車の絵が描かれている。
「最新式の魔導車マッハタイガーだ。あまりにも美しいフォルムでな。絵師に描かせたのさ」
「へ、へぇ……」
たしかに。
辛うじて2人乗りだな。
ベビーカーの後ろにエンジンを接続したような。屋根のない小さなオープンカーだ。
18世紀ごろのドイツにこんな車があったっけ。
「仲間にしてやる」
「え?」
「光栄に思えよ。雑魚ランクのおまえをスカウトしてやっているのだ」
「あ、ありがとう」
「俺様のパーティーは全員が魔導車持ちなのさ!」
「そ、そうなんだ……」
「聞いたことがあるだろう? ククク。王都グランデルモに轟く名声! 二つ星を冠する、その名もサンダースチーム! 魔導車で爆走する最強の冒険者パーティーだ!!」
し、知らない……。
「ククク。俺様はそのパーティーのリーダーなのさ」
「へ、へぇ……」
「そして俺様の魔導車はすさまじい速度を誇る」
「そ、そうなんだ」
「腰を抜かすんじゃないぞ? ククク。最高速度! 80キロだぁあああああああああああああああああああああああああああ!!」
周囲からどよめきが起こった。
「すげぇ……」
「速すぎだろ」
「神か……」
「1人乗りでも70キロが限界なのに……」
「ふ、2人乗りで……。信じられん」
「さ、最新すぎる……」
いやいやいやいやいやいや。
「
面倒臭ぁあああああ……。
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