第13話 ジャログドラゴン討伐
俺達はあの後すぐ、転移魔法でギルド指定の無人島へ来ていた。
ここはこの間の場所とは違い、湿気が多く、歩くのにも足にぬかるんだ泥がついてきて一苦労だ。
例えるのなら水の張った田んぼを歩き続けていると考えるといいだろう。
「お、おい、アイツ大丈夫かよ?」
冒険者パーティーの1人が前からチラリと俺の軽装を見てヒソヒソと話すのが聞こえる。
今回、冒険者のパーティーは俺を入れて5人。
いずれもプラチナ冒険者で何年も続けているパーティーだ……なので俺が即席で買った鉄で作られた防具とは違い、各々魔物の素材で作られた装備を着ている。
明らかに俺が浮いている。
「……」
「やばいね……ここまでバカだったとは」
「魔物の体当たりを1発でもくらったら終わりじゃないか」
「はぁ……」
ヒソヒソしてるが聞こえてるぞー
……ま、上々ってとこだな。
良くある異世界のパターンに持って行けている。
周りからの評価が低ければ低いだけこの後の恩恵が大きくなる……出来れば、魔物を倒すまでにもう少し使えないフリをしないと……
そんな事を思っていたら話がまとまったのか今回俺に話しかけてきた女冒険者が近くに来た。
「アンタ、今回の相手を舐め過ぎちゃいないかい?」
この会話!重要だぞ!
「え?どうしてですか?」
何も知らないような純粋な返事。
これは言葉をミスったか?
あの時は「すぐに出発していい」なんて言ってた俺のセリフを考えるとなめてるとしか言いようがないな確かに。
「はぁ……」
また、ため息をつかれる。
「本当に使えないやつ」と、いい方向に考えてくれたみたいだ。
「アンタは後方で見てくれるだけでいいから、邪魔だけはしないでくれ」
元々俺に痛い目を見せるつもりだったのだろうが本当に死ぬと思っての発言か?
……優しいな、こいつ。
「了解です」
そのまま俺達は沼地の奥深くへ歩いていった。
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「……」
「……」
全員が息を潜めて少し遠くの沼を見る。
「あそこが今回のジャログドラゴンの巣だよ」
「なるほど」
このドラゴンは、体長15メートル、クジラと同じくらいで蛇のように長くしなやかな身体になっている。
目は泥の中を移動するので退化していて、水に浮いたオイルのような鮮やかな青い鱗と金色の角が頭部から突き出ているのが特徴だ。
そして、元の世界ではあり得ないが、怒ると身体が炎を帯び、周りを焼き尽くしながら襲ってくる。
「どうします?」
沼池は静かだ……だが、体長15メートルもの巨体が作った巣。
一体どれくらいの深さになるのだろうか。
なので、定石通りなら__
「これで誘い出すよ」
「……」
くっさ……
取り出したのはかなり臭いの強い腐った魔物の肉、ジャログドラゴンは目が退化しているかわりに鼻がよく効く様になっているのでこれで自分達の戦いやすい場所まで誘い出すのが一般的なやり方だ。
問題は“誰が近くまで行くか”だが__
「僕に行かせてください!」
「は?」
「是非僕が行きます」
「はぁ?いや、お前、わかってる?冗談じゃなくて死ぬぞ?」
「冒険者なんてそんなものでしょ、生き残れない奴は生き残れない、ここで僕が死んでも1人の冒険者が死んだだけ」
「だからお前は死ぬ気か?って聞いてるんだ」
アオイさんを俺の嫁にするまでは死ねない!
と、言ったところで何のことか解らないだろう……うーむ、テンプレとしては、こんな人の心のある優しい奴らより、俺を使い捨ての駒の様に使う人間に無理やり囮にさせられるってのが良かったんだが……
仕方ない、ここは強引に行くか。
「分かりました、では__」
「あ!?」
俺は腐った肉を奪い走り出す。
「死んできまーす!」
「ちょっとまてええええ!!!!」
新人冒険者の暴走に目を丸くした後、冒険者パーティー全員、暴走を止めようと動き始めるが、追いつかない。
「な、なんだアイツの速さは!?」
「身体強化魔法使ってるってレベルじゃねーぞ!」
後ろから聞こえてくる声は良い感じにテンプレ通りに驚いてくれるのを示唆してくれているのが分かった。
焦って女冒険者は追いかけてくるが全員遅い。
気がつけば俺はジャログドラゴンの巣の近くまで来ていた。
「さて、確かにこの臭い肉で誘い出すのは正解だが、異世界の主人公としては不正解だな」
俺はレイピアを取り出し、自分で刻み込んだ魔法陣に魔力を通す。
「【龍殺しの竜巻】!」
レイピアを降ると大量の魔力を吸い上げると共に目の前に巨大な竜巻が発生し沼へと向かい____
「____!!!!?!?!キシャァァァアリァア!?!?」
ジャログドラゴンが竜巻により空中へ放り出された。
「行くぞジャログドラゴン!」
わざとらしくそんなセリフを吐きながらジャログドラゴンへその場から派手に飛ぶ。
「ロングソードモード!」
レイピアの刀身が伸びる。
この能力は元々のレイピアに備わっていたが少し改造させてもらった。
「はぁぁぁぁあ!!!てぇぇりゃぁぁあ!!」
そのままの勢いを保ちながらムチの様にしならせ俺はジャログドラゴンの首を豪快に空中で真っ二つにし、格好良く着地する。
「「「「__!?!?????」」」
何が起こったか解らないって顔だな。
さて、ここからが大事だ。
こう言う時のセリフセリフ……あ!こう言う時はアレだ!
「すいません、手加減したつもりなんですけど……テヘッ」
あれ?なんか違うな?
「アンタ一体……何者なんだ……」
いいね。
良い反応!
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