第1話 魔王 勇者 倒せた

 険悪で疲弊した表情を浮かべる大柄な男。その目の前には豪華そうな武具を身に纏った白髪の20代前半のように見える男が倒れていた。

「はぁ。はぁ。」

大柄な男は体の至る所から出血をし今にも倒れそうな雰囲気であった。

「か、倒れた。・・・ようやく」

「あ、お。まぉぅ」

暗く静まり返ったそこには、床や壁に大きく戦いの痕跡を残していた。

倒れた男は、掠れた声で自分の仇の名を叫んでいた。

「魔王様!ご無事ですか!」

汚れた鎧を身に纏った執事風の青年が物凄い形相で大柄の男に駆け寄った。そして、倒れた男に何らかの魔法で生死を確認し落ち着いた表情を見せた。

「死んでいます。魔王様。勇者は死にました。魔族の勝利です。戦争は終わりです!」

青年は大柄な男にそう告げた。

「戦いは、まだ終わっていない。急いで勇者を倒したと人類連合、各方面軍に宣言しろ。その前に人類側の軍事会社の株式の売却も忘れるな。戦争を終わらせるぞ。」

「は、はい!」

男が指示をすると、青年はすぐさまそこから走り出した。すると男は、その場に座り込み絞り出すような声を出す。

「ハァァぁ、疲れたぁ。しんどいわ。てか、勝っちゃったよ。勇者に」

大柄の男こと魔王はこれまでの苦労と今後の苦労に対し大きくため息をつくのであった。


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