第3話 スーパーカーで初バトル
僕が乗っているスーパーカーの前には3匹のゴブリンが立っていた。
鋭い目でこちらの様子をうかがっている。
背丈は僕の腰くらいだろうか。
さて、異世界の初バトルだな。
まぁ、逃げるという手もあるけど……。
少し慎重に、確認だけはしておこう。
「なぁアーサー。ゴブリンって強いのかな?」
『大賢者ナゾットの情報では、初級冒険者でも倒せる弱い部類のモンスターのようですね』
「よし! なら戦おう」
肩慣らしにちょうどいいや。
『マ、
「ああ」
僕はシザーズドアを開けて外に出た。
女神ヌラは僕に超人的な力を与えてくれているからな。
ふふふ。
「さぁこい! ゴブリンども!」
『『『 ギギギッ! 』』』
う……!
小さいとはいえ、目の前にするとすごい迫力だな。
緑の肌に鋭い目。ギザギザの歯はまさしくモンスターだ。
3匹はそれぞれが違う武器を持っていた。
右のは弓。真ん中は棍棒。左は槍だな。
突然、なにかが飛んで来た。
ピュッ!
「え!?」
それは僕の頬をかすめた………。
ツゥーーーーーー……。
頬が熱い。
えーーと……。
触ってみると赤かった。
血だ。
さっきの攻撃は弓矢。
ゴブリンの弓が僕の頬をかすめたんだ。
ぜ、全然見えなかったぞ……。
これって串刺しにされたら死ぬんじゃ……。
『『『 ギギギッ! 』』』
「え!? ちょ、ちょっとたんま!」
『『『 ギィーーーーッ! 』』』
うぉ! 追って来た!!
槍と棍棒の攻撃が僕を襲う。
「ひぃいいいいいい!!」
当たれば即死だぁあああああ!!
どうなっているんだ!?
僕は以前と変わっていない! 走る速度は普通だし、視力だって以前と全く変わらないぞ?
「僕は強くなっているんじゃないのか!?」
『
「そういえばそうだったーー!」
『気が利かなくて申し訳ありません。自信満々でしたので。勝機があるのかと思いました』
「うぉおおおーー!! 僕の勘違いだったんだよぉおおお!」
逃げるしかないのか!?
いかん。アーサーから離れている。
これじゃあ、いずれ追い付かれて殺されてしまう。
「アーサー! このピンチはどうやって乗り越えたらいいんだーー!?」
『選択は2つです。モンスターを倒すか、逃げるか』
「倒すってどうやって!?」
『ご命令を』
「え!?」
『命令を出してください
まさか、おまえが倒すのか!?
『『『 ギギギッ! 』』』
ええい。
迷っている暇なんてない。
どうせやるなら逃げるより勝ちたいっての!
「アーサー! このモンスターを倒せ!!」
『了解!』
ドドドドドド!
ギュルルルルゥウウウウウウン!!
アーサーはエンジン音で動き始めた。
「自動操縦か!?」
そのままゴブリンたちに体当たり。
ドンッ!!
相手は20メートル以上ぶっ飛ばされる。
すかさず、それを追尾。
キキキィーー! という音とともに車体が横になったかと思うと、そのまま後輪部分をゴブリンたちにぶち当てた。
バゴォオオオオオオンッ!!
ゴブリンたちは近くの木にぶつかって絶命した。
「すげぇ……」
あっという間に倒しちゃったよ。
『タンタカタンタンターーン!』
「ぬお! 急にどした!?」
『レベルが2になりました。
「おおおおおおおお! レベルアップか! ゲームみたいだな!」
『モンスターを倒して、経験値を得ることができればレベルが上がるようですね』
『レベルが上がれば強くなるんだな?』
『はい。各種性能の向上をはじめ、最高時速の上昇、そして特殊スキル、魔法の取得を実現できます」
「ふは! いいじゃん!」
レベルアップして強化されるスーパーカー!
最高だよ!!
『
「え? なんで……?」
俺は木にへばりついたゴブリンの死体に目をやった。
紫色の血が飛び散ってえぐいことになっている。できれば触りたくないよな。
『ゴブリンの耳は素材になります。街に行けばギルドがございます。そこで、その耳を売ればそれなりの金額になるかと』
「おおおおお! まさに異世界だ!!」
服装がパーカーってことくらいで何も持ってないからな。
スマホも財布もないなんて、現世じゃ考えられなかったよ。
どんな時代でも、生きるためには金が必要だ。
いくらで売れるか知らないが、ゴブリンの耳は取っておこう。
「あ……。ナイフがない……」
『トランクルームに万能ナイフがございます。それをお使いください』
スーパーカーの後部ハッチがパカっと開く。
そこは横幅1メートルちょっとのトランクスペースだった。
以前に乗っていた軽自動車に比べれば、収納スペースは狭いが、それでも少しの荷物なら入れることが可能だな。
トランクの隅には小さな箱があって、そこにはちょっとした工具類が入っており、その中に万能ナイフがあった。
僕はそのナイフを使ってゴブリンの耳を削ぎ落とした。
「そのまま入れたらアーサーが汚れるな」
愛車は綺麗に使いたい。
僕はその辺にあった大きな葉っぱを1枚取って、それに耳を包んでトランクスペースに置いた。
いくらで売れるんだろう?
ふふふ。楽しみだな。
「んじゃあ、街のギルドに行って、ゴブリンの耳を売りたいよな。近くの街までどれくらいだ?」
『地図を表示させます』
そう言って、アーサーは地図のホログラムを空中に表示させる。
点滅している小さな車マークが僕たちのいる場所だ。
『ここから100キロ離れた場所にグランデルモという大きな街があるようですね』
「よし。今から湧水を飲みに行って、そこからその街を目指そう」
『了解しました』
途中でモンスターと遭遇すればバトルしよう。
ふふふ。レベルアップと金稼ぎだな。
グゥ〜〜。
「あーー、腹も減ったかもな。早く街を目指した方がいっか……」
『食事ならばその辺の食料でも可能でございますよ』
「どうやって?」
『
「おまえ車なのになんでそんなこと知っているんだ?」
『私には大賢者ナゾットの知識を付与されております。彼が知っていることならばなんでもわかるのです』
「便利だなぁ。そこのキノコは食べれるのかな?」
『それは毒キノコですね。食べれば即死です』
うぉい!
「ははは。危ねーー。おまえがいて、本当に助かるよ」
『褒めていただいて光栄です』
んじゃ、早速、アーサーに教えてもらった蔓の実を食べてみるか。
ブルーベリーみたいな感じかな?
「ん。ちょっとすっぱいけど甘くて美味い。味は苺っぽいかな」
『あっちの野草は、球根部分の生食が可能です。その向こうに成っている木の実は果肉量が多くて食べ応えがあると思います』
「ふは! おまえがいると飢え死にしないな」
『獣を狩って焼いて食べることも可能ですよ。
「うお! 火炎魔法はそんな応用ができるのか!」
『魔法は攻撃だけではありませんからね』
そうなると、急いで街に行かなくとも、この辺でモンスターを狩りながらサバイバルを楽しむという手もあるな。
急に異世界に転移して、一時はどうなるかと思ったけどさ。ふふふ。めちゃくちゃ楽しいぞ!
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