第2話 魔王様 戦後処理 始まりです

〜魔族圏 首都ドゥアゴ 魔王城〜

魔王が勇者を討伐してから数時間後。

「魔王様、まずは勇者の戦死報告が先かと」

「いや、その報告は後だ。その前に各方面軍の戦況確認だ。西方戦線は劣勢だ。そこ  から人類軍が進軍する作戦が立てられたと密偵から報告を受けた。」

勇者との激闘を終え顔色の悪い魔王が答える。

「でしたら、首都に控えた将軍を向かわせましょう。」

「そうだな、頼む。俺は少し休む。」

「はい。承知いたしました。」

そうして疲れを隠さぬまま自室へと向かった。


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魔王の自室に向かう道すがら物陰から二つの影が飛び出した。

「「ようやく見つけたぞ、魔王!」」

飛び出したのは勇者の仲間の女魔法使いレンと女戦士ユーミンであった。その風貌は長時間の戦いによる疲れと、おそらく勇者の亡骸を確認したのであろう。目の下が少し赤く腫れていた。

「そうか、お前たちか。ご苦労なことだ。勇者は死んだぞ。」

「知っている。敵討だ。」

「ここまで来るのに随分とかかったじゃないか。お前たちの相手は我が友ロンダムが相手をしていたと思うが?」

「殺した。」

女魔法使いが煽り口調で答えた。

「そうか、ならば敵討だ。」

「はっ、敵討?笑わせるなお前たちなんぞ劣等人種の集まりだろうが!そんな高尚な感情があったとはな。」

女戦士が勇者の敵討だと言わんばかりに答えた。

「・・・。」

魔王は答えない。無言のまま戦いの姿勢をとった。

「はっ、やはり家畜畜生。言葉など出てこないか。」

「行くよユーミン。」

「ああ。」

戦いが始まった。


数分後

「わかっていた。わかっていたさ、敵わないなんて。クソ野郎。」

「ヒュー、ヒュー、・・・。」

「・・・」

そこには呪詛を吐き俯く女戦士、体に穴をあけうつ伏せになる女魔法使い。

それを見下ろす魔王の姿があった。

「お前たちはよくやった。」

「テメェの言葉なんぞ。ちっ。」

実際はよくやった、魔王と勇者の力が拮抗していたのは事実だが他の人類や魔族とは天と地ほどの力の差があった。そんな中レンとユーミンは数分とはいえ渡り合ったのだ。そんな結果を魔王は素直に称賛していた。たとえ友の仇であったとしても。

「最後に言い残しことはあるか。」

魔王は友の仇に最後の言葉を聞く。

「死ね畜生が。」

そこでレンとユーミンの人生は終わった。


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魔王の自室

「疲れたぁ。」

そうして椅子に座り部屋を見渡した。数こそ少ないが希少な装飾品が置かれた部屋だ権力者の部屋とは少し違った質素な雰囲気の漂う部屋だ。

「何も考えたくねぇ。とりあえず寝r」

「魔王様!」

勢いよく扉を開けて入ってきたのは先ほどの青年だ。名をエッグと言う。

「どうしたエッグ。まだ何かあるのか。」

「はい。先ほど西方の人類軍の進軍を確認したと報告がありました。」

「まじかぁ。」

「はいマジです。」

うだつの上がらない声で話す二人とは裏腹に戦後処理は活気に満ちてやってくるのであった。





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