第17話 毒と愛の誤算
激しい光と音の嵐が収まり、リュウトは息を切らしながら立ち上がり前を見ると砂埃が晴れてくる。
しかし、“白大蛇の姿”は居なくなっていた。
「……やっとその姿になったか」
「____」
そこに立っていたのは美しい少女。
少女の髪は純白で、長くしなやかに流れていて、瞳は真紅に紅く輝き、その瞳でリュウトを見つめた。
「絶対に美女の姿になると思っていたさ、テンプレだからな」
しかし、リュウトの心にはアオイの姿が強く刻まれていたため、目の前の少女の美しさに心動かされることはなかった。
「アオイさんよりは可愛くないな...」
そう言いながらリュウトはまた構えると、少女の姿をした白蛇もリュウトに向かって鋭い視線を送り、攻撃の構えを見せた。
「……第二戦開始だ!」
地下の暗闇の中、少女は手を掲げると手のひらから魔力の光が放たれリュウトに向かって飛んでくる。
リュウトはその攻撃を紙一重でかわし、反撃の構えを取った。
「早い」
先ほどよりも攻撃が早く、何より魔皮紙を使わずにノーモーション攻撃。
魔王というのは伊達じゃ無い。
次に少女は鋭い風を纏った爪のような魔法を繰り出した。
彼女の手から放たれる風の刃が、音を立てながらリュウトに迫る。
「くっ!見えずらい!」
暗い中で風の音と肌で感じる感覚だけで避けていくがそれだけで集中力と体力を持っていかれる。
「このままではマズイな……」
リュウトは焦りを感じながらも冷静に戦況を見極める。
少女の動きと攻撃のパターンを観察し、反撃のチャンスを伺う。
攻撃をしてくる時、生物の動きには一定のリズムがある……そのリズムを掴めば反撃のチャンスが掴めるのだ。
「(ここだ…!)」
素早く動き、彼女の背後に回り込むと、全力で剣を振り下ろした。しかし、少女は驚くべき反射神経でその攻撃をかわし、リュウトに向かって再び風の刃を放った。
「まじかよ」
近距離からの攻撃をリュウトは間一髪でその攻撃をかわしながらも、少女の魔法の一部がかすったため、その腕に鈍い痛みが走った。
「くっそ……」
やはり少女の姿をしていても蛇。
毒が徐々に広がるのを感じ、リュウトはますます焦りを感じた。
「ちっ!」
すぐさまリュウトは持っていたレイピアで傷口から先を斬り落とした。
「!?__」
少女はリュウトのその無駄のない行動に一瞬動きを止めた。
その隙を見逃さずリュウトはレイピアをロングソードモードにして不意をつくが、少女は素早く動いてそれを避けた。
「くそ!」
片腕を失っての攻撃も失敗に終わり、また振り出しに戻る。
いや、むしろレイピアを持つ腕しかないので最初よりも悪い状況だ。
二人は激しい攻防を繰り広げ、お互いに一歩も譲らず、時間がすぎていく____
____否!
「これで決める!」
「っ!?」
何もない時間がリュウトの前で過ぎるはずもない。
リュウトは時間と共に少女の動きを完全に読み切り、レイピアをついに少女の胸に突き刺した!
「くぁっ……」
「毒を使うのはお前だけじゃ無い」
急所は外して刺している細いレイピアには毒が塗られていた。
「悪いが、お前の毒をベースに改良させてもらった」
戦いの最中、リュウトは白大蛇の時の毒を分析し解析、さらにオリジナルをそこから作り出していたのだ。
「か、ぁ……っ」
レイピアを抜き距離を取る。
少女は苦しそうに傷口をおさえて最後には地面に倒れ込んだ。
「……………………」
少女は混乱した表情でリュウトを見つめる。
「なに...これ...?」
自分でも解らない。
分かる事と言えば少女はリュウトに対する敵意や殺意が全く抜け落ちている事だ。
「私……どうしちゃったのっ」
理解できない。
毒のスペシャリストである魔王。
最強の称号を持つ彼女は毒にかかるはず無いのだ。
だが効いた。
何故ならリュウトの作った毒は__
「……気持ちは分かるよ、俺が言うことじゃないだろうけど」
彼が使用した毒は、偶然にも惚れ薬のような効果を持っていたのだ。
少女はリュウトに対して強い“愛”を抱くようになってしまっていた。
そして、その気持ちは異世界に召喚された時のリュウトの気持ちと同じ____
「まぁ……なんだ……これからよろしく?」
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