第16話 VS魔王


薄暗い地下の広間。


そこには巨大な白大蛇が眠っている。

重々しい空気が漂い、静寂が辺りを包んでいた。


「この瞬間が来たか……」


一歩一歩慎重に白大蛇に近づいていきながらそう呟く……


「魔王。」


俺の読みが正しければここに大蛇は封印された魔王。

異世界のテンプレとしてこれから重要ポジションになる人物だ。


白大蛇が目を覚ますと、巨大な体が動き始め、その目は鋭くリュウトを見据える。


『…………私を殺しに来たか……』


白大蛇の低い声が脳に響く。

声帯を持っていないのでテレパシーというものだろう。


「いや……俺はお前を倒すために来た、殺すつもりはない」


白大蛇は一瞬驚いたように見えたが、すぐにその表情は戦闘の意志に変わった。


『面白い事を言う奴だ……だが、私も倒されるつもりはない!』


リュウトはレイピアを構え、戦闘態勢に入る。

白大蛇が攻撃を仕掛けると、リュウトはそれをかわしながら反撃の一撃を放つ。彼の動きは迅速で、まるで舞を踊るように滑らかだ。


白大蛇の目が光ると、突然その口から炎のブレスが放たれる。

リュウトは即座に横に飛び、ブレスを避けた。


「っ」


リュウトは自分に強化魔法をかけ、一瞬で白大蛇の横に回り込む。

しかし、白大蛇は暗闇の向こうから尾を鞭のように振り回し、リュウトを攻撃してきた、尾の一撃は地面を砕き、周囲に衝撃波を生む。


「くっ…!【魔法のシールド】!」


リュウトは咄嗟に魔法の盾を展開し、その一撃を防いだが、その直後、白大蛇の鱗が光り、数百の光の矢がリュウトに向かって飛び出す。


「最大出力!!」


リュウトは盾を強化して矢を防ぐが、矢の勢いで後退させられる。


「この鱗全てが魔法を使えるのか!?」


白大蛇はさらに攻撃の手を緩めず、今度は猛毒のブレスを放つ、その後には猛毒の川が出来るほどだ。


リュウトは素早く横に跳ぶが、一部が彼の肩に触れ、激しい痛みと共に毒が回り始める。


「くっ…!」


すぐに治癒用の魔皮紙を使い、毒を中和しようとするが足りずに魔皮紙の方が消滅したのでありったけの治療魔皮紙を使った。


「毒治療の魔皮紙をもっと用意しとけばよかったな……」


最悪、腕を切り落とすことになりそうだ。


白大蛇の鱗がさらに輝きを増し、周囲の空気が一層重くなる。

リュウトはその変化に気付き、即座に距離を取った。


白大蛇は口を大きく開き__


「来る!」


リュウトはこれまでの攻撃と違う感覚を肌で感じとり、ありったけの魔皮紙を使い強力な何重にも展開する。


「【天光バリア】!【守護ヴェール】!【煌星ウォール】!【蒼穹ガード】!【聖域プロテクト】!【光輝シェルター】!【絶影バリア】!」


白大蛇の口から放たれたのは、強大なエネルギー波だった。

それは空間を歪めるほどの威力を持ち、リュウトのバリアに直撃する。


敵の放った強力なエネルギー波を【天光バリア】が天の光を放って輝きを強める。

続けて【守護ヴェール】が穏やかに包み込み、【煌星ウォール】が無数の星の輝きで全体を覆った。

【蒼穹ガード】が蒼く堅固な壁を築き、【魂盾】が深い力を宿す。

さらに【聖域プロテクト】が空間を浄化し、【光輝シェルター】が強烈な防護を加え、【絶影バリア】が無敵の壁として敵の攻撃を通さない。


「ぐっ…!」


今にとってのリュウトの最大の魔法による防御、使っている魔力は常人ではありえない量だ。

それでも尚、リュウトの体にも衝撃が伝わる。しかし、彼は必死に耐え、バリアを維持し続ける。


エネルギー波が徐々に弱まり、やがて消滅した。


「ふぅ…」


リュウトは息を整えながら、再び戦闘態勢に入る。白大蛇は地面を這うように高速で接近し、巨大な体でリュウトを押しつぶそうとしてきた。


「やらせるか!」


リュウトは素早く身を翻し、白大蛇の攻撃を避ける。

そして、反撃のために剣に魔力を込め__


「【ライトニングブレード】!」


剣が光を放ち、雷の如く白大蛇に向かって斬りかかる。

雷の刃が白大蛇の体に触れると、その部分が一瞬で焦げる。


「っ…!」


白大蛇は痛みのあまり叫び声を上げるが、その目にはまだ戦意が宿っている。リュウトは次の一撃を準備しながら、白大蛇の動きを観察する。


「さあ、どう出る?」


白大蛇は毒の牙をむき出しにして、リュウトに向かって突進してきた!


「っ!」


リュウトは白大蛇の牙をかわしながら、次はレイピアに炎の魔法を纏わせ、反撃を試みる。


「【フレイムインパクト】!」


白大蛇の頭部を突き刺すと炎が爆発し、中から肉を焼く。


確かな手応えだったが、逆にそれが隙となりリュウトは尾のムチに弾き飛ばされる。


「しまっ__がはっ!」


リュウトは壁に激突し、一瞬息を呑む。

しかし、すぐに立ち上がり、再び戦闘態勢に戻った。


『お前……本当に人間か?』


「悪いな、人間だけど人間じゃないんだ」


そういいながらリュウトは大技の構えをとる。

剣先に巨大な光のエネルギーを集め、徐々にレイピア全体が眩く輝き始める。


「これで終わりにする!」


最後に一気に突き出すと、前方に広がる巨大な光の波動が放出され一直線に白大蛇に向かって行った。

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